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ミャンマー:法の裁きと安全な帰還を3年間待ち続けるロヒンギャ・ムスリム

ラカイン州およびバングラデシュの難民キャンプで状況が悪化

 

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Nozir, Rohingya Refugee

“I hope no community in the world has such a bad and horrific day that the Rohingya community had on 25th August 2017.”

 

It’s three years since Myanmar’s military began a campaign of mass atrocities against Rohingya Muslims

 

Abdul Hamid, Rohingya Refugee

“We witnessed thousands of people being killed. Bodies were floating in the river in Tula Toli, but no justice has been served.”

 

The military’s widespread killings, rape and arson forced over 740,000 Rohingya to flee to Bangladesh

 

They are now living in refugee camps in Bangladesh, where aid workers fear a Covid-19 outbreak

 

Sheru Hatu, Rohingya Refugee

“We really want to go back to our country and check on our land, our animals, but it’s impossible. How long do we have to live under these tarp shelters?”

 

Myanmar authorities say the Rohingya can return, but refuse to ensure their safety or freedom

 

Shamima, Rohingya Refugee

“We can only go back home if we know that the torture we faced will not happen again.”

 

The 600,000 Rohingya still in Myanmar are denied citizenship, endure persecution, and live under threat of genocide

 

Sadek Hossen, Rohingya Refugee

“I want to go back to Myanmar, but only when we will be given our rights there.”

 

Adel Badshah, Rohingya Refugee

“I want to fulfill the dream I used to have, to become a college teacher, helping my own country by teaching others. I hope to make that dream come true.”

(ニューヨーク)―ミャンマー政府は、100万人近くのロヒンギャ・ムスリムが軍による人道に対する罪、およびジェノサイド罪に該当する可能性がある迫害を逃れ隣国に脱出してから3年の間、安全な帰還の確保をしないでいる、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。そしてバングラデシュに避難しているロヒンギャ難民は、情報教育にアクセスする権利、移動の自由、健康権をめぐる厳しい規制に直面し、治安部隊による不当な殺害の犠牲になっている。

2017年8月25日にミャンマー軍は、ロヒンギャ・ムスリムに対して、大規模殺害レイプ、放火など残忍な民族浄化作戦を開始。結果として74万人超が隣国バングラデシュなどへの脱出を余儀なくされた。同国は当時すでに、1990年代以降にミャンマーから迫害を逃れてきた人びと30万〜50万人を受け入れていた。

2020年1月に国際司法裁判所(ICJ)は、ジェノサイド条約違反を判決する間、ジェノサイドを防ぐための暫定措置をミャンマーに課した。2019年11月には国際刑事裁判所(ICC)が、ミャンマーのロヒンギャ強制送還およびそれに関連した人道に対する罪の捜査を開始。ミャンマーは国際司法上の措置の遵守や、国内での国連による重大な犯罪捜査の許可、軍の残虐行為をめぐる独自の信頼できる犯罪捜査の実施をしていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「ロヒンギャの人びとが味わった恐ろしい苦しみは、世界的パンデミックで消え失せることはないとミャンマー政府は認めるべきだ」と述べる。「ミャンマーは、ロヒンギャ難民の安全かつ自主的な帰還を可能にする国際的な解決策を受け入れる必要がある。一方、バングラデシュの受け入れ態勢がギリギリの状態なのは理解できるが、行き場のない難民によりそわない状態にしておくべきでなない。」

ミャンマーのラカイン州に残っている60万人のロヒンギャ・ムスリムは、激しい抑圧と暴力を受けており、移動の自由をはじめとする基本的権利は保障されていない。ミャンマーから脱出し、死に物狂いの人びとは、当該地域全域で避難を模索するリスクに直面している。

マレーシアとタイが新型コロナウイルス感染症の大流行をいいわけに、不法に受け入れを拒否したロヒンギャ難民たちは、数週間または数カ月間にわたって海上に立ち往生しており、死者も出ていると懸念されているが、ボートがいくつも姿を消した。マレーシアは上陸したロヒンギャ難民の身柄を拘束。国連難民機関へのアクセスも認めず、一部を不法入国で訴追した。 バングラデシュは誓約したにもかかわらず、海上で救助され、現在安全とはいえない沈泥島ブハシャンチャールに隔離されている300人超のロヒンギャ難民の支援を国連関係者に許可していない。

ミャンマーにおける人権への重大な脅威

ミャンマーはロヒンギャ・ムスリムに対する広範な人権侵害の根本原因に対処することに失敗し、安全かつ品位を保った自発的帰還のために必要な条件を拒否した。難民のアブドゥル・ハミド氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「何千人もの人びとが殺されるのを目撃しました。トゥーラトリの川には死体が浮かんでいましたが、それに対する法の裁きはありませんでした」と訴えた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いた難民たちは一様に、ひとたび安全が確保されればミャンマーに帰還したいと語る。求めているのは市民権の獲得と移動の自由、軍の残虐行為に対する説明責任だ。「祖国に戻って、土地や家畜がどうなっているか確認したいと心から願っていますが、法の裁きが下されない限り、帰還は不可能だと感じています」と難民の1人であるシェル・ハツ氏は言った。

2019年9月、ミャンマーに関する国連事実調査団は、同国に残っている60万人のロヒンギャ・ムスリムが「これまで以上にジェノサイドの脅威に直面する可能性」について報告した。

