(カンパラ)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、ウガンダ全域にある16の刑務所の環境を調査した報告書を発表。同国刑務所の囚人は、苛酷な強制労働、頻繁な暴行、悲惨な過密状態、疾病などに晒されている、と述べた。しかも、ウガンダの刑務所に収監されている者の半数以上は未決拘禁であり、有罪判決を受けずに何年も拘禁されている可能性がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。囚人労働による利益は刑務官個人の利得となる場合が多い一方、囚人は不適切な食事・水・衛生状態などから生じる疾病に苦しんでいる。
報告書「死んでも終わらない強制労働:ウガンダ刑務所の保健・重労働・人権侵害」(全80ページ)は、ウガンダの刑務所で日常的に行われている身体的虐待と、囚人の権利を保護する刑事司法制度の問題点を取りまとめた報告書。地方の刑務所に収監されている囚人(高齢者・障害者・妊娠女性を含む)は、重労働を拒否すると多くの場合鞭で打たれ、場合によっては、石を投げつけられ、木に手錠で繋がれ、火傷させられることさえある。HIVや結核などの患者は、医療を拒否され、治療プログラムとはかけ離れた農場刑務所に送られる、と報告書は明らかにしている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの医療・人権調査員で報告書の著者の一人であるキャサリン・トドリスは「ウガンダの囚人の多くは、有罪判決を受けた訳でもないのに、残虐な暴行を受け、奴隷に似た環境で働く事を強制されている」と語る。「HIVや結核に罹っている囚人のごく一部しか適切な治療を受けられず、命を危険に晒しているととともに、薬物耐性菌の進行と拡大の危険を増大させている。」
ウガンダには、比較的大きい地域刑務所と比較的小さい地方刑務所があるが、これらの刑務所に毎年新たに入ったり出たりしている人の数は5万人。近年一部の地域刑務所の環境は改善したものの、かつて地方行政府の管轄下にあった多くの地方刑務所の環境や、そこでの取り扱われ方は残虐、非人道的で、品位を傷つけ、拷問に該当する性格のものとなっている。囚人の健康への配慮不足は、公衆衛生に向けたより幅広い活動に悪影響を及ぼしている。例えば、薬剤耐性を持ったHIVや結核のウィルスが刑務所内で進行し、囚人や面会者、職員などがそれぞれの地域社会に戻る時に広める可能性がある。
ウガンダ政府は刑務所制度全体を通じて、暴行と個人的利益のための強制的刑務所労働を止めるよう命令を出すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。囚人を虐待した看守はその責任を問われなければならない。政府は援助提供国・機関と協力して、適切な生活環境と医療を保証するため十分な資金を刑務所に提供するべきである。
ウガンダの囚人の56%(17,000人以上)は、犯罪容疑で有罪判決を受けた者ではなく、判決を待つ間、時には何年も拘禁されている。保釈が普及しておらず、弁護人も十分でない事が、このような遅延をもたらしている。
このような司法制度の欠陥の結果が一部起因して、ウガンダの刑務所には過密状態が多くみられる。ヒューマン・ライツ・ウォッチが視察した刑務所の1つは、計画定員の32倍を収容していた。
囚人は横寝或いは順番に眠る。食事は十分でなく、栄養不足は囚人を感染しやすくするとともに、失明をもたらす危険もある。食べ物を得るため、最も弱い立場の囚人は他の囚人に身を売っている。
多くの場合清潔な水は入手できず、煮沸した水が囚人たちの間で取引されている刑務所も幾つかある。シラミと疥癬が囚人の不潔な毛布に潜り込んでいる。このような環境では、疾病が急速に拡大する。HIVと結核の有病率は一般住民の2倍と考えられているが、結核検査を提供しているのはごく少数の刑務所だけである。両方の疾病の治療を受けられる刑務所医療施設は、同国全体でたった1つしかない。「助けて、死んでしまう」とムイナイナ農場刑務所(Muinaina Farm Prison)の囚人10人が、ヒューマン・ライツ・ウォッチへのメモに書いた。
身体的虐待は、既に病弱な囚人に悪影響を与えている。刑務所看守は囚人に暴行を加えるだけではなく、規律を励行{れいこう}させるという名目で、囚人に他の囚人を暴行するよう指導している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、床が踝までの水にひたされている小さくて暗い監房に、囚人が衣服を脱がされて入れられ、最低限の食事しか与えられていないという多くの事例を明らかにしている。「彼らにかなり酷く殴られて、血を流しながら泣いたよ」と、ある囚人が刑務所看守と他の囚人から受けた暴行について話した。
医療は不平等であり、地方行政府が公式に運営する全国170以上刑務所の多くでは、事実上存在していない。囚人に医療が必要かどうかの評価は、医療資格を持たない看守や刑務所当局者に普段から任されている。多くの場合彼らは、地域社会にある医療施設で提供可能な医療を受ける囚人の権利を否定する。
「犯罪を行った者は誰でも責任を問われなければならない」と前出のトドリーは語る。「しかし誰も栄養失調・疾病・暴行の刑に処されることがあってはならない。」
過去数年にわたり、ウガンダの刑務所向けの国際的な医療援助資金は増大している。しかしそれはまだ限られた額である。不十分な刑務所予算を補完するため、刑務官の一部は民間農場での囚人の強制労働に頼っている。また、囚人(有罪判決を受けた者と同様に未決拘禁者も)を働きに出し、その稼ぎを私用のために取り上げている者もいる。数千もの囚人が過酷な環境で働く事を強いられ、動きが遅い或いは働くのを拒否したという理由で度々暴行され虐待を受けている。囚人の生産力が刑務所当局の利益に直接転化しており、刑務所労働で生み出された資金は多くの場合使途不明となっている。
刑務官が囚人に農場での仕事を休むのを許さないため、重労働を行っている囚人は通常、医療を受けられない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは言う。刑務所農場での労働を強化するため、病気になった囚人は医療サービスのある施設から、ない施設に移送されてしまう。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはウガンダ政府に、個人的利益のための刑務所強制労働を止めさせ、囚人の人権を侵害する刑務官を処罰するよう直接命令を出す事、結核やHIVに罹っている全ての囚人を治療の受けられる施設に直ちに委託するためのガイドラインを確立する事を求めた。ウガンダ政府は国際機関や援助提供国・機関と協力して、外部の医療施設へのアクセスを改善し、各刑務所に最低1人の医療従事者を配置し、全体の環境を改善し、保釈・裁判・弁護士へのアクセスを広め、もって、未決拘禁の期間を短縮化しなければならない。
「ウガンダ刑務所サービス(Uganda Prisons Service)局は、過去10年間で若干の改善を成し遂げて来た」とトドリスは語る。「しかし、酷い環境、強制労働、残虐な暴行は囚人の健康を危うくするものであり、終わらせなければならない。」