2017629日時点のアップデート>

カインホア省人民裁判所は2017629日、ブロガーで活動家のグエン・ゴック・ニュー・クイン氏に10年の実刑判決を下した。根拠のない有罪判決や厳しい判決内容は、平和的な行動や反政府活動を刑罰により抑圧するベトナム政府の姿勢の表れだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。有罪判決を取り消し、直ちに釈放されるべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のフィル・ロバートソンは、「ベトナム政府はあいまいな国家保安法を使い、活動家を黙らせ、言論の自由を圧迫している」と述べる。「グエン・ゴック・ニュー・クイン氏のような活動家が、ベトナム国民すべての人権を守ったために10年間投獄されることを、世界のドナー国は傍観するべきではない。」

「マザー・マッシュルーム」(Me Nam ・メーナム)というペンネームでブログを書いている、グエン・ゴック・ニュー・クイン氏(38歳)は201610月に逮捕され、刑法第88条に従って「反国家宣伝」の容疑で訴追された。この法は、活動家や政府を批判する者を独断的に罰する手段としてしばしば用いられる。

グエン・ゴック・ニュー・クイン氏は、土地の接収や警察による虐待、表現の自由などを含む、社会・政治問題について執筆活動をしていた。彼女は2010年、表現の自由を擁護する執筆家として、ヒューマン・ライツ・ウォッチからヘルマン・ハメット賞を受け取っている。2015年には、シビルライツ・ディフェンダーズの2015年度市民権擁護者賞を受賞。「あなたが発言しなければ誰がする」をモットーに、恐怖から自由な環境を何よりも提唱してきた。

ベトナムのドナーや貿易関係国は、平和的な活動や言論で拘禁または投獄されている、グエン・ゴック・ニュー・クイン氏や、その他の活動家すべての解放を至急呼びかけるべきだ。また、平和的な批判者を罰するために用いられている、過度に厳しい法律の改正をベトナム政府に強く求めるべきだ。


Photograph of "Mother Mushroom." 

© 2017 Private

(ニューヨーク) - ベトナム政府は、「マザーマッシュルーム」のペンネームで知られるグエン・ゴック・ニュー・クイン(Nguyen Ngoc Nhu Quynh)氏を即時釈放し、その訴追を取り下げるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。同氏は2016年10月に逮捕され、刑法第88条に従って「反国家宣伝」の容疑で訴追された。カインホア省人民裁判所は、2017年6月29日に当該事案を審理する予定だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のフィル・ロバートソンは、「政府の改革と説明責任を求めるために表現の自由を行使しただけで、グエン・ゴック・ニュー・クイン氏を裁判にかけるのは言語道断だ」と述べる。「ここで問題なのは、マザーマッシュルームが言ったことではなく、平和的な批判者を罰し、ベトナムの国際的な評判を汚す、過度に厳しく人権侵害的な法律の廃止を、ベトナム政府が強硬に拒絶していることである。」

グエン・ゴック・ニュー・クイン氏(38歳)のブログ名は「マッシュルーム(の)マザー(Me Nam・メーナム)」。「マッシュルーム」と彼女が呼んでいる11歳の娘にちなんでいる。

グエン・ゴック・ニュー・クイン氏は、 「あなたが発言しなければ誰がする」をモットーに、社会・政治問題について執筆活動をしていた。トピックは土地の接収や警察による虐待、表現の自由など多岐にわたる。また、反体制派批評家への支援を表明し、Tran Huynh Duy Thuc氏、Nguyen Ngoc Gia氏、Nguyen Hoang Quoc Hung氏、Nguyen Huu Vinh 氏(Anh Ba Samとしても知られる)など多数の政治囚の釈放を求める運動を大々的に展開。とりわけ恐怖から自由な社会と政治的環境を提唱していた。逮捕当日の朝は、政治囚Nguyen Huu Quoc Duy氏の母Nguyen Thi Nay氏とともに、同氏との面会を求めて刑務所を訪れていた。

2009年9月のある夜中、警察がグエン・ゴック・ニュー・クイン氏を自宅から連行し、中国及び南沙・西沙諸島の領有権問題をめぐるベトナム政府の政策を批判したブログ記事について尋問。氏は9日後に釈放されたが、プライバシーを無視した警察の厳しい監視とブログ閉鎖の圧力は続いた。

