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スリランカ:洪水が強制収容キャンプ内の民間人を襲う

政府の拘束ゆえに、被害が増大

 (ニューヨーク)  強制収容キャンプの26万人以上のタミル人が、大雨による洪水で危険に晒されている、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。これらのタミル人避難民たちは、スリランカ政府によって、北部の収容キャンプに違法に拘束されている。

避難民たちは、友人やホストファミリーの家に移動することを許可されさえすれば、雨季の始まりとともに悪化が激しいキャンプ内の状況から逃れることができる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。避難民たちは、拘束されているがゆえに、洪水の被害から逃げられない状況におかれているのである。

「スリランカ政府は、民間人を強制収容キャンプに拘束し続けてきた。雨季の間も収容を続ければ、避難民たちの健康のみならず、命さえも危険に晒すことになる。」、とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「このようなスリランカ政府の政策は違法であるばかりか、危険で非人道的である。」

スリランカ政府は、スリランカ政府とタミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)の戦闘の結果、国内避難民となった民間人のほぼすべての人びとを、強制収容キャンプに拘束。政府はそのキャンプを「福祉センター」と呼び、2008年3月以降、国際法に違反して人びとを拘禁し続けている。キャンプから解放され、自宅に戻ったりキャンプ外での生活が許可されたのは、これまで、数千人だけである。

過去数日の間、スリランカ北部で激しい豪雨が降り、キャンプの一部は洪水に見舞われた。この雨による影響が特に大きかったのは、ヴァヴァニアの西に位置するマニク・ファーム収容所(複数のキャンプの巨大コンプレックス)のゾーン2とゾーン4である。来月の雨季入りにより更なる降雨が予想され、過密状態にあるキャンプの状況を悪化させる恐れがある。

ゾーン2で1歳の息子と暮らすアナティ(Anathi、30歳の女性)は、「数秒の間にわたしたちのテントに水が流れ込んできてしまったの・・・全てが浸水してしまうまで、数分もかからなかったわ。持ちものを全て失った。料理をするところもないの。みんな同じ状況だから、誰からも助けてもらえなかった。本当にひどかった。洪水の前から恐怖に見舞われていたけれど、これで更に恐ろしくなったわ。」とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。

5人用のアナティのテントには、3家族 合計7人が暮らしていた。国連によると、キャンプの大半は深刻な過密状態にあり、先月28日時点で5万人が収容可能なゾーン2と4に、10万人以上が生活していた。証言者の安全をまもるため、ヒューマン・ライツ・ウォッチに証言したキャンプの住民には仮名を使用している。

雨による非常用トイレの浸水や崩壊により、キャンプの一部に汚水が流出し、伝染病の発生の危険性が高まっている。ゾーン2で暮らすシャンタデビ(Shantadevi)は、「いくつかのトイレは完全に浸水してしまって、水に浮いているようだった。くぼみは壊れ、汚水が雨水と一緒に緑や茶色の泥となって流れている。ひどい汚臭がして。」とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。

アナティはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、キャンプが設置されたこの地域は、雨季になると毎年洪水が起きると述べた。「雨季の前にキャンプから解放してくれなければ、私たちは洪水で流されてしまうわ。病気も発生して、ひどいことになるわ。」


これらのキャンプでは既に感染病が発生しており、衛生当局は数千件もの下痢、肝炎、赤痢、水痘を確認している。

関係者によると、キャンプに暮らす人びとは、キャンプでの厳しい状況に日々不満を募らせている。豪雨の後も騒動が発生したが、キャンプを管理する軍により武力は使わずに間もなく鎮圧された。6月下旬にも、キャンプ内で少なくとも2回の抗議行動が発生したが、治安部隊により鎮圧された。それ以来、騒動の再発を恐れた軍は、管理しやすいように、キャンプをより小さく区分化した。


人道団体は、これまでも長い間、避難民をキャンプから釈放するように求めてきた。キャンプに暮らす人びとの多くには、解放されれば身を寄せることができる親戚(近親を含む)がいる。アナティはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、解放されればジャフナにいる母親か、トリンコマリーの義母と一緒に暮らす、と述べた。


「キャンプは砂漠のようで、緑が全くないの。」と彼女はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「晴れの日は、とても暑くなる。雨が降れば、泥ぬまが出来て歩くことが出来ない。1歳の子どもと一緒では動きまわれないし、あの子をテントにひとりっきりにすることも出来ない。ここでの自分の状況を話すだけで胸が苦しくなるの。ほんとうにひとりぼっちなの。もしジャフナかトリンコマリーに行くことが出来るのなら、またまともな生活が送れるわ。」


スリランカ政府は、LTTEの戦闘員を探し出す必要があるとの理由で、避難民をキャンプから解放することを拒否してきた。先日スリランカの国連大使に任命されたパリサ・コホナ(Palitha Kohona)外務長官(Foreign Secretary)は、今月10日BBCに対し、避難民の解放について、「安全が確保されていない状況で、権利について語ることは良くない」と述べた。


8月15日、再定住災害省のリザド・バティウディン(Rizad Bathiudeen)大臣はスリランカのDaily Mirror紙に対し、キャンプの洪水の責任は国連機関にあるのであって、「破裂した下水の件で、スリランカ政府を責めるべきではない」と述べた。 


「政府はキャンプの状況に関し全ての責任がある。」とアダムズは述べた。「民間人を汚らしい環境に閉じ込め、その責任を援助機関におしつけるのは恥ずべき行為である。」

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