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ベトナム:環境運動家の訴追を取り下げるべき

活動家のレー・ディン・ロン氏 重い刑罰の恐れ

Photo of Le Dinh Luong, December 2015.  © 2015 Private
(ニューヨーク) -  ベトナム政府当局は、ベテランの環境保護運動家に対する政治的な動機に基づく訴追を取り下げ、ただちに釈放すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。レー・ディン・ロン(Le Dinh Luong)氏は2017年7月に逮捕され、刑法(1999年)第79条のもと「人民政権を倒壊させる意図で活動」したとして訴追された。ゲアン省人民裁判所は、2018年7月30日に公判を予定している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソンは、「ベトナム政府当局は、非共産党系団体や政権に批判的な政党に関係する活動家たちへの報復として、しばしば政治的な訴追をでっち上げている」と指摘する。「レー・ディン・ロン氏は、本来なら政府が対応すべき有害廃棄物の投棄などの環境災害に抗議した結果、刑罰に直面している。」

本件では、公正な裁判への懸念が深まっている。ゲアン省人民検察院は、2018年7月初めまで、レー・ディン・ロン氏に弁護人をつけることを許さなかった。彼の義理の娘でDefend the Defendersの記者グエン・ティ・ソアン(Nguyen Thi Xoan)氏は7月17日、家族による面会を許されておらず、逮捕以来、何の情報も伝えられていないと述べた。氏が有罪判決を受けた場合、終身刑そして死刑の可能性もある。

レー・ディン・ロン(52歳)氏はカトリック活動家で、ベトナム政府当局が政治的に容認しない多くの活動に参加してきた。中部高原地方のボーキサイト鉱業に反対する請願に署名。また、台湾企業フォルモサ・ハティン製鉄所(Formosa Ha Tinh Steel)に対する抗議運動にも参加した。同社は有害廃棄物を海洋に投棄し、2016年4月にベトナム中部沿岸で魚の大量死および環境災害を引き起こしている。

また、2016年5月には国政選挙のボイコットを宣言。グエン・ヴァン・ダイ( Nguyen Van Dai)氏、グエン・ヴィエット・ユン(Nguyen Viet Dung)氏、ホー・ドゥック・ホア(Ho Duc Hoa)氏など、政治囚に対する支援も表明している。連帯を示すため、釈放された政治囚や、民主主義および人権の擁護を理由に投獄されている人びとの家族のもとを訪ねたりしていた。

レー・ディン・ロン氏は、ベトナム刑法第258条「民主自由の権利を利用して国家の利益を侵害する罪」(最高7年の懲役)など、政府批判の封じ込めに用いられてきた法律の廃止を求める運動もしていた。著名な権利活動家で甥のレー・クォック・クアン(Le Quoc Quan)氏によると、レー・ディン・ロン氏はまた、農民の権利のための活動にも携わり、地元政府当局から課された過度の教育費や農業生産高費の支払いを拒む活動もしていたという。

2015年8月、レー・ディン・ロン氏をはじめとする活動家数名が、ラムドン省ラムハー県の政治運動家チャン・ミン・ニャット(Tran Minh Nhat)氏のもとを訪れた。同氏は国外を拠点とするベトナム革新党(ベトタン・Viet Tan)に関与した疑いで4年間の刑期を終えて出所。彼の訪問を終えた去り際に、平服姿の男たちが一同を襲った。

レー・ディン・ロン氏は2015年の事件について次のように詳述している:

「男たちは私のタブレットを奪って、バスの側面に投げつけました。私は顔や肋骨をなんども殴られ、頭も蹴られました。バスの中で5分間ほど殴る蹴るされたあと、外に引きずり出されてまた10分ほど暴行されました。体じゅう青あざになり、腫れてしまいました。ひどい痛みです。」

2017年7月24日に、レー・ディン・ロン氏と仲間の活動家タイ・ヴァン・ホア(Thai Van Hoa)氏は、2017年1月に再度逮捕されたグエン・ヴァン・オアイ(Nguyen Van Oai)氏の家族を訪問。タイ・ヴァン・ホア氏によると、その去り際にも平服姿の男たちに襲撃され、バンに押し込まれた。同日遅く、警察がレー・ディン・ロン氏の逮捕を発表。氏は刑法第79条のもと、「人民政権を倒壊させる意図で活動[した]」疑いで訴追された。

当時、警察および軍の新聞が同氏を「危険な反動分子」で、違法なベトナム革新党の党員であると非難していた。

レー・ディン・ロン氏逮捕の3週間後となる2017年8月、警察は弁護士のハー・フイ・ソン(Ha Huy Son)氏がレー・ディン・ロン氏の弁護人を務めたいという申入れを拒否。重大な国家安全保障上の違反が疑われている個人は、刑事訴追法第58条(現在は第74条)の定めにより、捜査が完了してからでないと弁護人をつけることができないと主張した。

ベトナムの政治的被拘禁者の多くは、弁護士との接見や家族との面会を認められないまま、何カ月も警察の管轄下に置かれており、これは国際人権法に違反した状態だ。7月現在、ルー・ヴァン・ヴィン(Luu Van Vinh)氏やグエン・ヴァン・ドゥック・ドー(Nguyen Van Duc Do)氏を含む少なくとも18人が、国家安全保障上の違反の疑いで捜査中とされ、拘禁され続けている。

前出のロバートソン局長代理は、「ベトナム警察は、拘禁した権利活動家やブロガーから、数カ月にもわたって弁護人や家族と接触する権利を奪っている。その上、担当の弁護人に公判前の準備期間をほとんど与えていない」と指摘する。「ベトナムの司法制度には抜本的な変革が必要だが、トンネルの向こうに光はみえないのが現状だ。」

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