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(東京)-東京都は性的指向と性自認を理由とした差別を禁止する条例を成立させたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2018年10月5日に成立した本条例は、都に対してレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)についての啓発等の実施も定めている。

東京都がこの条例を制定したのは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市となったことがきっかけ。

「東京都は条例のなかで、インクルージブな人権尊重オリンピックを開催するとのコミットメントを示した」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は述べた。「このことを踏まえ、都当局は条例を実行に移し、学校や職場、また社会全体からLGBT差別をなくすよう努めなければならない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」の起草時にパブリックコメントを寄せている。この条例の第一条では「この条例は、東京都が(…)いかなる差別も許されないという、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的とする」とうたわれている。

五輪は、開催都市自治体がLGBT人権問題への対応を変えるきっかけとなっている。これは2014年ソチ冬季オリンピック開催時にロシアに向けられた批判でもあった。ロシア政府はオリンピックを損なう差別的な「同性愛者プロパガンダ」法を成立させるとともに、強制移動や移住労働者への人権侵害、メディアの検閲などの人権侵害を行っていた。2014年12月、「オリンピック・アジェンダ2020」で、国際オリンピック委員会(IOC)は、今後のオリンピック開催都市との契約に性的指向による差別の禁止を含めることを確認している。

都条例は「都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」(第4条)とするとともに、「都は、人権尊重の理念を東京の隅々にまで浸透させ、多様性を尊重する都市を作り上げていくため、必要な取組を推進するものとする」(第2条2)と定めている。

日本政府は近年、LGBTの人びとを認めその人権を尊重する方向性で前進してきたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。文部科学省は2016年に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を公表した。またこの年には、教育分野でのLGBTいじめに関する国連教育科学文化機関(UNESCO)国際閣僚級会合(IMM)の共同チェアをアメリカ、オランダとともに務めた。また2017年3月には、文部科学省は「いじめの防止等のための基本的な方針」の改訂にあたり、性的マイノリティの生徒への配慮を初めて盛り込んだ。このほか日本は、性的指向と性自認を理由とする暴力と差別の禁止を求める2本の国連人権理事会決議に賛成票を投じている。

こうした前進の一方、日本政府はいまだLGBTの人びとを保護する法律を制定しておらず、同性カップルのパートナーシップについても、これを認める地方自治体が増えている一方で、国レベルでの進展はない。また日本では、法的な性別認定手続き(戸籍変更)を求めるトランスジェンダーの人びとに「性同一性障害」(GID)という医学的なレッテル貼りを行い、みずからの性自認に基づく戸籍変更の要件として、不必要かつ侵襲的な(身体を傷つける)手術を受けることを義務づけている。

「東京都が今回示したLGBT差別禁止の政策は、日本政府にとってモデルとなる」と、前出の土井代表は述べた。「日本は2020年の東京オリンピックを人権尊重型にすると自負している。政府は開催までの2年間で、すべての人を保護するすべての法律の制定と政策の実施にあたるべきである。」

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