Soldiers in Conakry shortly after the military coup in December 2008.

© 2008 Reuters

 (ダカール)-2008年12月、軍事クーデターで新政府が政権に就いて以来、実業家や一般民間人への定期的な窃盗や暴力行為に、ギニア軍兵士が関与している、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。新政権はこれらの襲撃を止めさせ、警察・憲兵隊・司法当局は中立的な立場で捜査を行い、犯罪に関与した兵士を訴追するべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、19件にのぼるこれらの事件について、被害者及び目撃者からの証言を得た。それによるとほぼ全ての事件が、ナンバープレートの付いていない民間車両もしくは公式軍用車両に乗り、赤いベレー帽を被った重武装の兵士たちによって行われている事が明らかになった。最大で20名にも及ぶ兵士集団が、夜間のみならず白昼堂々、事務所・店・倉庫・診療所・居宅に押し入り、車・コンピューター・発電機・薬・宝石・現金・携帯電話・多量の卸売商品や商店の商品を盗んだ。ギニア人も外国人も被害者となっている。これらの事件の目撃者の多くは、兵士たちが酩酊していたようだと報告。また、被害者の多くは、脅迫や暴行をうけてもいる。

「クーデターは、軍による犯罪行為の頻発をもたらしたようだ。兵士が不処罰を享受している状況は終わりにしなければならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの西アフリカ上級調査員コリン・ダフカは述べた。「クーデター指導者は、兵士たちをしっかりコントロールし、このような犯罪の犯人を速やかに捜査し、訴追するべきである。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、一般的な身分検査の際に兵士が多数の恐喝を働いている事、3月31日に15歳の少女を兵士がレイプした事をはじめ、兵士の小集団が司法手続の結果に影響を与えようと介入、もしくは弁護士を脅迫するなど、司法当局者への脅迫事件をいくつか起こしている事実も取りまとめた。

自らを「民主主義発展国民評議会(CNDD)」と呼ぶギニア軍将校グループは、24年間ギニア大統領だったランサナ・コンテが2008年12月22日に死亡した数時間後、権力を掌握。クーデター指導者であり、自ら大統領就任を宣言し、ギニア国憲法をすぐに停止したムサ・ダディ・カマラ(Mousa Dadis Kamara)大尉は、2009年中に選挙を行い、文民が率いる政府に政権を渡すと述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが取りまとめた兵士の犯罪行為が、どの程度軍上級幹部が命令したものか、もしくは処罰されたのかは不明である。窃盗事件の中には、襲撃者自身がCNDDの正式な任務であると表明しているものがあったが、被害者の誰一人として、捜査令状や逮捕状など、これらの行動を正当化する正式書類を提示されていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが取りまとめた犯罪行為と司法当局者に対する脅迫のほとんどは、赤いベレー帽を被った兵士たちが関与していた。クーデターに先立ち、ギニア治安機関内の自立大統領安全保障大隊(BASP:大統領近衛部隊)及び自立空挺大隊(BATA:特殊部隊精鋭集団)は、日常的に赤いベレー帽を支給されていた。しかし両部隊と他の小数の精鋭大隊は、クーデター以降、アルファ・ヤヤ・ディアロ軍事基地にあるCNDD本部に本拠地を置く1つの部隊に統合された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、他の部隊の兵士たちも赤いベレー帽を被っているのを目撃されている、との報告も受けている。

権力の座に就いて以来、CNDDは、麻薬密輸業者、偽造医薬品の製造販売に携わる犯罪者、汚職疑惑の中にある元政府高官などに対する取締りを率いていた。しかし皮肉にも、ヒューマン・ライツ・ウォッチが取りまとめた人権侵害の多くは、その取締りの中で行われていたようである。

例えば2009年1月、偽の抗生物質を製造・販売していた容疑で、中国人数人が逮捕されたが、その逮捕後、診療所やレストランなどいくつかの中国人経営の店舗、および少なくとも1軒のギニア人経営の薬局が、偽造医薬品を捜索していると主張する兵士による略奪にあっている。これらの活動に関与した軍の誰一人として捜査令状を提示した者はなく、また、偽造医薬品と疑われる物を正式に押収した者もいない。ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告した3つのケースでは、経営者は恣意的に逮捕され、軍用車両で連れ去られたうえ、所持金・携帯電話その他の貴重品を兵士に奪われた後、数キロ離れた所で車から降りるよう命じられていた。

