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(ワシントンDC)-マイクロソフト社最高経営責任者(CEO)スティーブ・バルマー氏による、中国でのインターネット検閲問題についての本日の発言は、インターネット上での表現の自由を守るためにインターネット関連企業がとるべき立場とはまだかけ離れている、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

1月27日夜に同社の公式ブログ上で発表されたコメントにおいて、バルマー氏は、同社のインターネット上の自由に関する規定は、グローバル・ネットワーク・イニシャティブ(GNI)の方針に沿ったものであることを示唆。GNIには、マイクロソフト社を含むインターネット関連企業の他、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体、その他の専門家などが参加している。

さらにバルマー氏は、同社は「政府との対話のなかで」インターネット上の自由への規制に反対した、と述べた。しかしながらGNIは、国内の裁判所で当該国政府による検閲に対する異議申し立てを行ったり、国内外の政府代表に幅広くこの問題を提起するなど、企業に対しもっと積極的な立場をとるよう呼びかけている。マイクロソフト社は、このような行動をとっているかを明らかにしていない。

「マイクロソフト社は、検閲にどのように立ち向かうか明らかにする必要がある。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのビジネスと人権局局長アーヴィンド・ガネサンは述べた。「平和的な抗議者に対する規制は課されるべきではない、との見方は我々と一致している。しかし、同社がこの問題に対しどのように対応するのかが明らかではない。」

一方で、グーグルは先日、中国政府が中国語の検索エンジンの検閲を続けるのであれば、中国から撤退すると発表している。マイクロソフト社の行動は、この発表と著しく対照的である。

マイクロソフト社の公式見解は、インターネット上の検閲には反対するというもの。しかし、同社CEOバルマー氏と、会長兼共同創始者ビル・ゲイツ氏による先頃の公式発言は、中国におけるインターネット検閲を軽視、あるいは支持すらしているようにみえる。

「マイクロソフト社は、この問題で誤った立場を取っている」と、ガネサンは述べた。「米国政府やグーグルなどの企業が、検閲と立ち向かい始めた矢先に、バルマー氏とゲイツ氏は逆方向に向かったようだ。マイクロソフト社がその立場をはっきりさせなければ、中国政府を含むその他の政府は、いとも簡単に検閲に反対する人びとを分断し、飲み込んでしまうだろう。」

1月21日のウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えたところによると、バルマー氏は石油産業の会合で、「[検閲という]自らの決定を下す各国家の主権は、尊重せねばならない」と述べた。

1月25日にはビル・ゲイツ氏が、その見方を補強する形で、次のようにABCのインタビューに応えた。「すべての国において、インターネットの役割は前向きなものだ。人びとは、自らの意見を表す新たな方法を見つけた。(省略)中国政府によるインターネット検閲の取り組みは、幸いにも非常に限定的だ。(省略)その検閲をかわすのはたやすい。」ゲイツ氏はまた、それぞれの国が検閲に対して独自の法律を持つと指摘。続けて、「今自分がいる国の法律に従うか否か、めいめいが決定しなければならない。従わなければ、そこでのビジネスが結果的にできないこともあろう。」

3億人を超えるインターネット利用者が存在する中国は、大規模なネット上の検閲体制があり、これを支えるために膨大な資源が投入されている。政府が高性能のファイアウォールやフィルタリングを設置していることもさることながら、検索エンジン、ブログあるいは他のオンライン・メディアを運営する企業による自己検閲も行なわれている。

米国のヒラリー・クリントン国務長官は1月21日、インターネット上の自由に関する演説で、「検閲は、いかなる国のいかなる企業も、決して受け入れるべきではない」と述べた。バルマー氏とゲイツ氏による一連の発言は、同長官の声明を台無しにするものである。クリントン長官はまた、「民間企業には、表現の自由を支える共同責任がある。ゆえに、企業による経済活動が表現の自由を脅かす場合には、企業はその場の利益だけでなく、何が正しいのか考慮する必要がある」と述べた。

中国の検閲体制は、同国のネット利用者が政治的に「微妙」とされる内容やウェブサイトを検索することを妨害している。ヒューマン・ライツ・ウォッチや他の人権擁護団体、チベット人やウィグル人の権利の促進を目指す団体、非合法化された気功グループ、法輪功などのウェブサイトもブロックされている。中国政府は、ネット上で言論の自由を行使した活動家たちを取り締まるために、こうした人びとの利用者情報をあらゆる手をつくし、探し出してきた。

バルマー氏とゲイツ氏の発言は、クリントン長官の演説に対するマイクロソフト社の姿勢とも矛盾しているようにみえる。同社研究主任兼戦略幹部であるクレイグ・ムンデ(Craig Munde)氏は、自社ブログで次のように述べた。「私たちは、クリントン長官の発言を歓迎するとともに、自由な表現やプライバシーなどの重要課題に強い関心を示したことを高く評価したい。特に、政府と民間が重要な役割を担っている、という考えに賛成だ」。続けて、「長官はまた、米国政府が独力でこのような難題に立ち向かうのは不可能であり、国際協力が何より肝要であることを強調した」と述べた。

「マイクロソフト社が自社ブログで、インターネット上の自由の支持を表明したことを、私たちは歓迎している。しかし、同社の会長とCEOも、自らの発言の意図を明らかにする必要がある。」とガネサンは述べた。「同社が検閲に屹然と反対する立場を取り、検閲と闘うために団結することを願う。検索エンジン、ビング(Bing)の中国における自己検閲を止め、グーグルのように、検閲なしの検索エンジン運営を中国政府に強く求めるなどの行動が求められる。」

また、ムンデ氏は、マイクロソフト社が、オンライン上のプライバシーや表現の自由保護のために自主的に活動を行っているグローバル・ネットワーク・イニシャティブ(GNI)のメンバーであることにも言及。GNIは、マイクロソフト社、ヤフー、グーグルの他、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体、研究者、社会的影響を持つ投資家などが創設した。

2006年、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、他団体とともに、グーグル、マイクロソフト社、ヤフーが、中国で情報を検閲している実態や、ヤフーが利用者情報を中国政府に渡したために、表現の自由の行使を理由として人びとが投獄された実態を報告書に取りまとめた。

GNIについては、クリントン長官の演説中でも、インターネットの自由を促進し、企業責任を明確化する組織として言及された。GNIは企業に対して、次のように推奨している。「国内の実態法や手続法、または国際人権法、表現の自由の基準と矛盾するとみられる政府規制に直面した場合、当該国の裁判所で政府に対し異議申立を行うか、関係政府当局、国際人権団体、もしくはNGOの支援を求めること」。この度のバルマー氏とゲイツ氏の見解は、こうした手引きの内容から乖離している。

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