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国連/スーダン:南コルドファン州 国際監視が必要

安全保障理事会 武力攻撃の即時停止 求めよ

(ジュバ)-スーダン・南コルドファン州で、スーダン政府軍による大規模な人権侵害が起きていると報告されている。国連安全保障理事会は、ただちに国際的な監視を徹底する措置を講ずるべきである。安保理理事国は、7月28日に予定される会合で、一般市民に対する無差別な過剰攻撃の即時停止に向け圧力をかけるとともに、これらの犯罪に関与した個人は「その罪を問われることになる」という警告を発すべきである。

スーダン政府とスーダン人民解放軍間の衝突は、6月5日、南コルドファン州のカドゥグリなどの町で始まった。政府軍は一般市民居住区域に砲爆撃を加え、民家や教会を略奪、スーダン人民解放運動(以下SPLM、現在の南スーダン与党)の関係者と見られる個人を逮捕、殺害している。ジュバでヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた目撃者たちが、攻撃の様子を証言してくれた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ダニエル・ベケレは、「南コルドファン州に住む数万人の一般市民が非常に危険な状態に置かれているが、現地で起きていることを伝えられる人がいない。もちろん行動を起こす人もいない」と述べる。「スーダンに駐在する国際機関には、更なる残虐行為の防止に向け緊急の行動が求められている。」

戦闘は数カ所で発生しており、スーダン政府は避難民が集まる地域など、ヌバ山脈全域を空爆。6月26日にはクルチ(Kurchi)を爆撃し、子ども3人を含む16人を殺害した。ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した資料から、爆発でひどく損傷したとみられる女性や子どもの遺体が見て取れる。

南コルドファン州はスーダンと南スーダンの国境線北側に位置し、ヌバ系民族が多く住む地域。地元住民は長らく南スーダンとの関係を強力に保ってきた。圧倒的多数の南スーダン住民が分離独立を支持した1月の住民投票を受け、南スーダンは7月9日に独立国家となった。住民投票は、22年続いた内戦を終結させた2005年包括和平協定で合意された条件の一つだった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた目撃者たちは、兵士や武装した民兵がカドゥグリで一軒一軒しらみつぶしの家宅捜査を行い、その際一般市民に発砲したと証言。町から避難する時に、家の中や地面に何十もの遺体が転がっているのを見たという。あるSPLMの学生党員は、6月6日、他の学生たちとルームシェアしていた家に多数の兵士が侵入してきたので町を脱出したが、その際「塀を乗り越えて隣の家に逃げこんだら、そこには父親と母親、3人の子どもの死体があった」と証言した。

このSPLM学生党員と他6名の学生は、カドゥグリ郊外の国連スーダン・ミッション(以下UNMIS)施設付近に避難を試みたが、政府治安部隊がSPLM党員を探してUNMISの保護領域内に侵入してきたため、北東に位置するディリンに向けて脱出した。

爆撃がほぼ毎日続き、多くの男性、女性、子どもが殺害され、何千人もの一般市民が安全を求めて付近の洞窟への避難を余儀なくされている。現地の消息筋によれば、現在行なわれている戦闘を避けて避難した人びとの数は、数週間前の推計7万3,000人から倍増し、現在15万人以上に上る。

被害者たちが住む地域の道路と空路をスーダン政府が遮断していることから、南コルドファン州への立ち入りは困難な状況のままだ。加えて空爆作戦で滑走路が破壊されたり破損したりしているため、人道援助がヌバ山脈の避難民に届かない状態にある。

前出のベケレは、「まずは、安保理が、南コルドファン州への人道援助目的の無制限の立ち入りを確保すべきだ」と述べる。

2005年包括和平協定の一環として設立された国連平和維持ミッションは、一般市民に一定の安全を実現してはきたものの、そのマンデートは7月9日に正式に終了した。南コルドファン州に残留する国連部隊は8月31日に予定された撤退まで、基地から出ることができない。

