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日本:タイ軍事政権の終結を 強く求めるべき

潘基文国連事務総長も、日本での会談で、タイ軍政に人権問題で圧力を

(ニューヨーク)日本の安倍晋三首相と潘基文国連事務総長はタイ軍事政権のプラユット首相に、政治的動機に基づく逮捕と検閲を停止し、早期の民政復帰を果たすよう強く求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。タイ首相であるプラユット元陸軍司令官は、国連防災会議に出席のため3月13日~14日に日本を公式訪問する。プラユット首相は安倍首相と潘基文事務総長とそれぞれ会談の予定だ。

2014年5月のクーデターから10ヶ月が経つ。タイの国家平和秩序維持評議会(NCPO)は基本的人権と基本的諸自由への侵害を続けており、真の民主主義回復に向け本格的に着手していないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。プラユット首相との今年2月の会談で、安倍首相は「日本政府としてタイの国民和解と早期の民政復帰を強く期待する」と述べた。これに対し、プラユット首相は2014年末か2015年初めに総選挙を実施するとした予定を改めて示し、「健全な民主政治」を樹立するための新憲法承認への手続を急ぐと約束した。 

「安倍首相と潘事務総長はプラユット首相に対し、人権尊重と自由で公正な選挙による民政復帰という約束を果たすよう強く求めるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「日本と国連はタイ軍政の終結に向けて明確なデッドラインを求めるべきだ。」

安倍首相は2013年1月28日の所信表明演説で「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった、基本的価値に立脚」という展望を明らかにした。プラユット首相との首脳会談で安倍首相は、この展望に具体的な形を与えるべきだ。安倍首相は対タイ政策を前進させ、人権に関しては「水面下」外交という日本の慣習から脱却し、パブリックディプロマシーや建設的批判も行う戦略的な方針をとり、プラユット首相が行った過去の約束を実現させるようにすべきだ。タイと外交・政治・経済・社会文化面で緊密な関係を持つ日本には、首脳会談で人権問題を率直に取り上げるだけの強い影響力(レバレッジ)があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。 

国連人権理事会に出席した前国軍総司令官タナサク副首相兼外相は3月4日、人権尊重がプラユット政権の最優先事項だと述べた。タイは2016年10月の安全保障理事会非常任理事国選挙での当選を目指している。しかし、人権分野で国連との協力を約束する一方で、タナサク副首相兼外相は各国には「個別の事情」があると強く主張し、タイ政府は国際基準は受けいれない姿勢を示唆した。 

2014年5月のクーデター以来、軍政側には民政復帰を目指す本気の動きがまったくない。NCPO議長兼首相のプラユット氏は、司法などの監視を一切受けることなく広範な権力を行使している。暫定憲法と厳しい1914年の戒厳令の下、軍政要員が人権侵害を侵しても免責されることになっている。暫定憲法に基づく主な機関としてNCPOが設置した国民立法議会、国民改革評議会、憲法起草委員会には、すべて軍人と軍政派の人びとが送り込まれている。

基本的人権と基本的自由は民政復活に不可欠であるが、NCPOは検閲を強化し、報道機関に軍政批判を禁じるなどして、これを厳しく抑圧している。200以上のウェブサイトが安全保障上の脅威という理由でブロックされている。ヒューマン・ライツ・ウォッチのタイに関するウェブページもブロックされている。 

NCPOは5人以上の集会を認めず、クーデターに反対する行動を禁じている。少なくとも690人が軍政当局に出頭を命じられ、政治への関与、とくにNCPOに反対することをやめるよう圧力を受けている。軍政に反対する人びとは軍事法廷に送られている。人びとは軍事法廷で刑務所送りになる危険があるが、判決への異議申立は許されない。たとえば2月14日には、模擬選挙を行ったとして活動家5人がバンコクで逮捕された。5人には戒厳令違反とNCPOに反対した罪に問われており、軍事法廷で訴追されている。政治に関する議論そのもの、そして多様な政治的意見そのものを、国家の安定と安全保障上の脅威と見なすNCPOは、大学にも統制の手を伸ばし、人権や民主主義、プラユット政権の評価についての議論を禁止した。 

「人権を尊重するという約束とは裏腹に、軍政は権力掌握をいっそう進めている」と、前出のアダムスは述べる。「戒厳令の解除や検閲の停止、非暴力的な政治的批判を可能にするためには、日本と国連からの圧力が必要だ。それはタイの民政復帰に向けた大きな一歩になるだろう。」

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