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ビルマ:中国主導の石油・ガス開発事業への反対デモで逮捕者相次ぐ

反対派への告訴取り下げと集会関連法の改正を

 

(バンコク)- ビルマ当局は、中国主導の石油・天然ガス開発事業への非暴力デモに参加したアラカン民族の活動家への起訴を取り下げるべきだ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。2013年5月13日、活動家10人が刑事裁判で出廷する。容疑はビルマ西部アラカン州のマデイ島で2013年4月18日に無許可で非暴力デモを行ったことだ。

昨年1年間、ビルマ当局は土地の権利を擁護する活動家、鉱山開発反対運動の活動家、国内紛争地域での暴力終結を訴える非暴力デモの参加者を逮捕・起訴している。2011年の「平和的集会と平和的行進に関する法」の許可条件に従っていないことが根拠とされるが、こうした法的規定は国際人権基準に反するものだ。

「非暴力デモの参加者が、基本権の行使を理由に懲役刑になるようなことがあってはならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「非暴力抗議行動の参加者を投獄することで、ビルマ政府は新たな種類の政治囚を生み出している。真に改革を目指す指導者なら、国による開発計画に非暴力的な手段で反対する人々が起訴される事態を看過することはないはずだ。」

マデイ島での抗議行動には、ビルマ沖合のシュエ・ガス田での天然ガス採掘と大水深港整備、アラカン州・中国雲南省間の石油・天然ガス陸上パイプライン建設という巨大事業に異議を唱え、要求に答えるよう求めるアラカン民族の地元住民数百人が参加した。今年開始予定のこのプロジェクトは自分たちにとってほとんど利益のないもので、負担ばかりが押しつけられると訴えている。警察はデモ隊10人を平和的集会法第18条違反で逮捕した。同法ではデモを許可制と定めている。

現地消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、主催者側は2度デモ申請を行ったが許可されなかったと述べた。当局は申請者側に対し、マデイ島には非常事態が布告されており申請は却下すると言い渡していた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書『あとは祈るだけ』が示すように、ビルマ政府にはアラカン州での人道に反する罪と、ムスリム・ロヒンギャに対する「民族浄化」の責任もあることが指摘されている。ただしヒューマン・ライツ・ウォッチの調べでは、マデイ島ではアラカン民族とロヒンギャ民族の間に暴力的衝突は起きていない。

「アラカン民族は歴代ビルマ政府から長年人権侵害を受けており、政府への不信感がかなり強い」とロバートソンは述べた。「非暴力デモ参加者への政府の弾圧は、問題を深刻化させるだけだ。」

平和的集会違反として逮捕された10人の氏名は以下の通り(敬称略)。ユワマ村のトゥンチー(33)、アウンテイントゥン(44)、トゥンキンヌー(36)、プレイン村のマウンマウンマウンスン(32)、マウンマウンソー(30)、チャウタン村のマウンマウンミン(36)、マウンインフラ(38)、マウンミョーナイン(32)、パンテインセイ村のティンウーチョウ(40)。

逮捕された活動家は、土地の接収、石油・天然ガス採掘・生産に関わる環境面でのリスクのほか、シュエ・ガス田開発プロジェクト本体と、陸上・沿岸部での関連開発事業に関するその他の懸念を述べていた。主催者側は5月2日に声明を発表し、事業者と国営ミャンマー石油ガス公社(MOGE)に対して12項目の要求を提示し、これらの要求に応じるまで事業を行わないよう求めた。掲げられた要求は3つの地域団体(CBO)が一帯の17村の住民との行った懇談でまとめられたもので、約2万人分の意見にあたる。

伝えられるところによれば、マデイ島の住民だけでなく、中国向けパイプライン建設地周辺全域が建設事業によって土地を失っているものの、補償は不十分か一切ないため、国内で2番目に貧しい同州では今後の生計を憂慮する声がある。同島民の大半は農業と漁業で暮らしを立てており、本プロジェクトに関わる環境破壊の恐れがあることに懸念を表明している。

アラカン民族現地消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ガス田開発事業の悪影響をまともに受けるだけでメリットは皆無だ――ガスの消費者は中国雲南省の住民なのだから――と述べた。シットウェー在住のアラカン民族のあるお年寄りは2012年6月にヒューマン・ライツ・ウォッチに「生産された天然ガスは中国に行くことになっている。しかしここに電気が来ているのか? 開発が進んでいるか? そこが問題なのだ」と話した。

シュエ・ガス田開発と陸上パイプライン建設計画には、長年国内外の抗議の対象となってきた。中国・韓国・インド・ビルマ各国の企業からなるコンソーシアムが、沖合での天然ガス開発事業を行うが、パイプライン自体の敷設は別立てだ。パイプラインは中国とビルマの企業が建設している。このパイプラインはビルマ国内の4つの管区と州を通過する。ビルマ軍とカチン独立軍(KIA)の戦闘が続くシャン州もルート内だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2011年に、シャン州北部のパイプライン建設地域付近で作戦行動中のビルマ国軍部隊による、住民の強制移動と拷問などの人権侵害事例を記録している。2013年5月9日に、同州ナムカム付近でビルマ国軍とシャン州軍-南部方面軍(SSA-South)との戦闘が発生し、多数の住民が土地を離れることを余儀なくされた。伝えられるところでは中国側に移動したという。

ビルマ国内各地で、各種の政策や政府の事業に非暴力的な手段で抗議したとして、活動家が起訴されている。2012年9月以降、当局はラングーンとサガイン両管区でデモ申請を恣意的に却下し、サガイン管区モンユワ近郊の鉱山開発計画反対運動を激しく弾圧している。また平和的集会法を根拠に活動家13人が、ビルマ政府とKIAが現在も行っている武力紛争に反対する非暴力デモに参加したとして逮捕された。

「政府主導の開発事業への反対運動を押さえ込む政府のやり方には、はっきりした決まりがある」とロバートソンは述べた。「ドナー側は、企業の社会的責任というレトリックをただ振り回すのではなく、ビルマでは生活手段や土地に重大な影響を及ぼす開発事業に対し、人々が非暴力的な手段で反対するとき、弾圧に国内法が用いられていることを認識すべきだ。」

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