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イスラエル政府の人権侵害政策、アパルトヘイトと迫害の罪に該当

「人道に対する罪」として、パレスチナ人抑圧の終焉に向けて行動をおこすべき

(エルサレム)イスラエル政府は、アパルトヘイトと迫害に該当する人道に対する罪を犯していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。この認定は、ユダヤ系イスラエル人によるパレスチナ人支配の維持というイスラエル政府の包括的政策及び東エルサレムを含む被占領地に住むパレスチナ人への重大な人権侵害行為に基づいて行われた。

今回の報告書『閾を越えた:イスラエル政府当局とアパルトヘイトおよび迫害という犯罪行為』(全204頁)は、イスラエル政府によるパレスチナ人への対応・処遇を検証する内容だ。イスラエル政府という一つの権力機構が、ほぼ同規模の2つの集団が住む、ヨルダン川と地中海に挟まれた地域を主に支配し、ユダヤ系イスラエル人を体系的に優遇する一方でパレスチナ人を抑圧する現状を記述した。抑圧が最も深刻なのは被占領地域だ。

「イスラエル政府によるパレスチナ人支配の方向性を変えなければいますぐにでもアパルトヘイトに該当するようになると、有力な人びとや組織が長年にわたり警告してきた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は述べた。「今回の詳細な調査により、イスラエル政府当局がすでにその閾を越え、アパルトヘイトと迫害という人道に対する罪を犯していることが明らかになった。」

アパルトヘイトと迫害が行われているという結論は、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区からなる被占領地域の法的地位や、占領の事実関係を変えるものではない。

アパルトヘイトとは、もともと南アフリカ共和国に関して作られた用語だが、現在では普遍的に用いられる法律用語となっている。特筆するほど厳しい制度的差別や抑圧、すなわちアパルトヘイトの禁止は国際法の核となる原則の一つだ。1973年の「アパルトヘイト犯罪の抑圧及び処罰に関する国際条約」と1998年の「国際刑事裁判所に関するローマ規程」では、アパルトヘイトを3つの主要な要素からなる「人道に対する罪」と定義している。

  1. 1つの人種的集団が別の人種的集団への支配を維持する意図
  2. 支配的な集団が周辺化された集団への組織的抑圧がなされている状況
  3. 非人道的な行為

「人種的集団」とは、今日では、遺伝的特徴に基づく処遇だけでなく、1969年の「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」で定義されているように、世系又は民族的若しくは種族的出自に基づく処遇も指すと理解されている(第1条1参照)。ヒューマン・ライツ・ウォッチは人種についてこの広い定義を採用している。

人道に対する罪としての「迫害」は、国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程および国際慣習法で定義されるように、差別する意図をもって人種的、民族的、その他の集団の基本的権利を著しく剥奪することである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、こうした犯罪の要素が、イスラエル政府の断固たる方針として、被占領地域で現れていることを明らかにした。その方針とは、イスラエル全土と被占領地域全域で、ユダヤ系イスラエル人のパレスチナ人支配を維持することだ。この方針が、被占領地ではそこに住むパレスチナ人への組織的抑圧や非人道的行為と結びついている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、長年にわたる人権状況の調査記録やケーススタディ、政府の計画文書や政府高官の発言などの資料をもとに、被占領地やイスラエルに住むパレスチナ人への政策や実際の対応・処遇を、同じ地域に住むユダヤ系イスラエル人への対応・処遇と比較した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2020年7月にイスラエル政府に書簡を送り、これらの問題についての見解を求めたが、いまだ回答がない。

イスラエルと被占領地域の全域で、イスラエル政府当局は、ユダヤ人コミュニティに土地を最大限確保する一方で、パレスチナ人の大半を人口密集地に集めようとしてきた。政府当局は、パレスチナ人による人口的「脅威」(とイスラエル政府は公言している)の軽減策をとっている。例えばエルサレムでは、市内西部と被占領地域である東部エルサレムの双方を対象とする政府の都市計画として、「市内でユダヤ人が強固な多数派である状況を維持する」という目標が設定されており、維持すべき人口比率まで明記されている。

支配を維持するため、イスラエル政府当局はパレスチナ人への体系的に差別している。イスラエル政府のパレスチナ人に対する制度的差別には、例えば、数百もの小規模ユダヤ人町に対し事実上パレスチナ人排除を認める法律や、ユダヤ系イスラエル人の子どもを対象とした学校に比べ、パレスチナ人の学校にはほんのわずかな資源しか割り当てない予算などがある。被占領地域では、パレスチナ人に過酷な軍事的支配を敷く一方で、同じ地域で隔離されて居住するユダヤ系イスラエル人には、イスラエル民法(権利を十分認める内容)の下で完全な権利を保障するなど、その抑圧の厳しさはアパルトヘイトに該当する体系的な抑圧に相当するものである。