麻薬密輸関与を疑われた人々の家や店舗の近くに住むギニア民間人に対し、兵士が略奪を行っているという多数のケースを、ヒューマン・ライツ・ウォッチは取りまとめた。被害者たちは、禁制の品が居宅や店舗にあると言いがかりをつけて家宅捜査をする兵士たちが略奪をした詳細について語った。家宅侵入と強盗に対する損害賠償を求めている依頼人6名の代理人であるギニア人弁護士は、兵士がドアを破り、家具を壊し、発電機・車7台・コンピューター・衣服・金銭を盗んだと語った。その弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように語った。

「麻薬密輸との闘いは高貴な仕事だが、車や金や宝石を奪うただの犯罪行為の言い訳にそれを使っている。これらと麻薬はどう関係するのだろうか?兵士たちは、私の依頼人から何の麻薬も発見していない。これらの事件には、被害届や告訴・告発があった訳ではなく、唯の一つも立証されていない。」

この取り締まりと一見関係のない不法侵入も他に多数ある。軍隊が運転する車両によって、商品を空にされた小さな家族経営の売店、建設資材を売る道端の店舗、私家(特に裕福なギニア人宅)、輸入品を貯蔵する倉庫に対する襲撃などである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた軍人は、犯人は、兵士を偽装した人物だと主張。しかしながら、この主張にはいくつかの疑問が残る。第1に、多くの目撃者がヒューマン・ライツ・ウォッチに、兵士が完全な軍服姿で白昼堂々と公共の場で犯罪行為を行い、中には軍曹の階級を示す線章を身に着けていた者もいた、と話した点。第2に、兵士に銃を突き付けられて自動車を奪われたビジネスマンが、後に自分の車を運転する軍服を着た者たちを見たというケースが2件あり、うち1件では、盗まれた自動車がコナクリにある基地から出入りするのが目撃されている。第3に、被害者のうち数名は、知っている軍人が犯人だと分かったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語っている。第4には、多くの犯罪を行っている兵士たちは、10名以上の集団で活動し、車両2台以上の小規模な集団で行動している点である。

ギニアの法律では、犯人の嫌疑を掛けられている者が民間人であろうと軍人であろうと、犯罪を捜査するのは憲兵と警察の管轄である。しかし被害者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、クーデター以来、軍が、犯罪捜査など警察の任務を軍の任務に移し続けていると一貫して証言している。2月16日のほぼ同時刻に略奪に遭った5つの店舗の経営者が警察に届け出たところ、警察から、クーデター以降「警察は捜査を軍から正式に認められていない」ので、軍に直接被害届を提出するよう言われた、と話した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが警察に対し、首都コナクリ郊外のある地区で続出しているとみられる兵士による犯行への対応方法について聞いたところ、警官は軍が警察のパトロールや調査を禁止している、と述べた。ある警官は、強盗の容疑で尋問のため警察署に拘置されていた民間人の容疑者が、警察から連れ出され、軍事基地での尋問のため自動車に乗せられた様子を説明した。もう1人の被害者は、警察に被害を申し立てたところ、もし何かして欲しいなら、軍に被害届けを提出するか、ラジオで被害に遭った事件の事を非難するかが必要と言われたと話した。またもう1人の被害者は、地元の警察署に被害届を提出し、その後、検察官の権限の下で犯罪捜査を任務とする司法警察長官事務所にも被害届を提出したところ、両者ともに軍に事件を持ち込むよう紹介されたそうである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた5名の被害者は、軍当局に被害届を提出し、兵士たちによる犯罪行為であるから正式に捜査してほしいと依頼。しかし、その事件についてはその後、何の捜査も行われていない。ある被害者は捜査を依頼するために軍の基地を5度も訪れたが、「私は基地に行って、何度も捜査を願い出たが、1度も答えがない。もうこの事件はどうにもならない」と嘆いた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが取りまとめた事件の中で、唯一軍の対応があったのは、15歳の少女のレイプ事件だった。家族と地域のリーダーたちの話によると、容疑者である兵士の上官が家族を訪れ、法廷外での和解を取り計らったそうである。当の兵士は軍の基地で数日間拘留された。軍が少女の治療費の支払いに合意した後、家族は警察に被害届を出さない決断を下した。

アフリカ人権憲章第14条のもと、ギニア政府には財産権を保護する義務がある。これは、軍を含む政府当局が、恣意的にかつ補償なしで財産を押収しないことを確保する義務などを定める。「軍の任務はギニア国民を守る事であり、国民の弱みにつけこむことではない。これらの犯罪行為に見られるような無法状態は許されない」とダフカは述べた。「軍は犯罪行為を止めさせなければならず、警察、憲兵、司法当局者が法の支配をまもる職務をまっとうできるようにすべきだ。」