(バンコク)–ミャンマー国軍は、2021年2月1日のクーデターから半年の間に、人道に対する犯罪に相当する多数の人権侵害を市民に対して行ったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
国軍の政権奪還以来、何百万人もの人びとがミャンマー全土で、民主的に選出された文民政府の復帰を求めて平和的に抗議してきた。市民に対する広範かつ組織的な攻撃の一環として、治安部隊はデモ参加者を解散させ、彼らに危害を加えるために発砲、さもなければ過剰な武力行使を繰り返している。警察官および兵士はこれまでに約75人の子どもを含む900人超の参加者および傍観者を殺害し、100人超を強制失踪させた。拘禁下で拷問を受けたり、レイプされた人は数知れず、数千人が恣意的に逮捕・拘禁されている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「ミャンマー軍は、昨年の国政選挙の結果の尊重と民意を反映した政府を望んでいるだけの人びとを殺害・拷問・恣意的拘禁することで、クーデターに反対する大規模な抗議運動に応えてきた」と指摘する。「これら市民への攻撃は、加害者の説明責任が問われるべき人道に対する犯罪に相当する。」
人道に対する犯罪の概念は少なくとも1915年にまでさかのぼることができ、ナチス指導者を裁くニュルンベルク裁判を設置した1945年の国際軍事裁判所憲章の一部でもあった。国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程のもと、人道に対する犯罪は、「文民たる住民に対する攻撃であって広範または組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う」一連の行為と定義されている。
クーデターへの抗議に対するミャンマー軍の犯罪は、市民に対する広範かつ組織的な攻撃だ。広範かつ頻繁な一貫性という対応の性質から、個々の治安部隊の行動というよりは、むしろ政府の方針を反映しているといえる。
2月1日以降に犯された人道に対する犯罪には、殺人・強制失踪・拷問・レイプをはじめとする性暴力・深刻な自由の剥奪他、多大な苦痛をもたらす非人道的な行為が含まれる。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでに、ミャンマー国軍が民族浄化作戦の一環として、2012〜13年、そして再び2017年にロヒンギャ民族に対して人道に対する犯罪を犯したことを明らかにしてきた。当局は、現在ラカイン州に暮らすロヒンギャに対して、アパルトヘイト犯罪・迫害・深刻な自由の剥奪という人道に対する犯罪を犯している。 国連が設置したミャンマーに関する独立調査団(IIIM)は、これらの事件を「密接に追跡」し、クーデター後に犯された可能性のある犯罪の証拠を収集している。 また、独立調査団には、刑事手続においてそのような犯罪の加害者の責任を問う取り組みをサポートするために、事件簿の作成も義務付けられている。
国連、当該地域の関連組織、および欧州連合・米国・東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む各国政府は、ミャンマー国軍およびミン・アウン・ライン上級大将率いる国家行政評議会(SAC)のミャンマー軍に対し、国際的制裁を補完・強化・調整することで、進行中の人道に対する犯罪に対応すべきだ。こうした行動には、個人を対象にした制裁、世界的な武器禁輸、および採掘産業によるミャンマー軍の歳入を減らすことが可能な経済制裁等が含まれるべきだ。
ミャンマー国軍の最大の外貨収入源であり、税金・ロイヤリティ・手数料ほかで年間10億米ドルにのぼる天然ガスの利益を削減すべく行動する必要がある。米国、EU、英国ほか各国は、PTT社、Total社、Chevron社が運営するような、外資系の石油および天然ガス事業からミャンマー軍および国有企業への支払いを遮断しなければならない。ミャンマー国内でのガスおよび電力の継続的な生産を可能にしながら、ミャンマー軍の外国口座へのアクセスに対象を絞るように措置をデザインすることもできる。
