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スーダン:人権侵害の蔓延 来年予定の南部独立の住民投票の不正の予兆

2010年4月の国政選挙で治安部隊が犯した人権侵害の責任を問うべき

(ナイロビ)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日発表の報告書で、「スーダン政府関係当局と南部政府当局は、2010年4月の国政選挙における人権侵害を調査し、責任者を裁くべきである」と述べた。来年初めに予定されているスーダン南部独立の住民投票に先立ち、国家ぐるみで人権侵害に立ち向かうことが極めて重要である。

報告書「実現していないデモクラシー:2010年4月の国政選挙における人権侵害」(全32ページ)は、選挙期間中やその前後に南北双方の関係当局により行われた、多くの人権侵害を調査し記録している。具体的には、特にスーダン北部で著しい言論および集会の自由に対する制限が行なわれたほか、スーダン全土で治安部隊による野党支持者や選挙監視員に対する脅迫・暴力行為、恣意的逮捕などが横行した。なお、本報告書は2009年11月から2010年4月に、首都ハルツームとスーダン南部で行った調査に基づいて作成された。


ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ロナ・パラガルは、「先の国政選挙は、2005年の包括和平協定における重要なマイルストーンの一つであり、スーダンの未来に向けた役割を担っていた」と述べる。続けて、「しかし、選挙関連の人権侵害を隠ぺいしているようでは、1月に予定されている住民投票の行く末が思いやられる。」

2005年、22年にわたる南北の内戦終結時に結ばれた包括的和平協定。そのなかで、国政選挙と南部の独立に関する住民投票の実施が定められた。スーダン南部の住民(ハルツームや北部諸州に住む南部出身者150万人以上も含まれる)は、2011年1月、北部から独立するか否かの決断を下す予定。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、和平協定に従って国家治安組織の改革も含んだ、真の改革に着手するよう、スーダン(国民統一)政府に求めた。現行の国家治安部隊法は捜査、押収、逮捕において多大な権限を関係当局に与えている。また、国際法に違反する「裁判所の審理なしの拘禁」(最長で4カ月半)も認めている。


4月の国政選挙に先立つ数カ月間にわたり、与党・国民会議党(NCP)が北部諸州で、野党メンバーの平和的な集まりを妨害し、集会・言論の自由を侵害していたことがこれまでに明らかになっている。選挙中には、こうしたあからさまな弾圧は減少したものの、嫌がらせや脅迫、野党メンバーや選挙監視員の逮捕といった事例がいくつもみられた。

また、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、スーダン南部における脅迫行為、恣意的逮捕、拘束の横行も明らかにした。選挙の過程で、選挙監視員や投票者のみならず、南部を統治するスーダン人民解放運動(SPLM)の対抗勢力に対する暴力事件が、複数の南部の州で発生している事実が明るみに出た。

これらの権利侵害に加え、深刻な選挙法違反もあった。具体的には、複数投票、票の水増しやその他の不正行為などで、選挙の正当性を蝕ばむ結果となった。

4月26日、選挙管理委員会は開票作業を終え、南北でそれぞれ現与党が勝利したと宣言。国民統一政府のオマル・アル・バシール大統領が再選を果たした。なお、国際刑事裁判所は、同大統領をダルフール地方における戦争犯罪と人道に対する罪で逮捕状を出している。

国政選挙後の数週間で、スーダン全土の人権状況が、悪化の途にあることが、調査によって新たにわかった。北部では弾圧が復活し、南部では選挙に関連した暴力事件が起こり、ダルフール地方では内戦が続いている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはスーダン(国民統一)政府に、国連安全保障理事会決議1593に則して、国際刑事裁判所に協力するよう求めた。

前出のパラガルは、「選挙はスーダンの民主化促進が目的だったはずだが、逆効果になってしまった」と述べる。「今回の選挙で、特に北部において勝利した与党が実質的に勢いづき、対抗勢力、活動家、ジャーナリストの更なる弾圧につながった。」

ハルツームで選挙後に一斉捜査が行われた。5月15日に野党指導者のハッサン・アル=ツラビ師やジャーナリストらが逮捕・拘束され、ダルフールでも学生らが逮捕された。また、出版前検閲の再開により、新聞3紙が出版差し止め処分を受けている。


6月上旬、スーダン人医師が賃金と労働条件の改善を求めてストライキを決行。平和的なデモであったにもかかわらず、治安部隊がこれを激しく弾圧した。ストライキが終了する6月24日まで、6人の医師が立件・起訴なしに拘禁され、うち2人は国家保安当局関係者から暴行を受けていた。

スーダン南部では、選挙結果をめぐって与党と無所属候補の間で争いが激化し、軍による武力衝突が起きている。例えばジョングレイ州では選挙以降、州知事選で落選したジョージ・アーサー指令官に忠実な軍人たちが、南部軍と衝突を繰り返している。選挙中の不正投票や脅迫行為により、南部は怒りと失望のるつぼと化した。

多くの地域が選挙そのものをボイコットしたダルフール地方では、国民統一政府が航空爆撃や地上部隊を用いて、反政府勢力や市民への武力攻撃を続けている。これにより、5月には死者数が過去2年間において最大となった。

また本報告書では、選挙期間中に蔓延した人権侵害に対する国際社会の反応についても考察している。2005年協定(とりわけ南部の住民投票)の実現を慮る「政治的配慮」のあまり、国際社会の大半がスーダンの人権侵害状況に口を閉ざしている。

「各国政府などの国際社会は、スーダン政府に人権侵害の不処罰停止を促す重要な役割を担っている」とパラガルは述べる。「こうした(国際社会による)および腰の沈黙は、平和的で有意義な住民投票の実現や、和平協定によって描かれた民主主義への移行を危ういものにしてしまうだろう。」

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