La Win, 61, a farmer from the Ayeyarwady Region, sits on a portion of the 35 acres of land he said was taken from him in 2004 by a company. When asked about the effect of the seizure of the land he said, “I suffered great losses in every aspect of my life.”

© 2017 Patrick Brown for Human Rights Watch

(ヤンゴン) -  ミャンマー政府は過去の不法な土地の接収に対して速やかな救済措置をとるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。また、今後の接収から農家や小規模土地所有者の権利をまもるため、法律や規制を改正する必要がある。

ミャンマー政府および軍関係者は過去30年にわたり、広大な土地を奪いながら十分な補償をまったくせずに、農家の生計や基本的な公共サービスへのアクセスを侵害してきた。多くの農民が、救済措置不足への抗議、立ち退き拒否、接収された土地での作業中止拒否などで、刑事訴追に直面している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは、「ミャンマー全土に広がる土地の接収は、農村地域に何十年も深刻な影響を与えてきた」と指摘する。「アウンサンスーチー政府は、不法な土地の接収に即時対応し、不当な扱いを受けてきた当事者に対して補償しなければならない。そして、今後の人権侵害から人びとをまもるための法の改正が求められている。」

Myanmar: Decades of Land Confiscations

The government of Myanmar should promptly provide redress for historic land confiscations. The government should also enact laws and regulations that will safeguard the rights of landholders and guard against future illegal confiscations of land. 

本報告書「私たちの土地の見返りはゼロ:ミャンマーの農家を襲った土地の接収問題」(全33ページ)は、ミャンマー南部のシャン州、エーヤワディ地域、ヤンゴン地域の土地接収が農家に及ぼした壊滅的な影響を調査・検証したもの。農民たちは生活の糧や保健医療、子どもの教育機会の喪失、そしてしばしば逮捕というかたちで終わる救済措置の要求運動について詳述した。

本報告書の調査では、ミャンマー国内の農民39人ならびに複数の土地問題および市民社会専門家に話を聞いた。

土地の接収は、抑圧的な軍事政権下でミャンマーの農村を長く悩ませてきた。公式統計でも、政府が1990年代初めから数十万エーカー(訳注:1エーカーは約4,000平方メートル)を接収したことが確認できるが、実際には数百万規模だったと活動家たちは確信している。軍事政権による接収は、事前通知がほとんど、または全くされないまま行われ、補償も不十分だったことから、被害者に重大な悪影響を与えてきた。

エーヤワディ地域のThein Win氏(61歳)はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、政府が12エーカーの農地を接収した際、事前の警告は一切なかったと証言した。「何も聞かされないまま、ただ土地を奪われました。」接収の不服を申立てれば逮捕すると脅され、補償もなく、はてはその土地に池を掘るよう政府から命じられたという。「私たちの元には何も残りませんでした。文字通り何の見返りもなかったのです。」

突然の接収が生計に及ぼした影響について、多くの農民が詳しく語った。前出のThein Win氏は、「収入を得るための事業や仕事がなかったので、一家は飢餓状態でした」と語る。接収後、家族は1日2回の食事さえ定期的にとれなくなった。

土地接収の悪影響は農家の暮らしのその他の側面にも及んでいった。保健医療へのアクセスや教育機会が制限され、子どもたちの多くが学ぶ代わりに働かなければならなくなった。土地を失ったミャンマー人の多くは、1日にわずか数千チャット(約2米ドル)を稼ぐ肉体労働に従事するよりほかなかった。

2011年の軍事政権から準文民政権への移行後、当局は土地没収問題に取り組んだ。テイン・セイン前大統領は、農地法と空地・休閑地・未開墾地法の可決、国土利用政策の採択、接収地をめぐる不服申立てを調査する委員会の設置など、複数の改革を実施。しかし、2016年の国民民主同盟率いる政府誕生まで、何千もの接収地をめぐる不服申立てが未処理のままだった。

実際、国民民主同盟のマニフェストの中心には、軍事支配下で行われた大規模な土地接収の有害な影響の終焉が謳われていた。新政府は別の調査機関を新たに設置し、重要な法改正に着手するなど、重要な一歩を踏み出してはいる。が、成功は依然として限定的で、多くの農家がまだ何ら恩恵を受けていない状態だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた農民のほとんどは、申立てをして何年も経っているが、何の回答も得ていないと証言する。その原因として、多くが汚職をめぐる改革の失敗と政府の無能さを挙げた。ミャンマー全土で農地の返還や補償を待ちきれなくなった何百人もの農民が、政府に対する抗議活動の組織・参加、あるいは元々の所有地を耕作したことによる不法侵入で訴追されてきた。こうして刑事告発されれば、しばしば長びく裁判に耐えなければならず、そのことで新たに経済的な負担を背負うことになる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはミャンマー政府に対し、土地権利活動家を恣意的に逮捕するのをやめ、平和的に土地接収に抗議したがために裁判を待っている人びとを全員直ちに釈放するよう強く求めた。政府はまた、不法な土地接収の訴えを公平に調査して結果を公開し、土地権利侵害の責任者を適切に訴追すべきであり、かつ土地を不法に奪われた農民ほかに対し、迅速かつ十分な補償をすべきだ。

ロバートソン局長代理は、「ドナー国はミャンマーで土地改革が宣言されたことに満足すべきではない」と述べる。「ミャンマー政府は、過去の不法接収の被害者に救済措置を施し、今後は新たな法律が農家の権利をまもるよう保障しなければならない。」