クーデター以降、中国とロシアによる拒否権への懸念から、国連安全保障理事会はミャンマーの人権危機に対応する決議の採択を思いとどまってきた。 安保理は、同国の事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託することも念頭に、ミャンマー軍に対する措置を速やかに講じるべきだ。2017年の民族浄化作戦に続くロヒンギャの国外追放および迫害という人道に対する犯罪を、現在、国際刑事裁判所の検察官が捜査している。これら犯罪が最終的には同裁判所締約国であるバングラデシュで終結したからだ。安保理は、法的拘束力のある武器禁輸措置、ミャンマー軍関係者と軍指導者に的を絞った制裁措置を科す国連総会の6月の決議に、自らの決議で続くべきだ。
安保理と国連加盟国は、民主的に選出された文民政府の回復、政治囚の釈放、人権侵害の加害者の説明責任に向け、ASEANがミャンマー軍に十分な圧力をかけるだろうという姿勢を示すのをやめるべきだ。4月24日の首脳会談以来、ASEANは約束していた特使の任命をまだしておらず、ミャンマーの深刻な人権問題に対処するための圧力を軍にかける上で、意味のある措置を講じないでいる。
アダムズ局長は、「ミャンマー軍の人道に対する犯罪をめぐる国際社会の対応は、安保理の拒否権への恐れ、ASEANの無気力なリーダーシップ、そして外資系天然ガス会社を標的にすることへのEUのためらいが原因で後手に回ってきた」と指摘する。「安保理と影響力をもつ国々、特に米国、EU、オーストラリア、日本、インド、タイが、残忍な弾圧に終止符を打つため、軍に圧力をかけるべく、強調して制裁措置を発動すべきだ。」
2月1日に起きた軍事クーデター以降の人道に対する犯罪疑惑
国際刑事裁判所のローマ規程は、人道に対する犯罪を「文民たる住民に対する攻撃であって広範または組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う」いくつかの犯罪の1つと定義している。「広範」とは、行為の規模または被害者の数を指す。「組織的な」攻撃はパターンまたは系統的な計画を示す。人道に対する犯罪は平時および武力紛争中に犯される可能性がある。
ローマ規程は、「攻撃」を「国もしくは組織の政策に従いまたは当該政策を推進するため[中略]多重的に行うことを含む一連の行為」と定義している。「攻撃」は、国際人道法で定義されている軍事攻撃である必要はない。 さらに「住民」という文言は、人道に対する犯罪が地理的な領域または地域の全住民に対してのものであることに縛られない。」
ローマ規程の説明覚書は、人道に対する犯罪を「人間の尊厳に対する重大な攻撃、深刻な屈辱、または1人以上の人間の品位を傷つけるものという点で、特に憎むべき犯罪である。これらは孤立した、または散発的なできごとではない。が、政府の方針か、または政府あるいは事実上の指導者によって容認・容赦された残虐行為の広範な慣行、いずれかの一環」としている。
ミャンマーは国際刑事裁判所の締約国ではないが、安保理は同国の事態を付託することができる。
ミャンマー国軍による多数のデモ参加者殺害、身柄を拘束した反体制派の強制失踪、拘禁下における多数の拷問やレイプ、そして大規模な政治的拘禁がクーデター以降にミャンマー全土で起きていることが、これら人権侵害が広範に及ぶことを示唆している。
デモ参加者に対する対応が組織的なものであることを示唆する声明を2月21日に、国家行政評議会が国営英字日刊紙「Global New Light of Myanmar」で発表した。「抗議者が今や人びと、とりわけ感情的なティーンや若者をたきつけ、命を失う苦しみを味わうことになる対立路線へと導いている。」
3月26日、国営 MRTVニュース局が、デモ参加者は「頭や背中を撃たれるという危険な目に会うかもしれないということを、先の醜い死の悲劇から学ぶべき」だと発表。併せて「両親も子どもたちに[デモへの参加から]抜け出し、人生を棒に振らないよう話すべき」だと警告した。この言葉は、翌日の国軍記念日に計画されていた抗議デモに対し、治安部隊が武力行使するサインだと広く解釈された。
5月8日の声明では、軍が正式に野党「国民統一政府(NUG)」とその議会委員会、分派の民兵組織を「テロ集団」に指定し、軍に対する扇動行為を主張。広範に及ぶ弾圧作戦の正当化を狙ったものとみられる。軍は、2020年の国政選挙における与党党員で構成された「連邦議会代表委員会」およびNUGは、「絶えず暴力行為を起こすために、市民的不服従運動(CDM)参加者を扇動している」と述べた。
次に挙げる人道に対する犯罪疑惑は、独立的かつ中立的に捜査されるべきだ:
殺人
