Revellers wave flags during a gay pride parade in downtown Madrid, Spain, July 2, 2016.

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世界保健機関(WHO)が今週公表した「国際疾病分類第11回改訂版」(ICD-11)では、ジェンダーに不一致であること(gender non-conforming)を「精神疾患」とする記述がついに削除されました。この大きな変化は、WHOの定めるグローバルな診断基準の改訂を求めてきた、世界各地のトランスジェンダーの活動家による粘り強いアドボカシーのたまものです。

トランスジェンダーの人びとが今も世界各地で戦うスティグマと差別の大半は、みずからのジェンダー・アイデンティティを表現しようとする強い欲求に対して、精神病理という診断を下してきた医療制度の歴史的なあり方に由来するものだと言えるでしょう。しかし実際には、スティグマや差別、いじめ、いやがらせは、ジェンダーに不一致であることに端を発するのではありません。むしろ、トランスジェンダーの人びとにメンタルヘルスの問題を引き起こす要因なのです。

しかしこうした診断は長年変わりませんでした。トランスジェンダーの人びとに対し、名前や公的文書上の性別を変更する条件として、「性同一性障害(GID)」の診断を義務づける政府が多いことは、労働や教育、移動など基本的権利の享受の妨げになっています。

マルタノルウェーアルゼンチン、ネパールなどで状況は改善しましたが、世界各地の政府は、いまだにトランスジェンダーを「精神疾患」と見なしており、スペイントルコ日本などでは、氏名や性別を法的に変更するには、精神科医の診断を受けなければならないのです。

新たなWHOの疾病分類は「性同一性障害」を「ジェンダーの不一致(gender incongruence)」と言い換えたうえで、その診断コードを精神疾患の章からセクシュアル・ヘルス(性保健健康関連)の章に移動させました。思春期と成人のトランスジェンダーの人びとにとってこれは大きな前進です。近いうちに「精神疾患」と見なされずに医療ケアを求めることができるようになる可能性が出てきたからです。

しかしICD-11には、問題含みの、スティグマを生む診断である「子どものジェンダーの不一致(GIC)」が残り、思春期前の子どもに適用されることになります。しかし、みずからのジェンダー・アイデンティティやジェンダー表現を探究する幼い子どもたちには、第二次性徴抑制薬(puberty blockers)、性別変更用のホルモン投与、手術といった、大人や思春期のトランスジェンダーの人びとが時に求める特別な治療は必要のないものです。GICなる診断も必要ないのです。

しかし全体としては、WHOの新たな疾病分類は良い方向に大きな一歩を踏み出したのです。