イスラエル政府当局は、パレスチナ人にさまざまな人権侵害行為を行ってきたが、被占領地域でのそうした行為の多くは、基本的権利への重大な侵害であり、アパルトヘイトと認定すべき非人道的な行為といえる。例えば、ガザ封鎖と許可制による徹底的な移動制限、ヨルダン川西岸地区の3分の1以上の土地の収用、パレスチナ人数千人が故郷を捨てることを強いられたヨルダン川西岸地区の過酷な環境、パレスチナ人数十万人とその親族への居住権の拒否、何百万人ものパレスチナ人に対する基本的な市民的権利の停止などである。

パレスチナ人の建築許可申請に対するほぼ全面的な不許可、許可がないことを口実にした多くの住宅の破壊などの犯罪行為の中核をなす人権侵害行為の多くには、治安上の正当性がない。また、イスラエル政府が被占領地域で管理する住民登録を実質的に凍結し、被占領地域のパレスチナ人の家族再統合を妨害したり、ガザ地区住民のヨルダン川西岸地区での居住を禁止したりするなどの措置は、治安を口実にして人口管理上の目標を達成しようとする措置だ。治安が動機の一部である場合でも、過剰な武力行使や拷問と同様、アパルトヘイトや迫害も正当化されえない。

「治安上の正当な理由もないのに、ユダヤ人ではなくパレスチナ人であるという理由だけで、何百万人ものパレスチナ人の基本的権利を否定することは、単に人権侵害を伴う占領政策というだけの話ではない」と前出のロス代表は指摘する。「一連の政策は、ユダヤ系イスラエル人にはどこに住んでいても同じ権利と特権を与える一方で、パレスチナ人にはどこに住んでいても程度の差こそあれ差別しており、ある民族を犠牲にして別の民族を優遇するという方針のあらわれだ。」

イスラエル政府は近年、ユダヤ系イスラエル人による支配を維持する意図を明確にしてきている。たとえば、イスラエルを「ユダヤ人の国民国家」と定める憲法上の地位有する法律の2018年可決、ヨルダン川西岸地区のイスラエル人入植者をさらに優遇しつつ、この地区に住むパレスチナ人には適用されない法律の増加、入植地拡大及び入植地とイスラエルを結ぶ関連インフラ拡大が近年大規模化していることなどである。イスラエルの将来の指導者がパレスチナ人に対する差別的制度の撤廃をパレスチナ人と合意する可能性あるとはいえ、今の現実は否定されない。

イスラエル政府当局は、移動の自由、土地や資源の配分、水電気などの基礎的なサービスの利用、建築許可などにおいて、パレスチナ人を犠牲にしてユダヤ系イスラエル人を優遇するあらゆる形態の抑圧や差別を撤廃すべきである。

ICC検察官は、アパルトヘイトと迫害という人道に対する罪の容疑者を捜査・起訴すべきだ。他の国も、普遍的管轄権の原則に基づき、自国の法律に従って捜査を行い、こうした犯罪の責任者に渡航禁止や資産凍結などの対象限定制裁を科すべきである。

人道に対する罪を示す証拠を受けて、国際社会はイスラエルとパレスチナへの関与のあり方を再検討すべきである。そして、停滞中の「和平プロセス」だけでなく、人権とアカウンタビリティを軸とするアプローチを採用すべきだ。各国政府は、イスラエルとパレスチナでの体系的な差別と抑圧を調査する国連調査委員会(COI)を設置し、世界中で迫害とアパルトヘイトを終わらせるための国際的行動を呼びかける責務を有する迫害とアパルトヘイト犯罪に関する国連グローバル特使を任命すべきである。

各国政府は、イスラエル政府への武器売却および軍事・安全保障関連の支援に際しては、イスラエル当局がこうした犯罪をやめるための具体的かつ検証可能な措置をとることを条件とすべきだ。各国政府は、イスラエル政府との合意、協力スキーム、イスラエルとのあらゆる形態の貿易や取引を精査し、犯罪に直接関与する者をスクリーニングし、人権への負の影響を軽減し、それができない場合には、こうした重大犯罪を助長していることが判明した活動や資金を終結させるべきである。

「世界の大半の国々は、イスラエルの半世紀におよぶ占領を、数十年来の『和平プロセス』が近く解決する一過的な状況と見なしている。しかし、現地でのパレスチナ人への抑圧は、アパルトヘイト及び迫害の犯罪の定義するレベルに達する永続的なものになっている」と、前出のロス代表は述べた。「イスラエルとパレスチナの平和を目指す人びとは、一国家または二国家解決案であれ、連邦制であれ、ひとまずこの現実をありのままに直視・認識し、こうした現状を止めるために必要な種類の人権上の手段を講じるべきである」と述べた。

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