2月1日のクーデター以降、国家行政評議会の軍は、大規模な抗議デモに対し過剰かつ致命的な武力行使に訴えてきた。警察と軍隊はこれまで900人超を殺害。犠牲者の大半はデモの参加者および傍観者だ。殺害の現場はミャンマー全土の多くの市町村におよぶ(ヤンゴン地方域のライン郡区・北オッカラパ郡区ほか)、マンダレー地方域、バゴー地方域、ザガイン地方域のモンユワほかの郡区、チン州ミンダ郡区など)。国際人権基準は、人命への差し迫った脅威がある場合の最後手段としてのみ、法執行官による致死的な武力行使を認めている。しかし、メディアや国連、ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする人権団体が報告した多数の事案で、非武装で明らかに脅威ではないデモ参加者に対し、治安部隊が発砲している。
ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は4月13日、「ミャンマーの多くの地域で、また申し合わせされた流血の週末を迎えた」と強く非難した。「国軍は、軍隊級の無差別兵器を使用して、ミャンマー市民に対する無慈悲な暴力政策の強化を意図しているようだ。」
国連人権理事会は、平和的な集会の自由に関する一般的意見37で、次のように述べている。「火器は集会に対する警察活動に適切な装備とはいえず、単に集会の分散目的 で使われるべきでは決してない[中略]集会という文脈おける法執行官の火器使用はすべて、死または重傷という差し迫った脅威に対応するため厳格に必要な状況において、対象となる個々人に限定されなければならない。」
人道に対する犯罪は、国際特別法廷が「被告人による作為または不作為に起因する、死に至る可能性が高いと理解しながら殺害や重傷をおわせる意図をもって実行された被害者の死」と定義してきた。
治安部隊によるデモ参加者への大規模な銃撃の報告がこれまで多数ある。国連は、治安部隊が2月28日に18人を殺害したと報告。また、3月3日にはミャンマー全土でデモ参加者に実弾を発射して少なくとも38人を殺害し、100人超を負傷させたとしている。サガイン地方域モンユワ郡区、マンダレー地方域のミンジャン県およびマンダレー県、マグウェ地方域の町サリンにおける1日の殺害もメディアの報道や地元アナリストの報告で明らかになった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、治安要員が意図的に個々人を殺害したとみられる事件を調査した。3月3日、ヤンゴンで少なくとも10人の治安部隊隊員が拘禁された一団の前に男性1人を押し出し、背後から至近距離で射殺する様子が動画に捉えられている。
医師たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、負傷した参加者に近づくことを治安部隊に邪魔され、失血で死亡した人もいたと証言した。デモ時に移動診療所で働いていた医師たちは、治安部隊がゴム弾を散りばめた実弾を使用し、致命傷の多くは上半身に受けた銃創だったと話している。
治安部隊が群衆に発砲したとされる3月13日に、マンダレー市セインパン区の5人を含む9人が少なくとも殺害された。3月14日、ヤンゴン地方域ラインタヤ郡区では治安部隊が推定58人を殺害している。
3月17日、デモ参加者を追っていた警察官が、マヤンゴン郡区バインナウンにあるSandar Linn Sheinの自宅に踏み込んだ。彼女の証言によると、一家がデモ参加者を匿っているととがめて無差別に発砲しはじめたため、姉が即死、兄は胸を負傷したうえ、その場で逮捕されたという。
MRTVニュース局が「頭や背中を撃たれるという危険な目に会うかもしれないということを、先の醜い死の悲劇から学ぶべき」と発表した翌日3月27日の国軍記念日に、治安部隊が暴力的な取締りを実行し、少なくとも40の市町村でデモ参加者数十人を殺害したと、東南アジアの人権団体Fortify Rightsが次のように報告している:「3月27日に撮影された目撃者たちの写真や動画で、子どもを含む犠牲者の数々や、街頭で発砲し、遺体を引きずりまわし、残酷に人びとを暴行する兵士たちの様子がみてとれる。」
ある事案では、治安部隊がマンダレーでの夜間踏み込みでAye Koに発砲し、負傷させた。地元メディアは、治安部隊が彼を引きずり出して、身体に火を放ったと報じている。住民たちは、助けようとすれば撃つと脅されたと証言。大きく報道された3月27日の別の事件では、バイクで近くを通り過ぎたKyaw Min Lattを兵士たちが射殺した様子が動画におさめられていた。
