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キラーロボット:新たなフォーラムで条約交渉を

必要な法の遅れは、民間人を脅威にさらし、危険な状態を作る

© 2022 Brian Stauffer for Human Rights Watch

(ジュネーブ)― 各国政府は、自律型兵器システム(いわゆる「キラーロボット」)に関する条約の議論の停滞を打破するために、議論を新たな国際フォーラムに移すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。自律型兵器システムは、人間の有意な制御なしに作動し、生死を分ける決定を機械に委ねるものである。

今回の報告書『行動のためのアジェンダ:キラーロボット条約交渉に向けた代替プロセス』(全40ページ)は、ヒューマン・ライツ・ウォッチとハーバード・ロースクール国際人権クリニックが共同で発行する。各国に対し、クラスター爆弾禁止条約などの過去の人道的軍縮モデルにならい、条約作成プロセスの開始を提案するものだ。

「自律兵器システムを扱う新しい国際条約には、より適切な交渉の場が必要だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの武器担当シニアリサーチャー兼ハーバード人権クリニックの武力紛争・文民保護局長代理で、報告書のファーストオーサーを務めたボニー・ドチャティは指摘する。「多くの先例があるので、それを踏まえれば、キラーロボットに関する法的ルールを作るための代替プロセスを実施することが可能かつ望ましいとわかる。技術発展のスピードに追いついていくためにも、各国は今すぐ行動すべきだ。」

70以上の国と非政府組織(NGO)および赤十字国際委員会は、禁止と制限を定めた新条約が緊急に必要であり、かつ、実現可能という立場だ。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、自分自身の判断だけで人間を標的にし、攻撃するような兵器システムについて「国際的な合意に基づく制限」を定めることが必要だと訴え、そうした兵器は「道徳的に嫌悪されるとともに、政治的には受け入れられない」ものだと述べた。

致死型自律兵器システム(LAWS)に関する懸念については、2014年以来、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで協議が進められてきた。2022年11月16日~18日には、当該条約の2022年締約国会議がジュネーブ国連本部で開催されるが、2023年のうちに、あるいは近い将来にCCWを通じた新たな法的拘束力のある文書の交渉で各国が合意する徴候はない。

CCWの枠組みでの交渉が進展しない最大の理由は、条約加盟国がコンセンサス方式を採用していることだ。ある一国が拒否すれば、たとえ他のすべての国が同意しても、提案は採用されない。一握りの軍事大国、特に2021年はインドやロシアが、交渉段階に移ろうという提案を繰り返し阻止してきた。露印両国はまた2022年、協議の場にNGOを参加させまいとする動きを見せた。

インドとロシアのほかにも、オーストラリア、中国、イラン、イスラエル、韓国、トルコ、英国、米国が人工知能と関連技術の軍事への応用に多額の投資を行い、陸海空での自律型兵器システムの開発を進めている。

CCWというフォーラムが抱える欠点を踏まえ、新条約交渉に向けた代替プロセスの設置を検討すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチとハーバード人権クリニックは述べた。たとえば、対人地雷やクラスター弾の禁止条約に用いられたような、国連の外での独立したプロセスがありえる。また、国連総会も、もうひとつの場となりえよう。例えば核兵器禁止条約の交渉は、国連総会で開始された。

こうした代替プロセスの4つの特徴が、強力な条約を迅速に成立させるために役立つ。すなわち、共通の目的、投票に基づく意思決定、明確かつ野心的な期限、そして包括性へのコミットメントである。

各国からはすでに、有形力の行使から人間の制御を排除することへの懸念に対処するために求められる基本的エレメントについて、幅広い支持が表明されている。新しい国際条約では、人間を標的とするシステムだけでなく、本質的に人間の有意な制御が欠如している自律型兵器システムも禁止されるべきだ。また、自律性を備えたその他の兵器システムについても、人間の有意な制御を確保するための積極的義務づけを行うことが求められる。「人間の有意な制御」とは、技術が理解可能かつ予測可能で、時間と空間の制限を受けているものとすることを義務づける、という意味として広く理解されている。

10月には、70カ国が国連総会第一委員会(軍縮と国際安全保障)での共同声明で、自律型兵器システムに関する「国際的な合意に基づく規則と制限」への支持を表明している。

また、産業界も規制を支持するとの意思表示が増えている。10月には、ボストンダイナミクス社などロボット企業計6社が、自社の高度移動ロボットを武器化しないとの公約を発表し、同業他社にも「そうしたロボットに取り付ける武器の組立、許可、支援、装着をしないとする同様の公約を行うこと」を呼びかけている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、兵器システムの自律性に関する新しい国際法を提唱する67カ国の190以上のNGOの連合体「ストップ・キラー・ロボット連合」の共同設立者である。

「キラーロボットの問題が現在のCCWというフォーラムを出ない期間が長引くほど、自律型兵器システムの開発側が新しい技術を洗練させて商業的実用化を達成するまでの時間が、長くなってしまう」と、前出のドチャティ・シニアリサーチャーは述べた。 「新しい条約ができれば、兵器競争に歯止めをかけるとともに、人間の制御を外した兵器をスティグマ(烙印)化することができ、そうした武器の拡散防止にも役立つだろう。」

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