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(左上)2023年11月3日、パキスタンからアフガニスタンに帰還したアフガニスタン難民、アフガニスタン、トルカムにて。(右上)2023年10月10日、ミャンマー、ライザのMung Lai Hkyet国内避難民キャンプで、空爆と砲撃の後に破壊された家屋。(左下)2023年11月28日、での抗議行動中の政治的暴力被害者の親族、バングラデシュ、ダッカ。(右下)2023年11月2日、フィリピンのマニラ首都圏ケソン市で、万霊節に親族や支援者が集まる中、強制失踪とされる犠牲者の写真の間にろうそくを立てる女性。 © 2023 AP Photo/Ebrahim Noroozi / 2023 AP Photo/ 2023 Kazi Salahuddin Razu/NurPhoto via AP / 2023 ROLEX DELA PENA/EPA-EFE/Shutterstock

(バンコク)アジア各国政府による弾圧が高まり、アジア内外での人権状況に悪影響を及ぼしていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日『世界人権年鑑2024』を発表し、指摘した。

2023年、中国政府は、新疆ウイグル自治区でウイグルをはじめトュルク系ムスリム住民に対し、人道に対する罪を引き続き行った。また、全土でも人権侵害をもたらす政策や慣行を強化した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とベトナムは、国内での弾圧をエスカレートさせた。2024年に選挙が予定されているインドパキスタンインドネシアバングラデシュの各国政府は、民主主義を擁護する機構と法の支配への攻撃を強めている。

「人権侵害をはたらくアジア各地の政府は国内的にも国際的にも人権を脅かしている。こうした状況に対して、人権を尊重する政府や民主主義を擁護する機構は、大胆で新しいアプローチを取らなければならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長エレイン・ピアソンは述べた。「アジア全域で、人びとの権利と自由が踏みにじられたり、無視されたりしている。アジアで人権を擁護し、促進するには強力な指導力こそが求められる。リーダーシップが発揮されなければ、状況は悪化の一途を辿るだろう」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、34年目の刊行となる年次報告書『世界人権年鑑2024』(全740頁)で、100カ国以上の人権状況を検証した。ティラナ・ハッサン代表序文で、2023年は、人権弾圧や戦時下の残虐行為だけでなく、場合によって憤りを表明したりしなかったりする各国政府の態度、また取引外交でも注目に値する年だったと指摘した。この外交では、「取引」に加わらない人びとの権利は著しく侵害される。しかし、ハッサン代表は、別の道が開ける可能性が示されるという希望の兆しもあったとし、各国政府に対し、人権義務を常に遵守するように求めた。

アジアには、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ大陸とは異なり、人権基準を守る上で実際的な役割を果たす人権憲章や地域機構が存在しない。ミャンマー危機に顕著なように、政治機構である東南アジア諸国連合(ASEAN)は域内の人権を深刻に脅かす事態に対処できないことが、これまで何度となく明らかになっている。

アジアの民主的な制度は2023年を通して攻撃にさらされ続けた。タイでは5月に総選挙が行われたものの、国軍が議員を指名する上院と、軍事政権が起草した憲法の下で作られたメカニズムにより、最多得票数を獲得した政党による政権樹立が阻まれた。7月のカンボジア総選挙は、政府が主要野党の参加を認めなかったため、もはや選挙とは言い難いものとなった。バングラデシュでは、2024年の総選挙を控え、当局が野党への攻撃を強化し、反体制派や野党党員など1万人以上が拘束された。

ベトナムとインドでは、反体制派や政府を批判する人びと(環境活動家を含む)を当局が恣意的に逮捕、起訴する事件がますます増えた。フィリピンでは、労働組合の指導者、ジャーナリスト、活動家が依然として、「アカ」(共産主義者)とレッテル貼りされて弾圧の標的とされ、命を落とす人も少なくなかった。カンボジアで長年権力の座にあるフン・セン氏は、息子のフン・マネット氏に首相の座を譲ったが、フン・マネット氏も市民団体や独立メディアへの厳しい規制を緩めなかった。

北朝鮮の全体主義政権は国境の封鎖を続け、国民を鎖国同然の状態に置いて、悲惨な人権状況をいっそう悪化させた。アフガニスタンでは、人道危機的状況下において、タリバンが、とくに女性や女の子に対して、人権への厳しい締め付けをさらに強めた。

アジアの複数の政府は、2023年に国境を越えた人権侵害を行っている。中国政府は他国の市民や機関を脅迫した。タイにいる庇護希望者は、ミャンマー、中国、ラオス、カンボジア、ベトナムへの強制送還の脅威にさらされた。

9月、カナダ政府は、インドからの分離独立を訴えるカナダ在住のシーク教徒活動家の暗殺にインド政府の工作員が関与していたと発表したが、インド政府はこれを否定している。11月、米国当局は、インド政府高官と共謀し、米国内のシーク教徒活動家の暗殺を企てたとして、男性1人を起訴した。

アジア地域の民主主義政権は、アジア内外のいずれにおいても、人権基準を擁護、支持することはほぼなかった。日本は国連安全保障理事会(安保理)の非常任理事国だったが、人権面での行動はあまりなく、人権侵害を行っている東南アジア諸国政府への制裁の発動や執行を拒んだ。韓国は、2024/2025年度の安保理非常任理事国に選出されているが、日本と同様、アジア諸国の人権を擁護する場面はほぼなかった。オーストラリアは、他の西側諸国に比べて、人権侵害実行者への対象限定型制裁の発動にかなり及び腰だ。他国が制裁対象とする、人権侵害をはたらいた中国政府高官についてはとくにそうだといえる。

インド政府は、ミャンマー、スリランカネパールといった隣国の人権状況改善を支援するというかつての取り組みを完全に放棄してしまった。インドネシアは近年、人権を尊重する国として台頭してきたが、他国の人権や民主的統治の擁護には結びついていない。

「インド、インドネシア、日本、韓国をはじめとするアジアの歴史ある民主国家は、アジアおよび世界の人権状況に改善をもたらす指導力を発揮できていない」と、ピアソン局長は述べる。「自国の国境の外で行われている弾圧が、自国内の人権状況を悪化させていることを、こうした政府は認識すべきである」。

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