一国の指導者がテレビに出演し、自国民数千人の殺害や四肢損傷の原因となる致死的兵器について意見を求められ、それに大胆にもユーモアで応えたとすれば、そこには重大な意味があります。

英BBCで2月9日に放映されたインタビューで、自信満々に登場したシリアのバッシャール・アル アサド大統領は、政府軍のドラム缶(たる)爆弾使用について質問を受けました。ドラム缶爆弾とは、高性能爆薬と金属片を詰め込んだドラム缶のことで、対空砲火が届かない高高度のヘリコプターから投下される無誘導型の安価な致死兵器です。

「子どもじみた話です」と、アサド大統領は笑みが浮かべて言いました。BBC中東局長ジェレミー・ボーエンがこの兵器の使用をただしたのに答えてのことです。

ボーエン氏は「シリア軍のドラム缶爆弾使用そのものは否定しないのですね」と尋ねました。

「軍のことはわかっています。銃弾、ミサイル、爆弾を使っています。けれどもドラム缶だとか、あとは料理鍋ですか、そんなものを使ったという話は聞いていません」と、アサド大統領は答えました。ユーモアを利かせたつもりだったようです。

ここ数年間、ドラム缶爆弾が反政府勢力支配地域に降り注いでいます。パン屋の行列、民家、学校、病院に投下され、老若男女を問わず多数が死傷しています。アサド政権が廃棄させられた化学兵器の件はクローズアップされましたが、ドラム缶爆弾による被害の大きさは比較になりません。

以下の映像では、シリア軍のヘリコプターからドラム缶爆弾がAḑ Ḑab‘ahの街に投下されています

昨年7月、シリア北部の町テル・リファトでヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員が話を聞いたある若い女性は、ドラム缶爆弾を落とされる側がどう感じるかを説明してくれました。「夫の横で寝ていて目が醒めました。身体の上にはがれきがありました。2歳の息子は死に、夫は爆弾の破片で負傷しました。息子の遺体は、彼のベッドから遠く離れたところにありました。」

もちろん問題はアサド大統領が嘘つきかではありません。問うまでもないことです。むしろ問うべきは、なぜ大統領がこうした倒錯的なユーモアのセンスを発揮するほど自信たっぷりなのかです。

理由は明解です。アサド大統領はここ数年間、大量殺人の罪に問われずにいるからです。西洋諸国は過激派集団「イスラーム国」(ISIS)への国際的な戦いに力を注ぎ、アサド大統領への関心は中心から外れました。この機に乗じて、邪魔されることなく殺害を続けられているのです。

約1年前、国連安全保障理事会決議第2139号は、アサド大統領に「人口密集地での、砲撃、およびドラム缶爆弾の使用を含む空爆等の無差別な兵器使用」を停止するよう求めました。

しかしアサド政権にはロシアと中国という強力な後ろ盾があります。このため国連安保理は決議の実施に必要な措置を一切行っていません。シリア軍のヘリコプターの使用を防ぐ武器禁輸すらありません。

まさにこうした現状があるからこそ、アサド大統領は国民が死ぬのを横目で見ながら、ドラム缶爆弾で遊び回っていられるのです。