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米国:就労できずお手上げ状態の難民申請者たち

極度の困窮を引き起こす「恣意的な就労禁止」を撤廃すべき

(ニューヨーク)-米国政府は先進国中でほぼ唯一、難民申請者への就労許可と政府支援を共に認めない国だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチと、シートン・ホール大学ロースクール「社会正義のための法律センター」は、本日公表した報告書でこう述べた。

全56ページの報告書「せめて就労させて:就労許可と支援を共に受けられない米国の難民申請者」は、就労が認められないことが原因で、難民申請者が直面する苦境をまとめている。申請者の多くが、母国で過酷な人権侵害を経験している。移民国籍法を改正し、濫用とはいえない(non-frivolous)難民申請の場合、就労を妨げる規定は削除すべきだ、と両団体は訴えた。

「米国政府は、多くの難民申請者を、生存のために物乞いや、闇労働をせざるをえない状況に放置している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ難民プログラム局長ビル・フレリックは指摘した。「難民申請者に対する就労も支援も両方とも制限する理由は、妥当とは言えない難民申請を抑止するためとされているが、実際には、支援と保護の必要性がきわめて高い人々に危害を加え、尊厳を辱めている。」

米国移民法は、難民申請者について、申請後150日間(申請処理の30日を加算し、合計180日間)は、この期間内に難民認定されない限り、合法的な就労を認めていない。この期間を算定する「アサイラム・クロック」は、申請者が手続きを遅らせたと政府が判断すれば、いつでも止められる。しかも実際、この「時計」を停止し、再開させる要因が何なのかが正確にはわからない。

この問題は、ほぼすべての難民申請者に影響を及ぼしている。連邦移民審査局によれば、2011年の場合、アサイラム・クロックは、26万2,025人(係属中の全申請の92%に該当)について、いずれかの時点で停止した。停止措置により、就労許可申請の機会も認められなくなるため、極めて多くの難民申請者が、何か月もしくは何年にもわたり、生計維持の手段がないまま放置される。

難民申請者はまた、決定が出るまでの間、ほぼあらゆる種類の政府給付を受けることができない。つまり米国は、先進国の中で唯一、難民申請者に就労を認めず、政府給付も与えない国なのだ。

エジプト出身の難民申請者ハレード・M氏は、ほぼ5年にわたり就労できず、家族に対する公的支援も受給していないと述べた。一家は食べ物と寝る場所を探すのに苦労した。バス停や空港で幾晩も過ごすことがあったという。真夏のある一週間、夫妻と2人の小さな子どもは居場所を追い出され、寝る場所も食糧もないまま路上で生活した。

ルワンダ出身でレイプ被害者であるジョシャンヌ・F氏(27)は、何年も就労できない状況を「心底滅入ってしまう」と表現した。「1人で何もしないまま、1年、2年、3年、5年と過ごしてきた。何もせず、ただ待つだけ。精神的に参ってしまった」と述べた。

氏はまた、弁護士の支援のないまま、難民申請と就労許可に関する法律と手続きを乗り切ろうとするのは、きわめて困難であることがわかったと話す。2008年5月に、弁護士の支援なしで難民申請を行ったが、一人で提出した書類は間違いだらけだったと言う。氏は「あの時弁護士を頼んでいたら、結果は違っただろう」と述べた。その後4年にわたり、難民申請が審査中のあいだ、就労は禁じられた。

「難民申請者が複雑な手続きをこなせると考えるのは非現実的だ。米国では、難民申請者に国選弁護士をつける権利はない」、とシートン・ホール大学ロースクール「社会正義のためのセンター」のセンター長、ロリ・A・ネッスル法学部教授は指摘した。「難民申請者に就労許可がでるまで待たせることは、本人と家族に不当な負担となっている。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチと、シートン・ホール大学ロースクール「社会正義のための法律センター」は、就労許可と給付に関する難民申請者の処遇を、米国において弱い立場にある、その他の移住者集団と比較した。一時的身分保障(TPS)など、他の人道的救済措置を求める移民は、同時に就労許可申請もできる。

「米国法で難民申請者に就労許可と社会給付の受領を禁止していることは、国際人権基準にそぐわない。他の弱い立場の集団への処遇とも矛盾する」と、前出のネスルは指摘した。

米上院は2013年6月27日、「国境警備・経済的機会・移民制度現代化法(S.744)」を通過させた。これには、申請期間中のアサイラム・クロックの停止手続の撤廃が含まれる。しかし下院では、まだこうした改正案が検討されていない。

「上院の法案は、アサイラム・クロックを撤廃した点では、現行法より前進した。しかし難民申請時点から就労許可を180日とする制限は残っている」と、前出のフレリック局長は指摘した。「米議会は、移民法の包括的改革を検討するにあたり、難民申請者については、濫用的申請と判明した場合を除き、難民申請と同時に就労許可申請もできるようにすべきである。」 

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