はじめに
ビルマは今もなお、世界の中でもっとも抑圧的で閉鎖的な社会のひとつです。暴力的で排他的な一握りの国軍幹部が1962年以降、武力によって政権の座についています。軍事政権は2010年に20年ぶりの選挙を行なうと発表しており、この総選挙が「民主化ロードマップ」の次の段階だと主張しています。軍政指導部は、国際社会---なかでも主要な貿易相手国であり、外交上の有力な後ろ盾である中国やインド、タイ、シンガポール、ロシア---がこの見せかけの選挙プロセスを承認し、選挙後の政権を国際社会の正当な一員とみなすことを望んでいます。
しかし軍事政権は、国内の人権状況を改善していません。それどころか、この2年間で、政治活動家や、政府を批判した人々に対する逮捕や脅迫の事例は増加しているのです。政治囚の数は2倍になり、軍事支配に反対する政党・国民民主連盟 (NLD)の支部事務所は強制的に閉鎖されています。表現や集会、結社の自由はいまだに存在しないのと同じことです。国民民主連盟の指導者アウンサンスーチー氏は、この20年のうち14年以上を自宅監禁下で過ごしてきました。スーチー氏は2009年8月11日に、自宅軟禁条件に違反したという根拠のない容疑で有罪とされ、3年の刑を受けています(刑罰は直後に1年6カ月の自宅軟禁に変更)。このほかにもビルマ国内の活動家が、サイクロン被災者への支援や強制労働への平和的な抗議といった「犯罪」を理由に投獄されています。
ビルマでは2010年に総選挙が行われます。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれに先だち「2010年までに2100人」キャンペーンを開始し、ビルマで現在収監されている約2,100人の政治囚の釈放を求めます。本キャンペーンは全世界の人びとが参加することで世界の世論を示し、2010年総選挙を前に関係主要国と国連機関に影響を与えることがねらいです。軍事支配に反対する人々が刑務所に入ったままでの総選挙が信頼に足るものになることは決してありません。