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国際刑事裁判所:政府首脳の訴追免除にNOを

年次会合では責任追及と独立性というICCの基本原則を再確認すべき

(ハーグ)-国際刑事裁判所(以下ICC)締約国は、政府首脳に訴追免除の特権を与えんとする動きを拒絶すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2013年11月20日にハーグで始まる年次会合には、122の締約国が出席する見込みだ。

アフリカ連合(AU)の要請に基づき、国家元首に対する訴追と国家の平和・安定の関係を、会合の特別作業部会が議論することになっている。今年10月にアフリカ連合は、ICCにおける現役政府首脳の訴追免除を要請、同時にケニアのウフル・ケニヤッタ大統領とウィリアム・ルト副大統領に関する裁判手続きの延期を求めた。しかし、必要な票は集まらず、国連安全保障理事会では11月14日、延期を求める要請は認められなかった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際司法上級顧問のエリザベス・イベンソンは、「ICC締約国は、アカウンタビリティ(責任追及)と司法の独立性という基本原則を堅持すべきだ」と述べる。「国連安保理がケニア裁判延期を否決したことは正しい。現役の政府首脳に訴追免除の特権を付与すれば、権力固執へのよこしまな動機となりかねない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは11月13日にICC締約国に向けた報告書を発表したが、その内でICCの使命(マンデイト)に対し締約国が支持をいっそう強化するよう求めた。 

ローマ規程(国際刑事裁判所条約)は第27条「公的資格の無関係(Irrelevance of official capacity)」で、何人も法を超越しないという基本原則にのっとり、現役の政府関係者を「公的資格に基づくいかなる区別もなく」訴追できる、と明確にしている。ケニア政府は、「現役の国家元首とその代理、またはそうした職務を遂行する個人あるいはそうした権限を有している個人を、その任期中」第27条の適用から除外するという改正案を提出した。しかし提出時期が遅すぎたという理由から、今回の年次会合で正式に審議されることはない。

ケニヤッタ大統領をはじめとする一部のアフリカ諸国元首は、ICCによる現行捜査8件すべてがアフリカ関連であることを理由に、ICCを「西洋帝国主義の手先」として非難しようとしてきた。しかし、それらのうち5件はアフリカの政府自体が捜査を要請したものであり、2件は安保理が付託したものだ。ただ一方で、国際的な法による裁きが二重基準にさらされていることも事実だ。原因には、いくつかの有力国がICCに加盟していないこと、安保理の付託が一貫していないことなどが挙げられる。

来たる年次会合で締約国は、ローマ規程の批准国を増やすという2006年に合意した計画の実行に向け、更なる努力をする決意を新たにすべきだ。また、アフリカ諸国のICCとの関わりをもっと促進すべきだろう。具体的には、アフリカ諸国首都での会合開催や、エチオピア首都アディスアベバ(アフリカ連合所在地)への事務所設置などを実行すべきだ。

今回の会合では、初めて被害者に関する議論が中心に据えられることになっている。ローマ規程により被害者は、自らの見解を裁判官に伝え、補償を求める権利が認められているが、ICCはこの権利をしっかり実現できず苦戦を強いられてきた。締約国は、ICCが被害者保護を強化する方法を検討するため、今回の被害者をめぐる締約国会合での議論の機会を活用すべきだ。

締約国はまた、被害者のための「法の裁き」実現がもたらす建設的な変化に向けた可能性にも光をあてるべく会議を活用すべきだろう。現にICCの働きは、アフリカ人被害者に「法の裁き」をもたらす一助となっている。アフリカのNGOは、大量虐殺や大規模レイプの被害者にとって、ICCは最後の砦となる極めて重要な裁判所であるとして、ICCへの支持を強めるよう、自国政府に繰り返し求めてきた

また会合では、被告の物理的な出廷に関する「手続きおよび証拠の規則」改正のため、数々の提案を検討すると見込まれている。この問題は、ここ数カ月の間に多大な注目を集めていた。アフリカ連合はケニヤッタ大統領に、同連合が抱く懸念が対処されるまで出廷しないよう求めた。ICC上訴裁判部は10月、被告が裁判に欠席することが認められるのは例外的であり、最後の手段として限られた期間しか認められないとの判断を維持した。

締約国はいかなる規則の改正も、ローマ規程とICCの判断に沿って行なわなくてはならない。ビデオ会議技術の活用や、現役の政府首脳のために特別規則を設けることの是非も、そうした観点から検討されるべきだ。

前出のイベンソン上級顧問は、「ICCの役割に関する国際的議論は年次会合の根幹ではあるが、議論の結果、基本原則をまげて妥協するようなことがあってはならない」と指摘する。「締約国に求められるのは、ICCがその使命をより完全に果たすことができるよう、その支援に最善を尽くす姿勢である。」

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