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ビルマ:非暴力デモの主催者が逮捕・立件

日本と西洋諸国は政府に基本的自由の尊重を求めよ

(ニューヨーク)- ビルマ政府は、「国際平和デー」にあたる2012年9月21日にラングーン(ヤンゴン)で行われた非暴力デモ参加者の起訴を止めるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。活動家13人が、カチン州などビルマ各地で約1,000人が参加したデモを主催したとして、2011年の集会法違反で起訴される可能性がある。政府はデモに参加したカチン民族2人を複数の裁判所ですでに起訴した。

「ビルマ政府が過去の軍事政権と同様の振る舞いを見せ、非暴力デモの参加者を逮捕・起訴するのであれば、改革政権という評価をただちに失うことになる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「非暴力デモの主催者への起訴は、ただちに取り下げられるべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、ビルマ政府は長年にわたりデモや抗議活動、5人以上の集会を禁止する法律を使って、非暴力抗議活動の参加者を逮捕・拘束・起訴してきた。今回の起訴は、テインセイン大統領が2011年12月2日に署名した「平和的集会と平和的行進に関する法律」の運用を占う機会だ。同法の成立には複数の西洋諸国が高い評価を与えていた。

2012年9月17日、20以上の民間団体によるネットワーク「平和ネットワーク」の代表13人が、スーレー・パゴダからインヤー湖までデモを行うため、ラングーン市の各区で集会許可を申請した。主催者側はスローガンの内容と抗議行動で使う素材を2011年集会法に従って当局に提出した。プラカードの1つには「内戦停止」もあった。当局は9月18日と19日にかけて、デモ申請を却下した。理由として今回の行動が交通の混乱を招き、人びとに脅威をもたらし、暴力事件を起こす可能性があると述べた。

主催者側はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、表現の自由と集会の自由があるので、申請は却下されたけれども、企画はそのまま実施すると警察に通告したと述べた。9月19日の夕方から9月20日午前にかけて、当局は主催者のうち4人の自宅を訪れて、身柄を拘束しようとしたものの失敗した。

9月20日の集会では、デモ隊はラングーン市内を平和行進し、平和を求める歌をうたい、黙祷を行い、インヤー湖で小さな平和祈念碑を建てた。デモ解散後、公安の私服刑事の一団がタクシーに乗った複数の主催者を逮捕しようとした。主催者の一人は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対してこう述べた。「仲間の一人が街頭で叫んだ。『あいつらは我々を逮捕しようとしている。我々は非暴力デモの参加者だ』。すると公安は行動を止めた。」

新集会法は、平和的な集会を開催する権利を表面上認めてはいるものの、国家を中傷するなどの「虚偽の情報」を含む発言を行うことや、「恐怖や騒乱を生じさせるか、道をふさぎ、自動車や人びとの往来を妨害する」あらゆる行為を刑事訴追の対象とする条項が存在している。世界人権宣言に反映されている国際人権法では、表現の自由や平和的な集会を行う権利が保護されている。国際法はまた、基本的自由に対する法的制約は、明確かつ厳格に規定され、厳密な必要性に基づき、自由の制限による利益と損害とが比例的なものでなければならない。新集会法は、集会の自由に対する権利を、当局が完全に裁量可能な、漠然とした広範な規制に委ねていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

9月20日の夕方、ラングーン警察のミントウェ警視は記者会見を行い、政府は平和的集会法第18条違反でデモ参加者を起訴すると述べた。この条項は、デモ主催者に対し、公的な集会とデモを行う際には許可を受けることを義務づけるものだ。有罪になると最大1年の懲役と3万チャット(約2800円)の罰金を科せられる。

9月22日から23日にかけて、法の定める申請書に詳しい個人情報を記載し、当局に提出していた主催者13人のもとに、2人の「保証人」と共にラングーン警察署に出頭するようにとの召喚状が届いた。主催者と保証人は、立件された場合には裁判所に出廷すること、また出廷しない場合は100万チャット(約9万3千円)の罰金を払うとの宣誓書に署名させられた。

9月28日、ラングーンのダゴン区裁判所は「カチン平和ネットワーク」としてデモを主催した、ジョーグン氏とメイサペーピュー氏の2人に出頭を命じた。裁判所側は平和的集会法違反による2人の起訴を受理し、10月10日に審理を行うと通告し、本人に誓約を行わせて帰宅させた。サンチャウン区裁判所も両氏を10月1日に出頭させた。2人以外の主催者11人にも起訴の可能性があるが、実際に行われるかは依然不明だ。もし各人がデモで通過した10区すべてで起訴されれば、最大で懲役10年が宣告される。

「平和的な活動を行う人びとを起訴する意図は、反政府デモの萎縮にあると思われる」と、前出のロバートソンは述べた。「ビルマにではいまだ数百人の政治囚が獄中にある。これ以上その数を増やす理由はない。」

9月17日のラングーン市内でのデモに先立ち、「平和ネットワーク」の構成団体である「カチン平和ネットワーク」の代表者らは、ラングーン市から首都ネピドーまでのバス移動許可を申請した。9月21日にカチン州の平和を求める平和行進を行うためだ。申請は却下され、異議への回答はなかった。9月21日朝、ラングーン警察は同ネットワークがチャーターしたバス5台をその場から動かさないよう命じ、実質的にネピドーへの移動を阻止した。この時点で同ネットワークの約120人がラングーンでの行動に加わっていた。警察当局は平和的集会法第18条違反で同ネットワークを逮捕すると脅迫し、ラングーンでの平和行進への参加を阻止しようとした。集まった人びとは最終的により大きな別の団体の隊列に参加した。ネピドー行動の主催者のうち2人は起訴される13人に含まれている。

「テインセイン大統領は、政権が非暴力デモを歓迎する方針を明らかにし、人権改革への真摯な姿勢を示すべきである」と、ロバートソンは述べた。「日本、米国やEUのようなビルマ政府の新しい友人たちは、ビルマ政府に対して基本的自由を尊重するよう求めるべきだ。今回の事例は、ビルマ政府はもちろん、国際社会にとってもテストケースである。」 

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