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米国:大手たばこ製造会社が16歳未満の雇用を禁止

アルトリア・グループが独自の児童労働をめぐる会社方針を改善

(ニューヨーク)— 米国の大手たばこ製造会社アルトリア・グループが、自社のサプライ・チェーンに属するたばこ農場における16歳未満の雇用を禁じた。これは、米国内のたばこ農場で就労する子どもに、新たな保護の手を差し伸べる判断だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

米最大手のたばこ製造会社フィリップ・モリス・USAを含む、米たばこ製造会社3社の親会社アルトリア・グリープは12月11日、2015年から新しい児童労働基準を導入すると発表。これまでは米労働法の保護規制に従っていた。同法のもと農場側は、その規模にかかわらず、わずか12歳の子どもでも学校の課外時間に雇うことができる。労働時間に上限はなく、小規模農園での就労については最低年齢の制限もない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ子どもの権利局調査員のマーガレット・ワースは、「アルトリア・グリープは、たばこ農場における危険からまだ幼い子どもたちを保護すべく、重要な前進を果たした」と述べる。「ニコチン暴露ほか深刻な健康および安全への脅威から、すべての子どもを保護すべく、児童労働をめぐる会社方針を改善していくことが引き続き求められる。」

2014年5月にヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した報告書により、米国内のたばこ農場で働く子どもたちは、ニコチンや有害危険な農薬、炎天下の直射日光ほかにさらされていることが明らかになった。聞き取り調査に応じた子どもの大半は、作業中の嘔吐や吐き気、頭痛、めまいなどを訴えており、これらは急性ニコチン中毒と一致する症状だ。

アルトリア・グループはまた、たばこ農場における18歳未満の雇用に際しては、保護者の同意を義務づけた。ただ、児童労働基準をめぐるこれらふたつの改革は、身内の農場ではたらく子どもには適用されない。

新方針は2015年から、同グループが葉たばこを直接買いつけているすべてのたばこ農家に、契約の一環として義務づけられる。

R.J.レイノルズ社の親会社であるレイノルズ・アメリカンは米国業界2位の大手で、アルテリア・グループの競合相手のひとつ。だが、同社は児童労働に関する企業方針を導入していない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アルテリア・グループとレイノルズ・アメリカンを含む世界最大手のたばこ製造会社10社に対し、自社のグロバール・サプライ・チェーンに属する農場での有害危険な労働(葉たばこへの直接接触を伴うすべての作業を含む)から、18歳未満のすべての子どもをまもるべく、児童労働をめぐる方針を強化するよう働きかけている

アルテリア・グループはすでに、米国内法および規制が定義するところの有害危険な労働を18歳未満の労働者に対して禁じている。しかしながら米国の諸規制には、葉たばこを取り扱う危険から子どもを保護する条項が欠けているのだ。

フィリップ・モリス・インターナショナルなど、世界最大手のたばこ製造会社のうちの一部は、米国の規制枠組みの大半に比べてもより厳しい保護基準を有害危険な仕事に対して設けている。しかし、求められているのは業界全体に適用される明確で一貫した基準である。現在の国際基準は、どういった作業を有害危険とするかについては、各国の規制にその定義を委ねている。が、各国のこうした規制はしばしば不十分で、子どもを危険にさらすものであることが多い。

12月10日、アルテリア・グループなど世界大手のたばこ製造会社をメンバーに擁する「たばこ生産における児童労働廃絶財団—the Eliminating Child Labor in Tobacco Growing (ECLT) Foundation」が、国際労働法に従って各社のサプライ・チェーンにおける児童労働を廃絶するという誓約を発表した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米議会とオバマ政権にも、国内法および規制を強化して、たばこ農場の有害危険な労働から子どもを保護するよう強く求めている。

前出のワース調査員は次のように指摘する。「近ごろたばこ産業ではより高い基準が導入されつつある。とはいえどの会社の方針も、たばこ農場の有害危険な労働から子どもたちをまもるのに十分とはいえない。」

 

 

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