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(オスロ) - 37ヶ国が2015年5月29日、国際的な「学校保護宣言」に調印した。これは各国に教育を武力攻撃から保護するための真剣な取り組みを求めるものだ。紛争下では、学校や大学、児童・生徒や学生、教職員に対する攻撃が広く行われているほか、軍や武装勢力が学校・大学施設を利用することが多いことなどから、万単位の子どもたちが教育の機会を奪われている。「教育の機会の否定の結果、個人とコミュニティに計り知れないダメージが及んでいる」と「教育を攻撃から守る世界連合」(GCPEA)は指摘している。

この「学校保護宣言」は、2012年から始まったプロセスの成果として、ノルウェー外相が主催したオスロでの会合で採択された。このプロセスは「教育を攻撃から守る世界連合」が着手し、2014年からはノルウェー、アルゼンチン両国政府が主導してきた。

ディヤ・ニジョ-ネ(Diya Nijhowne)GCPEA代表は「教育を標的とする攻撃は、ある世代の人びとが潜在的な力を発揮する機会を奪い、長期間にわたり社会に甚大なコストをもたらす」と指摘。「今回の『学校保護宣言』を採択した各国は、紛争下で学ぶ子どもたちを守るとともに、その教育機会を保護するために具体的な行動を取ると約束した。」

この宣言に加わることで、各国は最近策定された「武装紛争下で学校や大学を軍事目的使用から守るためのガイドライン」を支持し、このガイドラインを使うことにも同意した。このガイドラインは軍・武装組織に対し、教育施設を使用せず、攻撃目標ともしないよう求めるものだ。また宣言は各国に対し、教育への攻撃による犠牲者のデータをとり、被害者を支援し、紛争下での教育継続を促す人道的な事業を支援することを義務づけている。

政府軍や武装組織が、学校や大学を基地や兵舎、武器庫、訓練場、収容施設などに用いると、そこで学ぶ子どもたちが追い出されることはもちろん、こうした施設が軍事目標になる恐れもあると、GCPEAは指摘する。武装組織は、学校の軍事使用がもたらす短期的、長期的コストを認識していない場合が多い。各国政府は新たに定められたこのガイドラインを用いて、自国の子どもと教育システム、そして最終的には自国の社会を守るためによりよい措置をとることができる。

このガイドラインは、政府軍と非国家武装組織の双方への適用を念頭に置いている。このガイドラインは2014年11月、14ヶ国の35の非国家武装組織の代表が参加した会議でも提案された。会議の主催者の「ジュネーブ・コール」は、非国家武装組織に国際人道規範の遵守を求める団体だ。会議閉幕時に採択された宣言で、非国家武装組織側はガイドラインへの対応を考慮するとともに、学ぶ人とそこでの教育を保護する取り組みをめぐり、非国家武装組織がステイクホルダーの1つと認識されていることに感謝を述べた。

GEPEAによる最近の調査により、学校と大学が政府軍や非国家武装組織によって軍事目的に利用された事例が2005年以降26ヶ国で明らかになった。この期間武力紛争が起きた国の大半で学校の軍事利用が行われたことになる。以前の調査結果「攻撃される学校 2014年版」では、2009年から2013年の間に、世界30ヶ国で教育に対する組織的な攻撃が行われていることが明らかになっていた。

オスロの調印式には、マララ・ユスフザイ氏の父で娘の教師でもあり、現在はグローバル教育に関する国連特別アドバイザーもつとめるジアウディン・ユスフザイ氏も参加した。マララ氏は、パキスタン人の女子学生で教育の権利を訴えていたさなかにパキスタン・タリバン運動に銃撃され、その後ノーベル平和賞を受賞した。ジアウディン氏は、暴力がもたらす絶望を教育がはぐくむ希望で乗り越えようとする取り組みだとして、会議参加国の態度を賞賛した。

「学校保護宣言」を採択した各国政府は、採択は教育の保護を強化するプロセスの始まりであるとして、定期的な進捗状況のレビュー会合を開催すると約束した。また今回の宣言には未署名国が後から参加することもできる、としている。

「ガイドラインには柔軟性があるが、一部の国は自国の軍隊が制約を受けることを懸念している」と、前出のニジョーネ代表は述べた。「だが『学校保護宣言』を採択した国々は、教育の保護は何より優先されるべきであり、言葉を行動に変える取り組みがまさにここから始まることを明確に示した。」

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