メディア報道によると、4月9日未明にバゴーでデモ参加者のバリケードと野営地に襲撃を仕掛けた軍人が約82人を殺害した。
5月26日、AP通信はカリフォルニア大学バークレー校・人権センター調査研究所と協力して、殺害を文書化した広範かつ詳細な報告書を発表した。APと人権センターは、軍が街頭で遺体を引きずりまわしたり、切断された遺体を家族に返すといったことも含む方法で住民を恐怖に陥れることで、デモを終結に持ち込んだと結論づけている。報告書で特定された事例は130超にのぼり、「治安部隊が死体や負傷者を見せつけることで、一般市民に不安や不確実性、恐怖を植え付けているようにみえる」とした。
強制失踪
クーデター以降、ミャンマー当局は100人超の政治家・選管関係者・ジャーナリスト・活動家・デモ参加者の身柄を拘束して強制失踪させ、国際法に違反してこうした人びとの所在確認を拒否している。
強制失踪は国際刑事裁判所のローマ規程で、国もしくは当局者が「長期間法律の保護の下から排除する」意図をもって、人を逮捕し、拘禁し、またはら致する行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、またはその消息もしくは所在に関する情報の提供を拒否することを伴うものと定義されている。
逮捕された反軍のデモ参加者の家族や友人たちは、消息がわからないことから、安否を憂慮しているとヒューマン・ライツ・ウォッチに訴えた。
多くの場合、家族は所在の情報を非公式に受け取るのみだった。たとえば釈放されたばかりの元被拘禁者が他の人を拘禁中に見かけたと家族に伝えることなどがそれにあたる。刑務所が差し入れを受け取ったため、家族はおそらくそこに収監されているのではないかと考えている人びとも一部いた。しかし、この結論に事実上根拠はない。いずれにせよ、ミャンマー法が定める被拘禁者の消息情報の提供、被拘禁者を48時間以内に出廷させる、迅速な弁護人との接見および家族との面会を許可するといった当局の義務に代わるものでもない。
拷問
民主化デモに参加したために拘禁された人の多くは、自身や他の人たちが治安要員から拷問や虐待を受けたと、釈放後に証言した。報告されている拷問には、殴打する、銃で脅しながら処刑ごっこをする、タバコで火傷を負わせる、レイプするおよびレイプをすると脅すといった方法が含まれる。ミャンマーでは、刑事事件における警察の拷問が長い間問題となってきたが、虐待行為が軍にとって政敵を抑圧する試みの一部であることを示す暴行や拷問、ジェンダーに基づく暴力のリスクに、拘禁下の反クーデター派が今も直面している。
ある19歳の男性は、4月9日、死者の出たデモの後にバゴー郊外の軍事施設へ連れて行かれたとメディアに語った。治安部隊はケーブルや銃床、瓶などで彼の手を殴ったという。「司令官が私を後ろ手に縛り、小さなはさみで耳や鼻の先、首、喉を切りつけました。[彼は]ガラス瓶で頭を殴り、暴行し、銃を突きつけてきました。」
タニンダーリ地方域ミエイクのデモ参加者は、釈放後の3月9日、治安部隊員が、デモ中に拘束した約70人をベルトやライフルの銃床、パイプ、木棒、チェーンで殴打したと証言した。4月19日に軍が、拘禁下で苦しんだ拷問の痕跡を残した若い被拘禁者6人の画像をMRTVニュース局で放送し、世間の激しい反発を招いた。
17歳の少年は、目隠しをされたまま何日も暴行された後に、首まで穴に埋められるという埋葬ごっこをされたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。 一緒に逮捕された人たちは4日間も食べ物と水を与えられず、生き残るためにトイレの水を飲んだという。
ビルマ政治囚支援協会(AAPP)は、クーデター以降、少なくとも22人が拘禁中に拷問され死亡したとしている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ヤンゴンのダウンタウンにあるパベダン郡区区長Khin Maung Latt(58歳)の事案を調査した。3月6日の夜、兵士と警察が彼の家に強制的に踏み込んで家族の前で殴る蹴るの暴行を加えた後、銃を突きつけて連れ去るのを複数の人が見ていた。翌朝、当局からの通知をうけ、家族が病院で彼の遺体を引き取った。目撃者によると、手と背中には深い傷があり、全身血まみれだったという。
レイプおよびその他の性暴力
