Child picking cotton in September 2012, Suyima Prakhtakor, Jizzakh.

© 2012 Uzbek-German Forum for Human Rights

(ニューヨーク)国際労働機関 (ILO) は6月11日に画期的な新条約を採択。強制労働の防止と世界2,100万人と推計される被害者への補償に向けた取り組みを前進させるものだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ILOを構成する各国政府・労働組合・雇用者団体の大部分が1930年の強制労働条約の2014年議定書の採択に賛成した。同条約は世界の大半の国が批准しているものの内容は古くなっていた。このため移住労働者を対象とし、民間部門に対応するなど、現在の人権侵害への対処強化が図られた。

強制労働被害者は、農業・家事労働・製造業・性産業などで人身取引に遭ったり、奴隷労働に近い状態に置かれている場合がある。多くは危険な状況下での長時間労働をごく低賃金か無賃金で行っている。心理的・身体的・性的暴力、監禁や債務による束縛、報復への脅迫などにより移動の自由を失っている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利上級調査員ニシャ・ヴァリアは「数千万人が被害をうけ、人間としての品位を否定される環境から抜け出せない。現代社会の恐るべき汚点だ」と述べる。「各国政府はこの条約をただちに批准・実施し、人権侵害を停止し、社会の日の当たらない片隅に隠された被害者であっても探し出して保護し、関与者の処罰を行うべきだ。」

ILOの推計によれば、被害者の男女比は45:55で、全体の26%が子どもだ。人権侵害の多くが人びとの目に触れないところで起きている。また強制労働を課す側は1,500億ドル(約15兆円)の不法な利益を得ている。各国政府の税収や社会保障費徴収の損失分は数十億ドルに上る。

今回の強制労働議定書に記された防止策には、国別行動計画の策定、強制労働の恐れがある部門への労働法の適用拡大、労働基準監督の強化、搾取的な募集からの移住労働者の保護などがある。新議定書はまた各国政府に対し、企業活動での強制労働の防止と発生時の対応のために企業が行うデューディリジェンスを支援することも求めている。ILOの推計では、強制労働の90%は民間部門で起きている。

同議定書は各国政府に対し、強制労働被害者の特定・解放・支援提供と共に報復からの保護策も定めるよう求めている。

さらに本議定書第4条では、各国政府に対し、滞在資格を問わずあらゆる被害者が法的措置と救済措置(補償など)を求められるようにすることを求めている。現在では、滞在資格がないこと、または母国に帰還した移民労働者には入管政策が立ちはだかる。当局への苦情申立や提訴だけでなく、給与の未払い分を受け取ることすらきわめて難しい。

第4条はまた各国政府に対し、強制労働被害者を、強制労働を直接の原因として強いられた不法な活動(入管法違反、性産業、薬物犯罪、暴行など)を理由とし、起訴することのないよう裁量を行使するよう求めている。

「残念なことに、強制労働被害者は支援への権利を持つ存在ではなく、犯罪者として扱われることがあまりに多い」と、前出のヴァリア調査員は述べる。「入管法違反や刑事罰に問われた容疑者の中から強制労働被害者を特定する取り組みを進めれば、適切な支援により二重の被害を防ぐことにもつながる。大きな前進となろう。」

強制労働に関するILO29号条約は、1930年に採択され177カ国が批准する。同条約での強制労働の定義とその犯罪化は各国及び国際基準の一部となっている。だがその他の部分は植民地での強制労働を扱っており時代にそぐわない。新議定書は29号条約からこれらの条項を削除し、元の条約の現代化をはかった。

各国政府が本条約に法的に拘束されるためにはまず、議定書を各国が批准しなくてはならない。ILO加盟国・団体の協議により、各国政府に対して拘束力のない法的指針を定めた勧告も採択された。信頼できる情報の収集、児童労働対策、基礎的社会保障の保証、労働者への斡旋費徴収の禁止、強制労働対策に向けた外交官の国際的連携などだ。

追加の勧告の一つである検討・回復期間により、被害を受けた移住労働者はその国に一時滞在し、保護を受けるか法的措置に訴えるかを決めることができる。この勧告は、企業など法人が強制労働の責任を追及される可能性があること、強制労働による収益やその他の資産の没収などの罰則を受けなければならないことを明記している。

交渉に参加したヒューマン・ライツ・ウォッチの代表団は、主要な保護策の強化では踏み込み不足があったことを指摘した。例えば、企業はサプライチェーンを含めた強制労働で必要な手段を講ずるとされてはいるが、各国政府が行うのは企業への「要求」ではなく「支援」である。勧告草案では各国政府は、被害者救済基金を設置するとともに、被害者のインフォームドコンセントの上で支援を提供するとあったが、この部分には十分な支持が得られず最終案では削られた。議定書と勧告は被害者への補償を繰り返している。だが義務としてではなく、ひとつのオプションという扱いだ。

「交渉の結果、各国が従うべき強力な条約を生んだと、全体としては評価できる」と、ヴァリア調査員は述べる。「強制労働の中には、現在の世界に存在する最悪レベルの人権侵害の事例も含まれる。各国は強制労働廃止と被害者支援に向けて可及的速やかに行動すべきだ。」

政府・労働者代表・雇用者代表が投じた472票の内訳は、賛成437、反対8、棄権27だった。

この10年でヒューマン・ライツ・ウォッチは強制労働に関する報告書を49本刊行している。内容は子どもに対する物乞いの強制、家事労働・建設現場・農業・鉱業での搾取、刑務所や薬物中毒者施設での強制労働、内容を明示しない労働者募集などだ。