ラカイン州のロヒンギャ・ムスリムは、はなはなだしくひどい状況に陥っている。避難民キャンプ内や村々を自由に移動できず、十分な食糧、医療、教育、および生計へのアクセスを遮断されている。1982年施行のビルマ市民権法のもと市民権をはく奪され、事実上の無国籍状態であり、進行中の人権侵害に対して非常にぜい弱だ。

1月に国際司法裁判所は、ミャンマーはラカイン州のロヒンギャ・ムスリムをジェノサイドから守り、犯罪証拠を保存する措置を講じる法的義務を負っていると、全会一致で判断した。 しかしながらミャンマー政府は、裁判所命令に従うための具体的な行動を取らずにいる

ロヒンギャ・ムスリムが帰還するための命令および準備の遵守を示すために、ミャンマー政府は国際的な基準に沿って市民権法を改正すべきだ。当局は移動の自由に対する規制をただちに解除し、差別的な規制と各地方令を廃止する必要がある。加えて、恣意的な道路封鎖や組織的な恐喝行為など、移動や生計を規制するすべての公式・非公式な慣行を停止しなければならない。

政府はラカイン州の8つの郡区とチン州の1つの郡区でモバイルインターネット通信に規制を設けており、これが人道支援をさらに困難にしたり、住民から情報へのアクセス機会を奪っている。また、国連機関や人道支援団体に対し、ラカイン州への無制限かつ持続的なアクセスも認めておらず、助けを必要としている少数派民族の負担が重くなっている。

バングラデシュ政府はこれまで公式の本国送還を試みたが、ロヒンギャ難民たちが帰還後の迫害と人権侵害を恐れてそれを望まず、これに失敗している。国連難民高等弁務官事務所は、ラカイン州の状況をロヒンギャ難民の自主的かつ安全かつ品位を保てる帰還には適してないとしている。

難民のサデク・ホッセン氏は、「ミャンマーに戻りたいのはやまやまですが、それは人権が保障されてこそです」と訴える。「私たちが経験した拷問が二度と起こらないと確信できなければ、家に帰ることはできません。」

バングラデシュで悪化する環境

バングラデシュが、残虐行為から逃れてきたロヒンギャ難民のために国境を開いたのは特筆すべきことだが、この1年間に政府が行った政策の数々は難民たちを重大なリスクと人権侵害にさらした。

バングラデシュ政府は、ほぼ1年前、「ロヒンギャのジェノサイド啓発デー」を記念したクタプロング難民キャンプでの平和的なデモ活動に反応し、すべての難民キャンプでインターネットを遮断、携帯電話事業者に対してロヒンギャ難民へのSIMカード販売を中止するよう指示したうえ、 難民から何千枚ものSIMカードを没収した

国連は、新型コロナウイルス感染症が大流行している間は、各国政府に「インターネットの遮断を控える」よう要請したが、バングラデシュ政府は、難民キャンプでのこうした通信の許可を拒否した。人道支援関係者は、これにより緊急医療サービスやウイルスに関するタイムリーかつ正確な情報の提供、難民キャンプ内での集団感染を防ぐための重要な対策の迅速な調整が著しく妨げられていると証言する。

インターネットの遮断は、難民が情報を入手し、ミャンマーにいる親族や友人など、キャンプ外とコミュニケーションをとる力にも悪影響を及ぼしている。この広範なコミュニケーション規制は、国際人権法が義務づけるような必要性および適性がない。

新型コロナウイルス感染症の大流行中に、バングラデシュ政府は難民キャンプでの人道支援サービスを厳しく制限。家庭内暴力の増加が報告されているにもかかわらず、ジェンダーに基づく暴力のサバイバーのためのものを含むすべての保護措置を停止した。インターネットがなければ、人道支援団体職員はリモートで支援サービスを提供することさえできない。

バングラデシュ軍は、国連やその他の人道機関の反対にもかかわらず、難民キャンプの周囲に有刺鉄線をはりめぐらせ、監視塔の建設を開始した。これは移動の自由の侵害だ。難民はフェンスのために必要不可欠な支援サービスを受けられなかったり、緊急の場合に逃げることができないこと、そして他キャンプの親族に連絡できなくなることを懸念している。

コックスバザール県にある難民キャンプの人びとは、離島ブハシャンチャールの難民キャンプにいる親族たちが移動の自由を奪われ、十分な食糧や医療どころか、安全な生活飲料水の深刻な不足に直面していると語った。島の当局によって暴力や虐待を受けたと訴える人びともいる。誰一人として強制的に同島へ再定住させることはないという政府高官の公約にもかかわらず、実際には、同島の難民たちをコックスバザール県の家族の元に戻すことを認めていないのだ。

当局は、難民が雨季の土砂崩れや洪水から身を守るために、コックスバザール県の難民キャンプに常設の施設を建設することも許可していない。また、この3年間に、45万人超の子どもがキャンプ内で基本的な教育へのアクセスを拒否された

ドナー各国政府はバングラデシュに対し、ブハシャンチャールからの移動を難民に許可するよう強く働きかけたうえで、関係当局が同国全土の難民キャンプで実質的な保護を提供できるよう支援しなくてはならない。

アダムズ局長は、「3年前、バングラデシュはロヒンギャ難民に安全な避難場所を提供した。しかし政府は現在、難民キャンプでの生活を耐え難くすることで、実際は安全な行く先などないのに、人びとがどこかへ立ち去らなければと感じるよう仕向けているようにみえる」と指摘する。「関係各国政府は、難民がついに帰還できるような必要条件を満たさないでいるミャンマーに対し、的確な制裁措置を発動する一方で、バングラデシュの難民支援を強化すべきだ。」

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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