プラミラ・パッテン紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表は、ミャンマー当局による性暴力疑惑を強く非難。人権侵害の終結および独立した捜査のための妨害なきアクセスを要請した。6月25日の声明で次のように述べている。
夜間の襲撃、恣意的逮捕、町や近隣一体の包囲、拘禁下の拷問と死亡、一般市民が集まっている場所、あるいは逃げた先への攻撃、拘禁施設における性暴力、とりわけ性的暴行、拷問、身体的および言葉の暴力、威嚇の常態化が懸念材料となっている。
人権活動家担当のメアリー・ロウラー国連特別報告者は、ミャンマーに関する7月19日の声明で、「僻地にいる女性の人権活動家はとりわけリスクが高い。刑務所に送られる前にしばしば暴行を受け、 刑務所でも拷問や性暴力に直面し、治療を受けることができない可能性がある」と述べている。
野党の国民統一政府は、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとが、拘禁下の性暴力にとりわけぜい弱な立場にあると報告。あるトランスジェンダー女性は、釈放後、拘禁時に物でレイプされたり、拷問・暴行を受けたと語った。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、警察が4月17日に逮捕し、ヤンゴンの治安部隊に対する一連の爆弾攻撃に関与したとして訴追した女性の事案を調査した。 地元メディアは、ヤンキン郡区の警察が署内での尋問中に、この女性を性器も含め激しく暴行し、膣から出血させたと報じた。警察はシュエピタ郡区にある尋問施設で再び彼女を暴行し、食事や排尿をままならなくした。彼女と同じ房にいた女性は、自身もサンチャウン郡区にある警察署での尋問中に性暴力や銃による威嚇、平手打ちなどを受けたと話している。
3月3日、ヤンゴンでKamayut Media事務所が踏み込み捜査を受け、ジャーナリストのHan Thar NyeinとNathan Maungが逮捕された。のちに釈放されたNathan Maungは、2人とも尋問施設で何日も暴行され、現在はインセイン刑務所に収監されているHan Thar Nyeinはさらにタバコで焼かれたり、レイプすると脅されたと語った。
国際法に抵触した投獄またはその他の深刻な自由のはく奪
2月1日、国軍は首都ネピドーにおける早朝の襲撃で、アウンサンスーチー国家顧問、ウィンミン大統領、他数十人の幹部を逮捕。現在も全員拘禁されたままだ。
ビルマ政治囚支援協会(AAPP)は、クーデター以降、6,990人が逮捕され、うち5,442人が拘禁されたままと報告している。治安部隊が連座の一形態として、活動家やデモ参加者、野党党員の家族や友人を逮捕・拘禁した例もある。AAPPによると、踏み込み捜査中に逮捕しようとしていた個人を見つけられなかった治安部隊が、幼児を含む少なくとも119人を逮捕したこともあった。うち少なくとも83人は拘禁されたままで、一部の家族は有罪判決を受けた。
軍は特にメディア関係者を逮捕の標的にしてきた。AAPPによると、2月1日以降、98人のジャーナリストが逮捕され、うち46人は現在も拘禁されている。6人のジャーナリストが有罪判決を受けており、うち5人は刑法第505A項を適用された。同条項は、「恐怖を与える」または「偽のニュースを拡散する」発言を公開または流布することを犯罪と新たに定めたもの。
多大な苦しみや重傷を引き起こすその他の非人道的行為
ミャンマー軍は医療従事者に嫌がらせをしたり、彼らを恣意的に逮捕・攻撃しており、時にそれが負傷したデモ参加者の治療の最中だった場合もある。多くの医療従事者が反体制派「市民的不服従運動」の初期リーダーで、抗議の一形態として公立病院で働くことを拒否した。クーデター以降、少なくとも260人の医療従事者が治療をしようとして攻撃され、うち18人が殺害された。AAPPによると、76人が拘禁下にあり、最高で600人の医療関係者に逮捕状がでているという。その多くは臨時の移動診療所で秘密裏に働くことを余儀なくされているか、逮捕を回避するために隠れている。ミャンマーの国連カントリーチームは、医療従事者への攻撃で、新型コロナウイルス感染症対策が危機に陥っていると述べた。
オンラインで公開されたCCTVの映像では、少なくとも6人の警官が、Mon Myat Seik Htar(MMSH)ボランティア救助チームの救急車から3人を引きずり出して、銃と警棒で殴打したり、蹴ったりしている様子が確認できる。その後、MMSHのボランティアたちは逮捕され、3月24日に釈放されたとMyanmar Nowが報じた。