6月に安保理はUNMISのマンデート延長同意をスーダン政府に働きかけたが、失敗に終わっている。5月に政府軍が占領したアビエイ (Abyei) では、エチオピアの部隊が国連アビエイ暫定安全保障軍(以下UNIFSA)として、平和維持の役割を引き受けている。包括和平協定で未解決の問題を仲介するアフリカ連合高官級実行委員会もまた、南コルドファン州に関与している。同委員会は以前アビエイ暫定軍のための協定の仲立ちをし、ダルフール紛争の解決策も勧告している。

南コルドファン州における国際プレゼンスは緊急を要する。現存する平和維持ミッションを増設するか、国連やアフリカ連合、あるいはその両者を巻き込んでの独立したミッションも可能だろう。いずれにせよ、ミッションには人権蹂躙を監視し、それを公に報告する明確なマンデートが必要だ。

6月中旬にメディアにリークされたUNMISによる未公表の報告書は、超法規的処刑、しらみつぶし逮捕作戦や検問所での逮捕、拉致などが大量発生している実態を取りまとめている。一例としては、6月8日に複数の北部民兵が平和維持部隊施設の前で、ある請負業者を車から引きずり出した末、角に連れていき射殺した事件がある。

報告書はUNMIS人権監視員がミッションのマンデート終了以前に収集した情報を基にしており、「多数の遺体や集団埋葬地、化学兵器の使用、地雷の存在」といった目撃者の証言を詳述。仮にこうした違反行為が立証された場合、戦争犯罪や人道に対する罪に値する可能性ありと指摘している。

国連人権高等弁務官は、今週アビエイに調査団を派遣する。調査団が南コルドファン州入りを果たせる可能性はあるものの、その見込みは低い。7月28日、安保理で、南コルドファンの状況に関する国連人権高等弁務官事務所高官からの報告が予定されている。

前出のアフリカ局長ベケレは、「一般市民の保護と、更なる人権侵害の発生防止に向けた迅速な対応を可能とするよう、安保理は、南コルドファン州危機の最新情報をつかんでおく必要がある」と指摘。「今週予定される報告は、初めの一歩ではある。が、スーダン政府に対し、監視活動をもっと認めるよう安保理が強く働きかけない限り、この報告の後はどん詰まりになってしまうだろう。」

南コルドファン州における重大な人道法違反や一般市民に対する人権蹂躙に最も重い責任を負う個人には、海外渡航禁止や資産凍結といった制裁措置を加えるべきである。過去数カ月にわたり、安保理、欧州連合、米国など国々が、チュニジア、エジプト、リビア、シリアなどの北アフリカや中東の国々の人権侵害責任者個人に制裁措置を発動している。

スーダンでは、ダルフールでの重大な人権蹂躙に対して長い間不処罰が続いており、それが南コルドファン州をはじめとした、全国各地の似たような残虐行為につながっていると見られる。国連安保理は2005年にダルフール問題を国際刑事裁判所(以下ICC)に付託。ICCはオマル・アル=バシール大統領とアーメド・ハルーン南コルドファン州知事を含む容疑者3名に逮捕状を発行している。

ハルーン州知事はダルフールでの戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で指名手配され、アル=バシール大統領には同じくダルフール紛争におけるジェノサイド(集団虐殺)罪、戦争犯罪、人道に対する罪の容疑で2通の逮捕状が出されている。以来6年が経過したが、スーダン政府はICCへの協力と逮捕状の執行を拒んでいる。

タボ・ムベキ前南アフリカ大統領率いる、ダルフールに関するアフリカ連合高官級委員会が司法勧告を行ったが、スーダン政府はそれを実行に移すための実のある措置を何ら講じてこなかった。2009年10月に同委員会はダルフールに関する報告書を発表し、国際法に違反する重大な犯罪を指摘したが、スーダン政府はそうした犯罪に法の裁きを下していない。

7月11日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、インターライツ、REDRESS、スーダニーズ・デモクラシー・ファースト・グループなどの人権団体が、人権侵害の調査・検証及びアカウンタビリティ(責任追及・真相解明)が極めて重要であると、アフリカ委員会に対し圧力をかけてほしいと要請した。

前出のベケレは、「監視の目が現場になければ、処罰の全くないまま残虐な作戦を継続できるとスーダン政府は信じているかもしれない。人権侵害を犯した個人は、必ずその罪を問われるという強いメッセージを、安保理は今こそ発するべきである」と指摘した。

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