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南部スーダン:民族間抗争への対処を改善せよ

政府、国連、資金提供国は、危険地域にいる民間人の保護の強化を

  (ニューヨーク)-南部スーダン政府、国連、ODA供与国(海外の資金提供国)は、民族間抗争で、民間人を保護することに失敗した。この重大な失策に、至急対処するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。南部スーダン人民解放運動と国民会議党間の間で、長きにわたったスーダン内戦は、2005年の包括和平合意によって終結した。この合意の関係国、資金提供国、海外の支援国は、2009年6月23日、治安関係を含む和平合意の実施状況を審査するための会議をワシントンDCで行なう予定である。

本報告書「見捨てられた人びと:南部スーダンでの民間人保護の欠如」(15ページ)は、近頃急増している民族間抗争の実態、そして、南部スーダン政府とスーダン国連ミッションのがこの抗争の下で民間人を保護できていない現状を取り上げている。2009年3月と4月、スーダン・ジョングレイ州(Jonglei)で、ロウ・ヌエル(Lou Nuer)族とムルレ(Murle)族の武装した民間人の間で激しい攻撃とその攻撃に対する反撃が行なわれ、抗争が多数発生。この抗争の結果、推計1,000名の男性・女性・子どもが殺害され、約150名の女性と子どもが誘拐された。政府当局者は、紛争が起きつつあるのを知りながら、紛争を予防する手段や民間人を保護する手段をとらなかった。また、国連ミッションも、差し迫る暴力に対処しなかった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「南部スーダンの人々は、政府が自分たちを保護してくれると期待する権利がある。」、とヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ジョージェット・ギャグノンは述べた。「しかし、ジョングレイでおきた残虐な暴力は、実際には人びとがまったく保護されていない実態を明らかにした。」

「南部スーダン政府の指導者幹部は、暴力と人権侵害を防ぐために紛争地域に出向き、その地域の警察を増員・増強し、兵士に民間人保護のための訓練を施すべきである」、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

南部スーダン警察局(Southern Sudanese Police Service)は、ジョングレイでおきた襲撃現場のほとんどに、警官たちを配置していなかった(あるいはごく少数しか配備されていなかった)。また、警官たちは、民間人を守るための訓練を受けておらず、必要な装備も持っていない。伝えられるところでは、南部スーダン政府軍であるスーダン人民解放軍は、被災地域の近くに基地があるにも拘らず、兵士と武装した民間人との衝突がおきる懸念から、兵士たちに対し、民間人保護のための介入をすることを禁じた模様である。

政府当局者は、暴力が差し迫っていることを警告されていたにも拘わらず、3月に襲撃が起きるまで、ロウ・ヌエル(Lou Nuer)族とムルレ(Murle)族の地域に足を運ばなかった。加えて、政府の設置した委員会は、襲撃の後の調査を行なったものの、重大犯罪の犯人を訴追するための措置は何も講じなかった。

民間人を保護し、包括的和平合意への違反を監視することをマンデートとする国連平和維持軍も、襲撃現場に不在だった。州都ボル(Bor)に駐屯している平和維持軍は、3月の襲撃以降、被災地への視察を増やしたが、民間人が殺害された遠隔地には殆ど行っていない。平和維持軍は、5月、平和構築活動を支援するため、約120名の軍と民間人スタッフを、一時的に被災地2箇所へ派遣した。

「ジョングレイでの平和維持部隊の存在は重要だが、更なる襲撃を予防するため、そして民間人を保護するため、基地を増やしたり、定期的な視察・パトロールなどを行い、危険地域での活動を増やすべきである」、とギャグノンは述べた。「全ての襲撃容疑に対し徹底した人権侵害の調査を行い、遠隔地域における法の正義の実現に向け、南部スーダン政府を支援しなければならない。」

南部スーダン政府と平和維持軍が、民間人保護に失敗した例はこれにとどまらない。中央部及び西部エクアトリア(Equatoria)州でのウガンダの神の抵抗軍による激しい襲撃や、2009年2月に民間人30名以上を殺害したマラカルでのスーダン人民解放軍とスーダン軍の衝突など、他の場所での民族間抗争でも、民間人を保護しなかった

2010年2月に予定されている国政選挙、そして2011年の民族自決に関する南部スーダンでの住民投票に向け、南部スーダン全域での暴力発生の危険性は、今後数ヶ月間高まる可能性がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、6月23日の会議に出席する南部スーダンの代表団、海外の資金提供国、外交官らに、民間人保護を最優先議題とするよう強く求めた。

選挙に先立ち、危険が高まっている地域に駐在する警察(訓練と装備が必須)と政府指導者たちの数を増加させることを優先課題とするべきである。国連と海外の資金提供国は、暴力事件の捜査と犯罪の責任者の法的責任追及の確保という点でも、南部スーダン政府を支援しなければならない。

「緊張が高まる中、国連と海外の資金提供国は、南部スーダン政府と協力し、治安改善と民間人保護を進めるべきだ。」

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