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A bulldozer demolishes a shop entrance in Jahangirpuri, in New Delhi, India, April 20, 2022. © 2022 REUTERS/ Anushree Fadnavis

(ニューヨーク)― ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、インド当局が、法律違反をしたと見なしたムスリムに対し、超法規的かつ人権侵害である処罰を行うケースが増えていると述べた。ヒンドゥー・ナショナリズム政党のインド人民党(BJP)が政権を取る複数の州で、当局は法的許可なしにムスリムが所有する建造物を取り壊しており、最近ではヒンドゥー教の祭礼を妨害したとされるムスリム男性に公開の場で鞭打ちを行った。

「インドでは複数の州で、当局が一種の超法規的処罰としてムスリムに対する暴力を行っている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの南アジア局長ミナクシ・ガングリーは述べた。「法の支配をあからさまに無視する当局者は、ムスリムは差別され、攻撃されてもよいというメッセージを住民に送っている」と述べた。

2022年10月4日、グジャラート州ケーダー県で、ヒンドゥー教の祭礼で行われる儀礼的な舞踊「ガルバ」に投石したとして、警察は13人を逮捕した。拳銃のホルスターを装着した私服警官1人が、ムスリム男性数人を公然と鞭打ちするあいだ、複数の警官が男性たちを電柱に押さえつけている様子が撮影された。複数の政府系テレビニュースネットワークで放映され、賞賛さえされている動画では、数人の制服警官が鞭打ちを見て、この男性たちを棒で打つなか、集まった男女が歓声をあげ拍手喝采している。警察が調査を命じたのは、ソーシャルメディアで動画が批判されてからのことだった。

10月2日、マディヤ・プラデーシュ州マンドサウル県で、警察はガルバで投石した罪に問われたムスリム男性19人を殺人未遂と暴動で起訴し、うち7人を拘束した。その2日後、当局は法的な許可なしに、うち3人の自宅を違法建築だとして取り壊した。

4月、マディヤ・プラデーシュ州のカルゴーン県、グジャラート州のアーナンド県とサーバルカーンター県、デリーのジャハンギルプリーの当局は、コミュニティ間の衝突が起きた際、建物の取り壊しを行ったが、大半の所有者はムスリムだった。この衝突は、ヒンドゥー教の祭礼で、武装したヒンドゥー教徒の男性たちの宗教行列がムスリム地域を通過したときに発生した。ヒンドゥー教徒の男性たちはモスクの前でムスリムを差別するスローガンを叫んだが、警察は黙認した。

当局は、建造物が違法であるとして取り壊しを正当化しようとしたが、その手法や声明は、この取り壊しがムスリムへの集団的な処罰を意図したものであり、コミュニティ間の衝突で発生した暴力の責任をムスリムに負わせようとするものであることを示していた。「投石に関与した家屋は瓦礫と化すだろう」と、マディヤ・プラデーシュ州BJP政権の内相は発言した。

マディヤ・プラデーシュ州カルゴーン県では、当局が少なくとも家屋16棟と商店29軒を取り壊した。現地行政官である県収税官は「犯人を1人ずつ見つけ出すのは時間がかかるので、暴動が起こった地域をすべて調べ、暴徒を懲らしめるために違法建築物をすべて取り壊した」と述べた。

グジャラート州アーナンド県カンバート市では、当局が少なくとも商店10軒と倉庫17棟を取り壊したとの報道がある。県収税官は、宗教行列に投石した「不届き者」を罰するために「官有地の茂みと違法建築物を除去する作戦を遂行した」と述べた。また、グジャラート州サーバルカーンター県ヒマットナガル市では、当局が少なくとも家屋6棟を取り壊した。

デリーでは、当局がブルドーザー9台を使って、店舗や屋台、家屋など少なくとも25棟を取り壊した。取り壊しの前には、デリーのBJP代表がBJP政権下の市当局に書簡を送付し、コミュニティ間の衝突に関わったとされる人びとの「不法建築物」を特定し、「ブルドーザーで轢き潰す 」ことを求めていた。

6月には、BJPのある政治家が預言者ムハンマドについて言及したことをきっかけに、ムスリムによる全国的な抗議運動が広まった。ジャールカンド州警察はデモ参加者に過剰な力を行使し、2人を殺害したとされた。またウッタル・プラデーシュ州当局は、デモ中に突発的に生じた暴力の「主要な共謀者」と疑われたムスリムの家々を不法に取り壊した。

被害を受けた家族が何十年もそこに住み、多くの場合、その事実を証明するのに必要な書類を持っていたにもかかわらず、当局は、適切な事前の通知や意見聴取の機会をはじめとする法的認可やデュープロセス抜きで取り壊しを実行している。

6月、3人の国連特別報告者はインド政府に対し、「こうした立ち退きの一部は、コミュニティ間の暴力に参加した疑いがあることを理由として、ムスリムのマイノリティで低所得層のコミュニティにたいする集団的かつ恣意的な懲罰の一形態として実施されているが、伝えられるところによれば、当局は、暴力の扇動や暴力の発生を助長する脅迫行為といったこうした事案を調査していない」との懸念を表明した。

ムスリムのコミュニティの住宅や建造物の超法規的取り壊しは、住民である女性や子ども、高齢者、障がい者の脆弱性をさらに高めていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。

インドが批准する「市民的及び政治的権利に関する国際規約」は、いかなる理由による差別も禁止しており、すべての人が法の前に平等であること、法の平等な保護を確保することを各国に義務づけている。「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」は、適切な住宅に住むことを含めた、適切な生活水準に対する権利を保障する。両規約の遵守状況を監視する独立専門機関である国連の経済的、社会的及び文化的権利委員会は、一般意見第7号において、処罰としての家屋取り壊しは規約に反すると指摘している。

「インド当局は、超法規的処罰が国家政策になったかのような行動を強めつつある」と、前出のガングリー局長は指摘する。「インド政府がマイノリティを標的とした差別的な法律、政策、行動を撤回するために直ちに行動を起こさないなら、法の支配はブルドーザーと棒に取って代わられるだろう。」

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