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米国:入管への書類未提出のみを理由とする難民の強制収容やめよ

米国入国から1年以内にグリーンカード申請しなかったことを理由に、難民を恣意的に拘禁することを許す現行法

(ワシントンDC)-米国移民税関執行局(ICE)が、書類提出をしなかったとして、難民たちを恣意的に無期限拘禁している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。難民として認定されて米国に受け入れられた外国人たちは、1年以内に、複雑なグリーンカード(永住権)の申請をしなくてはならないという問題に直面している。

本報告書「米国における難民の強制収容:永住権取得していない難民に対する恣意的収容」(40ページ)では、難民認定手続きで徹底的な審査をして入国を認めたにもかかわらず、米国移民当局が、入国後1年以内に永住権取得申請(グリーンカード申請)を行わなかった人びとを拘禁している問題について、調査して取りまとめた。これを理由に投獄された人びとの数は多くはなく、しかも、その数はオバマ政権下で減少傾向にあるものの、強制収容が選択的かつ恣意的なままであり、国際人権法に違反している。本報告書は、こうした強制収容を許す法の抜け穴を塞ぐよう提案するとともに、米国の海外難民再定住プログラムを改善し、外国人を難民として認定し入国を認めた時点で永住権を与えるよう提言している。

「米国政府が、迫害された難民を受け入れておきながら、必要な入管関係書類を提出しなかったという理由で、1年後に一転して難民を投獄するのは、全くナンセンスな皮肉だ。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの難民政策局長ビル・フレリックは述べた。「このような心無い官僚的政策は、政府の資源の無駄遣いなのはもちろんのこと、難民とその家族を必要以上に深く傷つけている。」 

本報告書は、アリゾナ州とペンシルバニア州の移民収容所に収容されている17名の難民たちからの聞き取り調査とともに、在留資格変更申請をしなかったために強制収容された難民たちの支援を行う、アリゾナ州、ペンシルバニア州、メリーランド州、ニューヨーク州、ワシントンDCの司法支援センターのスタッフからの聞き取り調査を基に作成された。米国の国土安全保障省は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、この政策は見直しのために検討中であると明らかにしたものの、現在進行中の案件という理由で、本報告書の調査結果に対するコメントは差し控える、とした。

米国政府は毎年、迫害や紛争で移住を余儀なくされた何千-何万もの人びとから聞き取り調査を行うため、担当者を海外に派遣している。そして、その過程で再定住の必要がある難民と認定した人びとを、米国に受け入れている。難民たちは、米国入国から1年経過後、合法的永住資格(lawful permanent resident、LPR)=いわゆるグリーンカード=を申請するために資格変更手続きをするよう義務付けられている。

米国政府は、難民たちに、締切り期限が近づいていると正式に通知することはない。加えて、難民たちが限られた英語力しか持たず、米国法について知らないこと、入管手続に対する十分な理解がないこと、必要書類提出のために必要な資金や支援も不足しているなどの理由で、期限内の書類提出は容易ではない。

セバスチャン・ンイエンボ(仮名)は、コンゴ民主共和国から米国に移住してきたとき、わずか8歳だった。グリーンカードの申請義務は知らなかった。「ぼくは8歳だったんですよ。父は亡くなっていました。大きくなってから[グリーンカード申請が]必要だったと分かりましたが、それが義務だったなんて知らなかったんです。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。

アリゾナ州砂漠の僻地にあるエロイ(Eloy)収容所に拘束中のセバスチャン。2009年8月にヒューマン・ライツ・ウォッチが彼を訪ねた時、セバスチャンは、4ヶ月前にエロイ収容所に入れられてから一度も7歳と4歳の子どもと話をしていなかった。セバスチャンの息子は、鎌状赤血球症を患っているために、高額な医療費が必要だが、収容中とあって子どもたちを養えない。「妻は困窮して、家も差し押さえられてしまいました。」

移民税関執行局は、移民及び国籍法第209条a項を、「米国に12カ月滞在しながら、在留資格の変更の申請をしていない難民については、必要書類を申請し認可されるまでは、収容は必須」と解釈している(但し、法律は、必ずしも画一的に適用されているわけではない)。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ほとんどの聞き取り調査をアリゾナ州で行なったが、そのアリゾナ州では、難民たちが、砂漠地帯の僻地の収容所に、多くの場合数カ月、中には1年以上も、何らの訴追もされることなく収容されていた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた人びとの大多数は、「強制収容される前に、在留資格変更を義務付けられていたことを知らなかった。」と語った。ほとんどの人が、申請は選択的なもので申請しなくてもいいのだと思っており、滞在1年後に必要書類提出をしなかった場合に、法的制裁を受ける可能性があることを知らなかった。

「これらの難民たちは、彼らが住まう地域にとって危険な存在ではなく、逃亡の可能性もない。」とフレリックは述べた。「彼らを配偶者や子どもから引き離して収容することは、彼らの教育を中断させ、仕事を失わせてしまう。それは言うまでもなく、心的外傷後ストレス障害を持つ人びとに、新たな心的外傷を負わせる行為だ。」

米国政府は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の締約国で、同規約の9条は「何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない」と規定する。この禁止規定は、人は場合によっては、その自由を奪われる可能性があることを意味している。しかし、国際法の許す自由の剥奪は、拘禁が合法的な目的に合致し、かつ、拘禁に代わる手段が他に全くないなど、必要かつ比例原則に合致する場合に限られる。仮に、国内法が拘禁を定めていても、こうした国際法の条件に合致することが必要なのだ。逮捕や拘禁が、国内法に違反して行なわれた場合や、法律そのものが恣意的、あるいは極めて広義な文言である場合には、当該逮捕・拘禁は恣意的ということになる。

在留資格変更の申請をしないことは、訴追されるべき刑事犯罪でも、民事法の違反にも該当しない。そのため、刑事犯罪を犯して有罪判決を言い渡された人の懲役の期間は決まっているのに、難民の収容期間は期限がない。つまり、当人が必要書類を提出して申請し、それが完全に承認されるまで収容され続ける。手続きが完了するまでには、4カ月から6カ月、時には1年以上かかる場合もある。

本報告書「米国における難民の強制収容」で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、移民税関執行局による難民収容を容認する現行法を改正するよう、米国連邦議会に強く求めた。更に、難民認定や難民再定住プログラムの過程で、個々のケースがすでに詳細に審査されているのだから、難民認定された人びとに永住権を認めるよう、議会に提案。同時に移民税関執行局に対しては、難民収容を中止し、在留資格変更申請を自宅で行なうことを容認するよう求めた。

拘束の理由や収容期限を知らされないまま収容される経験は、多くの場合、収容されている人に大変な不安と失望感をもたらす。前出のセバスチャン・ンイエンボも、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、「私は善人、良い心の持ち主なんです。でも、もうあきらめかけてます。気力がなくなってしまったんです」と語った。

現行法が滞在から1年後に在留資格の変更を要求しているのは、移民管理当局に、犯罪的素行をした難民の追放を検討する機会を与えるためだ、だから正当だ、とする意見もあろう。しかし、本報告書「米国における難民の強制収容」の主要な提言とおり難民認定とともに自動的に永住権を与える法律になったとしても、依然として米国の入国管理当局が犯罪者を国外退去させることはできる。「現行法でも、グリーンカード所持者が犯罪を犯して有罪判決を受けた場合に、こうした外国人を国外追放する手続きはたくさんあるし、しかも、手続中、そうした外国人を収容しておく手段も十分ある」とフレリックは述べた。

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