(バンコク)– ミャンマー政府はラカイン州とチン州の9つの郡でのインターネット接続遮断を直ちに解除するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2019年6月21日以降のインターネット接続制限によって情報統制が悪化し、現地で拡大する戦闘の危険にさらされている住民を支援する人道機関や人権団体の活動にいっそうの困難が生じている。
ミャンマーの携帯通信事業者は、アラカン軍勢力とミャンマー軍との間で戦闘が起きているラカイン州のポンナジュン、チャウトー、マウンドー、ブティダウン、ラティダウン、ミャウー、ミンビャ、ミェーボン各郡と隣接するチン州のパレッワ郡でインターネット接続を遮断するようミャンマーの運輸通信省に命じられたと述べた。
「ミャンマー当局がラカイン州とチン州でインターネット接続を遮断したことで、危機的状況の下、 援助関係者や人権状況を監視する人々の肝心な通信手段が奪われている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは述べた。「各国政府と国連は、住民の安全のために不可欠であるインターネット接続を直ちに完全に回復させるようミャンマー政府に迫るべきである」。
農村地域であるミャウー、ミンビャ、チャウトーで活動している複数の国際非政府団体が、長引くインターネット遮断によって任務の遂行が困難になっていると報告している。ラカイン州で活動する国際団体にとって通信アプリのWhatsApp(ワッツアップ)は必要不可欠であり、それが使えないことでさらなる支障が生じている。
遮断の根拠としてミャンマー当局は、「緊急事態が発生した場合」に電気通信の一時停止を認める2013年の電気通信法第77条に基づく命令を出した。当局は遮断がいつ終わるかは明らかにしなかった。ノルウェーの通信事業者テレノールは声明を出し、同社は「遮断の理由についてさらなる説明を求めており、特に紛争時には電気通信サービスへのアクセスを通じた表現の自由が人道目的で維持されるべきであることを強調した」と述べた。テレノールは「さらなる説明を求め、人権への影響や遮断の範囲の妥当性が確実に検討されるように、当局との対話を継続している」と述べた。
今回のインターネット遮断は、ラカイン州とチン州の一部で軍事作戦が行われているとの信憑性の高い報告が寄せられるなか始まった。
報道によれば、インターネット接続が遮断された後、ミャウー郡の人里離れた山脈でミャンマー軍がアラカン軍勢力を攻撃した。また地元のメディアによれば6月22日、アラカン軍勢力がラカイン州の州都シットウェ近くに係留されていたミャンマー海軍のタグボートを攻撃し、兵士二人が死んだ。村人たちは、そのタグボートが攻撃された際に砲弾が村に落ちたと述べた。
2018年11月以降、ミャンマー軍とアラカン軍との間の戦闘が原因で少なくとも3万3000人が避難生活を送っている。人道支援やメディアのアクセスは未だに制限されている。ミャウー郡のある住人はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2019年6月21日にインターネット遮断が始まって以来、電話しか通じないと述べた。
国際人権法の下、ミャンマーはインターネット接続の制限に法的根拠があり、具体的な安全保障上の懸念に対して必要性があり、制限の規模が相応であることを示す義務がある。ミャンマー政府は、情報の流れを制限したり、市民が自由に集まり政治的見解を表明する能力に損害を与えたりする手段として広範で無差別の遮断を用いるべきではない。
国連人権理事会は2016年7月、インターネット上の情報へのアクセスや同情報の配布を国際法に反して故意に阻止または妨害する措置を非難し、すべての国はそのような措置を控えるか、止めるべきだと述べた。
「ミャンマーはインターネット接続を制限する場合には具体的な安全保障上の懸念に対して必要性があり制限の規模も相応であることを示すべきであるが、今回の遮断はこの基準から大きく逸脱している」とアダムズは述べた。「政府は人道危機において人命に関わる情報の流れを制限する広範で無差別のインターネット遮断を手段として用いるべきではない」。