グエン・ゴック・ニュー・クイン氏は、人権とクリーンな環境を提唱する多数の抗議集会に参加。警察は同氏がこうした重要イベントに出席できないようにするため、常に嫌がらせや威嚇、尋問、自宅軟禁などを行っていた。2014年に2回、同氏の身柄を拘束している。7月にオーストラリア大使館での会合に出席するためハノイに飛ぶのを阻止され、11月にはカナダとノルウェー大使館の会合への出席を阻止された。2015年3月に、今度はドイツ大使館での会合に出席するためハノイに飛ぶのを阻止され、拘禁されている。2015年7月には、政治囚釈放運動のために座り込みの抗議に参加したところ、警察官の目前で平服姿の男たちに襲撃されたと同氏は報告している。

国営メディアは、「警察による市民殺害を阻止せよ」というタイトルのファイルなど、グエン・ゴック・ニュー・クイン氏の反国家的なブログ活動に関する証拠はそろっている、と警察が主張していると報じた。ファイルには、警察の拘禁下で死亡した人びとのケース31件が含まれていたが、これらは同氏らが国営メディアから収集した情報だ。当該ファイルは「人民警察に敵対的な視点を帯びている。文書は、問題の本質を誤ったかたちで読者に伝え、人民警察の威信を損なわせ、かつ市民と警察の関係を傷つける」内容と警察は主張している。

ファイル「警察の市民殺害を阻止せよ」にまとめられていた多くのケースには、ヒューマン・ライツ・ウォッチがこれまでに調査・検証し、発表してきたものも多く含まれる。Nguyen Quoc Bao氏、Nguyen Van Khuong氏、Trinh Xuan Tung氏、Tu Ngoc Thach氏、Y Ket Bdap氏は、警察の拘禁下で暴力を受けて死亡した。ベトナム公安省によると、2011年10月〜2014年9月に拘禁施設で死亡したケースは226件にのぼる、と国営メディアも報じている。 

警察はグエン・ゴック・ニュー・クイン氏の家宅捜査時に、多くの犯罪証拠を押収したと主張する。これら証拠の中には、「魚に水が必要なように国家には透明性が必要だ」(Ca can nuoc sach; Nuoc can minh bach)「フォモサ(注:ベトナムで公害疑惑が持ち上がっている台湾企業)に対して法的措置をとろう」(Khoi to Formosa)「フォモサはいらない」「フォモサは出て行け」、そして南沙・西沙諸島での領有権問題に絡んだ反中国的主張「中国の拡張主義にノーを」といったスローガンがあったという。

Facebookやブログ記事に加えて、同氏が犯したとされるそのほかの「犯罪」は、CNNとラジオ・フリー・アジアのインタビューに応じたことなどだ、と警察は述べている。

グエン・ゴック・ニュー・クイン氏は2010年、表現の自由を擁護する執筆家として、ヒューマン・ライツ・ウォッチからヘルマン・ハメット賞を受け取っている。2015年には、Civil Rights Defendersの2015年度市民権擁護者賞を受賞。2017年3月には米国務省から「世界の勇気ある女性賞」も受け取った。

ロバートソン局長代理は、「グエン・ゴック・ニュー・クイン氏はこの10年間、ベトナムの人権を向上させ、自由と民主主義を促進するために、絶え間ない努力を続けてきた」と指摘する。「国際ドナーと貿易相手国は、同氏の逮捕をおおやけに非難し、即時かつ無条件に釈放するようベトナム政府に強く求めるべきだ。」

ブロガーのグエン・ゴック・ニュー・クイン氏に加え、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、平和的な活動および言論を理由に拘禁、あるいは投獄されているすべての人びとを無条件で釈放するよう、ベトナム政府に強く求めている。拘禁され捜査中の人の中には、著名な権利活動家のNguyen Van Dai氏およびTranThi Nga氏も含まれる。 Nguyen Van Dai氏は2015年12月の拘禁以来、2017年5月初めの時点でも弁護人との接見を許可されていないと報じられている。また弁護人のHa Huy Son氏によると、(2017年1月から拘禁されていた)Tran Thi Nga氏はこの3週間病気で、お粥しか食べることができないという。彼女は当局に対し、病院での治療を2回要請するも却下された。Nguyen Van Dai氏とTran Thi Nga氏は、刑法第88条に基づいて訴追されている。