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ビルマ軍政が米国籍のビルマ人活動家を釈放

2,100人以上の政治囚全員の総選挙前の釈放を

(ニューヨーク) ビルマ軍事政権(国家平和発展評議会=SPDC)は本日3月18日、投獄されていた米市民ニーニーアウン氏を釈放したが、これに続いてビルマに存在する2,100人以上の政治囚の即時無条件釈放を行うべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンは「ニーニーアウン氏の釈放は歓迎される出来事だが、これをビルマ軍政幹部による譲歩や、規制の緩和、態度の軟化として理解すべきではない」と述べる。「ニーニーアウン氏への処遇は、選挙前に有利に事を運ぶための切り札として政治囚を利用する、ビルマ軍政のいつものやり方の一環でしかない。」

ニーニーアウン(別名チョーゾールウィン)氏は今年2月に、不公正な裁判により、偽りの容疑で3年の刑を宣告されていた。

チョーゾールウィン氏は、ビルマ政治囚の釈放を求めるキャンペーン活動に関わっていた。なお彼の母と2人のいとこは現在も収監中だ。氏は2009年9月3日、この家族3人に面会するため、有効なビザを使ってビルマに入国しようとしたところ、ラングーン国際空港で逮捕された。氏は当初、国家安全保障関連法に違反した容疑とされた。しかしその後、米国旅券の所持者であるにもかかわらず、偽造したビルマの国民登録証を所持したとの容疑を掛けられ、さらに入管法違反でも起訴された。氏はまた税関検査時に外貨所持を申告しなかった容疑も問われているが、そもそも当局は、氏が税関窓口を通過するより前に身柄を拘束している。氏は拘束中に拷問と虐待を受けており、一時はハンガーストライキも行った。氏が釈放された理由は明らかにされていない。ビルマ当局は氏を釈放後直ちにタイへ強制出国させた。

「ニーニーアウン氏はそもそも投獄されるべきではなかった」と前出のピアソンは述べる。「氏の釈放によって、ビルマに対して国際社会が一致して強くはたらきかけることの有効性が示された。」

昨年ビルマ軍政によって少なくとも271人の政治活動家が逮捕され、推計2,195人の政治囚の列に加わった。また同期間中に約267人が釈放された。昨年10月からこれまでに44人の活動家が長期刑を宣告された。大半の刑期は5~52年だ。

ビルマでは2010年に総選挙が予定されている。軍政が3月10日に公表した選挙法には、政治囚が政党に属することを禁じる規定がある。同法は政治的な動機に基づく容疑で投獄されている活動家を実質的な立候補の除外対象としており、野党・国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー書記長のほか、400人以上のNLD党員、ミンコーナイン氏ら88世代学生グループのメンバー、人権活動家、著名なお笑い芸人ザーガナ氏らの人びとがこの規定に当てはまる。

「ニーニーアウン氏の釈放は、真の意味でのビルマ民主化プロセスに向けて長年活動してきた2,100人以上の人びとが悲惨な境遇におかれているという現実を物語っている」と前出のピアソンは述べる。「国際社会は氏の釈放を契機として、ビルマ軍政に対し、全政治囚を釈放するとともに、かれらが総選挙に完全で自由な形で参加することを許可するよう強く働きかける一層の努力を行うべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマで現在収監されている約2,100人の政治囚全員の即時無条件釈放を求めるキャンペーン「2010年までに 2100人」を行っている。

 (日本語のキャンペーンサイトはこちら:https://www.hrw.org/ja/free-burmas-prisoners/prisoners/ja)

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