Some of the women profiled in this report, all of whom are now refugees in Turkey due to ongoing conflict and threats to their personal freedom and security in Syria.

© 2014 Samer Muscati/ Human Rights Watch

(ロンドン)-シリア女性たちは内戦勃発以来、政府軍および親政府民兵組織、反体制武装勢力により恣意的に逮捕・拘禁され、身体的な人権侵害や嫌がらせ、拷問に苦しんでいる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。国連の女子差別撤廃委員会 (CEDAW Committee)は7月4日にジュネーブで、シリアの女性をめぐる事態に関しレビューを予定している。

報告書「私たちはまだここにいる:シリア内戦の前線に立つ女性たち」(全47ページ)は、現在トルコで難民となっている17人のシリア人女性に焦点を当てたもの。文章および写真でつづる彼女たちの横顔を通じ、内戦がいかに同国の女性たちの日常を変えてしまったかを調査・検証している。本報告書に登場する女性たちは、政府および親政府武装組織、ならびに「リワ・アルイスラム」や「イラク・シリアイスラム国(以下ISIS) 」といった過激派など、反体制武装勢力からも被害を受けた。活動家や人道支援を行なっていた女性たちは、脅迫、恣意的な逮捕や拘禁、そして政府軍や反体制派武装勢力からの拷問を経験。うち拘禁されていた6人は、全員が身体的な人権侵害または拷問の被害者だった。1人は何度も性的虐待を受けている。そのほかの女性は服装や行動をめぐり差別的な制約を課されたと語った。政府軍による一般市民への無差別攻撃で家族が負傷したり、死亡したという女性も数名いた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利局局長リーズル・ゲルントホルツは、「シリア内戦における残虐行為のあらゆる側面に女性たちも巻き込まれている。が、彼女たちは単なる受身の被害者ではない」と指摘する。「それが自発的なものであるにせよ、環境のなせる業にせよ、内戦で女性はより大きな責任を担いつつある。その代償を、脅しや逮捕、人権侵害、はては拷問で払わねばならないということは、絶対にあってはならない。」

シリア政府および非政府系組織が、完全なる不処罰の風潮のなかで女性や少女に対する人権侵害を行っている今こそ、女子差別撤廃委員会の検証はシリア女性の受難に光を当てる好機といえる。同委員会はシリア政府に、女性の恣意的逮捕・拘禁およびあらゆるかたちの暴力を停止し、人権侵害を捜査したうえで加害者の責任を問うよう、強く求めるべきだ。また検証の際には、女子差別撤廃条約(CEDAW)締約国による義務の遵守状況を評価する責任もある。それを踏まえて女性と少女をめぐる事態の改善に向けた措置を勧告せねばならない。

国連安全保障理事会、シリア政府、関係国・機関はまた、この先の和平交渉やそれに続く政策策定・平和構築過程において、包括的で実質的な女性の代表・参加を確保すべきだ。

本報告書は、2014年3月・4月にトルコのガジアンテップとキリスで実施した、27人のシリア女性難民および7つの人道援助機関の代表者たちに対する聞き取り調査を基にしている。一部の女性はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、平和的な活動行為を理由に政府軍や非政府系武装組織から嫌がらせや脅しを受けたり、拘禁されたと証言。彼女たちは平和的なデモ抗議を計画・参加したり、助けを必要としている人びとに人道援助を提供していた。また、家族の中の男性たちが政府軍に拘禁されたり、武装組織による居住区への無差別攻撃で負傷・死亡したため、彼女たちが事実上の世帯主と化したり、家計を第一に支えることになった経験も詳述した。

マイサ(30歳)は、2013年4月にダマスカスで政府治安部隊に拘禁されるまで、反体制武装勢力メンバーの医療支援に従事し、親反体制派の衛星テレビ局に勤めていた。治安部隊要員は彼女を一晩中太い緑色のホースで殴打したという。「顔を張り飛ばされました。髪をつかんで引き倒されたり、足や背中、体中を殴られたのです。」なお、本報告書に登場する女性の氏名は身の安全の程度に応じて、すべてファーストネームのみか仮名を用いた。

非政府系武装組織の一部も本報告書に登場する女性に嫌がらせをしたり、拘禁していた。加えて、服装や行動の自由に制約を課すなど、女性や少女に差別的な政策を押しつけた。クルド系のベリバン(24歳)は、反体制武装勢力「リワ・アルイスラム」に拘束されるまで、包囲攻撃された首都ダマスカスのヤルモウク難民収容所で医療支援に従事していた。10日後には釈放されたものの、同収容所内で急場の薬局を再開しようとした際に、今度はISISから服装を理由に脅された。当時彼女はヒジャブ(ヘッドスカーフ)は被っていたが、アバヤ(全身をゆるく覆う外衣)は着用していなかった。「彼らは、『今度こういう格好をしていたら殺すぞ。ここでまたお前を見つけたら、吊るしの刑だ』と言ったんです。」

一般市民居住区での無差別攻撃で家族が負傷・死亡したという女性たちもいる。内戦の結果、家計を第一に支えるようになった女性も一部いた。2013年7月にアレッポで投下されたたる(ドラム缶)爆弾で、アマル(44歳)の5人の子どものうち4人が殺された。直後には夫が脳卒中で体の一部が麻痺状態となり、話すのも困難になった。アマルは夫を介護している。3月に一家は、夫の診療とリハビリを求めてトルコに渡った。そこでは公園に野宿し、食事は慈善活動頼みとなっている。

2011年3月にシリア騒乱が始まって以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチはシリアトルコレバノンヨルダン、およびイラクのクルド人自治区で調査活動を行い、内戦全陣営による人権侵害を調査して取りまとめてきた。これら人権侵害には、恣意的逮捕・拘禁、拷問、女性や少女に対する差別的制約、略式処刑、居住区の不法な破壊化学および焼夷兵器の使用などが含まれる。

国連安保理決議第1325号と女子差別撤廃条約(シリア政府は2003年に批准)に応じて、シリア内戦の全陣営が女性と少女を内戦の暴力から保護する措置をとるべきである。これには性暴力や性別が原因の暴力も含まれるべきだが、それらに限定されてはならない。同決議および条約はまた、こうした人権侵害の加害者の責任を追及し、女性と少女に医療や心理・社会・経済的支援を提供するよう、締約国に義務づけている。加えて、将来の和平交渉および国家再建の全過程において、男性同様の実質的な女性の参画を確保するよう求めている。

前出のゲルントホルツ局長は、「シリアの女性は多大な喪失に直面してきた。にもかかわらず、活動家や介護者、そして人道支援者の道を貫いている」と述べる。「国際社会は、女性と少女に対する人権侵害の責任をシリア政府と武装組織に追及させる必要がある。そして援助関係国は、彼女たちの喫緊なニーズを満たす支援をすべきであり、シリアの未来を決定する過程での女性の積極的な参画を強く求めるべきだ。」