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中国:外国人ジャーナリストに対する公安の襲撃 捜査が必要

報道の自由を認める法令を無視した暴行と脅迫

(ニューヨーク)-「北京の繁華街で、十数人の外国人記者たちが制服姿の中国警察や平服の暴漢により暴行や脅迫を受けた。中国政府は、この事件をただちに捜査するべきだ。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。「この事件の徹底的な捜査が行われなければ、報道関係者に暴行を加えても刑事訴追しない慣習を生んでしまう。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・アドボカシー局長ソフィー・リチャードソンは「公共の場所で起きている事件を報道する外国人記者に対し、警察が攻撃を加えるなど、断じて容認できない」と述べる。「中国政府は、この事件を捜査して加害者の法的責任を追及し、報道の自由に関して時代を逆行させはしないとはっきりさせる必要がある。」

2011年2月27日、外国報道機関は、非暴力の平和的集会を呼び掛ける匿名の呼びかけでデモの場所に指定された北京の王府井に向かった。外国人記者たちが暴行を受けたのは、警察が警告なしに取材機器を取り上げようとした際や、現場から力ずくで記者を退去させようとしたとき。つまり、警察は、抵抗した記者に対して暴力で応酬したのである。

ここ数週間、ソーシャル・ネットワークのなかで、13の都市を指定し、毎週日曜日の午後2時にいわゆる「ジャスミン革命」を求める抗議集会を行おう、とする匿名のメッセージが出回っている。この呼びかけに対し、中国の外務省は、集会が予定されていた次週の日曜日2月27日を前に、外国のメディアを呼び出して、いかなる抗議集会の報道についても「報道の法令を遵守すること」と警告した。中国国内における外国人特派員の活動は2008年10月規則に規定されている。本規則で中国政府は、外国人特派員に対して基本的な報道の自由を認めている。本規則は、取材対象の同意さえあれば政府の許可がなくとも取材を行う自由があるとしており、外国人記者に対する中国国内での永続的な自由の基準となっている。

ところが、2011年2月26日、外務省は、北京の特派員の一部に連絡し、同日の英字紙チャイナ・デイリーに掲載された指令を読むよう指示。北京市情報局が出したその指令は、「ジャーナリストは北京における取材に先立ち、関連する法令や規則に基づき、承認申請をすること」としていた。この北京市の指令は、中国における外国報道機関の活動について定める政府の規則に違反する。地方公共団体が恣意的に国家の法令を覆すことができると表明している関係当局は存在しない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「デモの開催予定の場所での外国人記者の取材の妨害は、表現の自由及び情報の自由を不当に侵害するものである」と指摘した。

外国人記者が2月27日に王府井に到着した際、既に制服姿の警察官数百人と警察車両数十台が厳重警戒を行っていた。中国の外国人記者クラブ(FCCC)が2月27日に出した声明によれば、現場にいたカメラマンが「平服姿の治安要員らに襲撃され、繰り返し顔面を殴られ蹴られるという暴行を受け」、カメラも没収された。その記者は、重度の打撲および内臓損傷の疑いにより治療を余儀なくされた。外国人記者クラブは、「そのほかにも現場に居合わせた十数人の外国人記者が、制服の警察官とその他の暴漢に掴まれ、押され、拘束され、現場に行くのを妨害された」としている。ブルームバーグ、BBC、CNN、ドイツのARDテレビなどのジャーナリストらがこうした暴行を受けた。

「警察の外国人ジャーナリストに対する反応は、以前の悪しき時代を彷彿とさせるものであり、北京繁華街で報道機関を攻撃・妨害したことは看過できない」と前出のリチャードソンは語る。「多くの中国人記者たちが、恐怖と暴力に日常的にさらされている。中国政府は、こうした中国国内のジャーナリストに対する統制を、さらには外国メディアにまで広げたいと欲しているわけだ。」

中国外務省の姜瑜副報道局長は1日の火曜日定例会見で、2月27日の外国特派員への暴行事件に対する抗議を認めず、「適切に対応した」と発言。外国特派員はごった返した「公共の場所に集まりうろついていた」として、暴力を受けた原因は外国メディア自身にあると言わんばかりであった。そして、王府井で襲撃されたブルームバーグの記者が警察に提出した被害届けに関しては、当局が捜査するだろうと返答した。しかし警察が実際にこの事件の捜査を開始していることを示す動きは未だにない。過去にも、外国人特派員への妨害や暴力事件を捜査すると中国政府が約束したことはあったが、報道機関への報告や政府による訴追が行われた件はない。

また、姜瑜副報道局長は外国人記者の活動を規定するルールに変更はない、とも主張。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が3月1日付けで報じたところによると、警察は、上海と北京に関して同日、抗議集会の場所に指定された場所は「立ち入り禁止」だと記者たちに通知したとのことである。これまで、外国人記者が、独自取材を特に禁止されていたのはチベット地域だけだった。

外国人記者の報道の自由を定める2008年10月規則の存在にもかかわらず、外国メディアは、中国の大都市中心部以外の場所では、政府関係者、公安当局などから妨害や脅迫を受ける事件がいまだに頻発している。「そんな規則の存在など知らない」と言って外国人記者を敵視する関係者たちから暴行・脅迫されることもある。しかし、北京や上海などの中国の主要都市では、外国人記者に対する暴力はまれになっていた。よって、2月27日の暴力事件及びそれを問題視しない中国外務省の姿勢は、憂慮すべき新たな展開と言える。

「中国政府は、現存の法令をしっかり適用する義務がある。無視するのではなく。」と前出のリチャードソンは主張する。「中国政府が捜査の義務をしっかり果たしたといえるためには、中国政府は適切な捜査を行うとともに、関係した警察に司法の場で責任を問うとともに、外国人記者に関する規則をしっかり守る必要がある。」

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