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(ラバト)-モロッコでは、市民団体の登録を保留とするなどの方法で、結社の自由を阻害する官僚主義的操作が広がっている。登録保留はモロッコ法にも違反するものであり、こうした市民社会への抑圧は止めるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。

報告書「団体設立の自由:名ばかり進歩的なモロッコ政府」(45ページ)は、新規団体が登録を行う際、内務省の地方代表が、目的や会員が政府にとり好ましくない団体の登録書類の受理を頻繁に拒否している現状をとりまとめている。

モロッコ法によると、団体を設立する際に、事前の許可は必要なく、地元の役所に登録さえすればいいこととされている。そして、当局には、法律により登録申請書類を受理する義務が課されている。

「モロッコは、多くの人権問題について進歩的な法律を制定している。結社の自由に関しても進歩的な法律があるのだが、一方で、行政当局は法律に従っていない」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。

本報告書には、モロッコ政府が団体登録の受領証の発行を保留し、団体の活動を妨害したケースを10以上報告。こうした団体登録の妨害により活動に支障がでているグループは、汚職の撲滅を目指すグループや、大卒で職の見つからない若者やアマズィーグ(Amazigh:ベルベル人)住民、サハラウィ(Sahrawis)、そしてサハラ以南からの移民などの権利向上のために活動している団体など。モロッコ全域やモロッコが支配している西サハラを拠点にしている団体だ。

また当局は、多くの慈善団体や教育団体の活動も妨害している。当該団体の幹部に、モロッコで最も活動的なイスラム主義運動の一つであるJustice and Spiritualityのメンバーが含まれているのが理由と見られている。

登録がしっかり行われていないとみなされると、団体は、会費を徴収したり、助成金を受けてはならないとされている。また、デモを組織したり、公共のホールを借りることや、銀行口座を開設する場合にも障害がある。団体の会員が「未承認団体」のメンバーであることを理由に訴追された幾つかの実例もある。そのようなことは、モロッコでは犯罪とされていないにも拘わらずである。登録証明をもらえない団体の多くはそれでも活動を続けているが、法的に不安定な位置におかれ、活動を制限され、すでに会員となっている人やこれからメンバーとなる可能性のある人びとを団体から遠ざける結果となってしまっている。

「地方当局が全国で登録受領証の発行をたくさん保留している現状は、政府が国レベルでもこの慣行を黙認していることを示している」とウィットソンは述べた。「モロッコは国レベルで政治的リーダーシップを発揮し、地方政府が法律に従うよう求める必要がある。」

理論上、地方当局が団体の提出書類を処理しない場合の法的救済措置は存在する。たとえば、書類を書留郵便で送付するとか、登録に誠心誠意努力しているという執行人の証明の取得、若しくは行政裁判所への提訴などの措置である。しかし、こうした救済措置に訴えても、満足な結果がもたらされていない実態もヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。

またヒューマン・ライツ・ウォッチは、モロッコの法律が、新しい団体の設立に異議を述べたり裁判により既存の団体の解散を求める際に過大な権限を政府に与えていることを批判。法律は、如何なる団体も「道徳に反したり、イスラム教、君主制、若しくは国家の領土保全に害を及ぼしたり、差別を促進すること」を活動の目的としてはならないとしている。

これらの制限は、国際的な人権条約が結社及び表現の自由に関して認めている制限を大幅に超えており、モロッコ当局が、国内法を根拠として好ましくない政治方針を持つと判断した団体を解散させるのを可能にしている。

「実際には、モロッコ当局は、団体設立を禁止するというあからさまな方法を用いることはほとんどない」とウィットソンは述べた。「実際には、当局は、官僚的な策略で団体を不安定な地位に追い込み、市民社会を弱体化させて法の支配を損なわせるなど、特定の団体に対し間接的な弾圧を行っている。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書はモロッコ政府に以下のことを強く求めた。

  • 地方政府関係者に対し、モロッコ法が定める団体の登録に関する義務の履行を義務付け、怠った場合には責任を追及すること。
  • 結社に関する法律を改正し、結社を禁止する条件を狭めること。「イスラム教、君主制、若しくは国家の領土保全に害を及ぼしたり、差別を促進すること」は過度に広義であり、政治的動機に基づいた弾圧を招いている。
  • 結社に関する法律を改正し、当局が団体を認定するのに異議を申し立てる場合には、その理由を明らかにするよう義務付けること。
  • 登録の際に恣意的な行政妨害の被害を受けた団体を勝訴させた行政裁判所判決を履行すること。
  • 「未承認団体のメンバー」であることは犯罪とはされていないのであるから、これを理由にした訴追を取り下げること。
  • 政府当局が団体設立申請書類の受理を拒否した団体、及び国と地方当局が受領証の交付を拒否した団体、若しくは団体設立に対して政府が異議を申し立てている団体の名称リストを、その理由と共に定期的に公表すること。

「モロッコ政府は、正式に認証された非政府組織が多数存在するのを誇りにしている」とウィットソンは述べた。「しかし見識ある政府かどうかという真の評価は、議論をよぶようなイシューを取り扱っている団体を如何に取り扱うかにある。」

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