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香港:子どもの絵本の作者たちに有罪判決

平和的批判者に対する新たな武器として当局が扇動法を復活させる

Li Kwai-wah, senior superintendent of Police National Security Department, poses with the children's book series Sheep Village at a press conference in Hong Kong, July 22, 2021. © 2021 AP Photo/Vincent Yu

アップデート:2022年9月10日、裁判所は5人に禁錮 1年7か月の実刑判決を言い渡した。

(ニューヨーク)― 香港当局は子どもの絵本シリーズを出したために扇動罪で有罪となった5人の判決を取り消すべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。地方裁判所(区域法院)は2022年9月7日、5人が刑事罪行条例の下で「扇動的な出版物を印刷、出版、配布、または展示しようと共謀した」として有罪を宣告した。5人は9月10日に予定される量刑審理で、最長で2年間の禁固刑を言い渡されることになる。

検察側は、オオカミの群れによる専制支配に抵抗する羊たちについての3冊からなる『羊村』シリーズが、中国政府を国民から恐れられ崇拝される「残酷で権威主義的な監視国家」として描くことで「分離主義的」思想を広める、と主張した。検察側は、絵本が「反中国と反香港の勢力を団結させる」ために利用されたと主張した。検察側は根拠を示さずに、そのような思想は中国政府の香港に対する主権を「弱める」可能性があると述べた。

「香港市民は、中国本土で政治的な寓話を書いて不合理な訴追をされる人の話を読んでいたものだが、今や香港で同じことが起きている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当上級調査員である王松蓮は述べた。「香港当局は、自由の著しい後退を覆し、子どもの絵本の作者5人の有罪判決を取り消すべきである。」

黎雯齡(Lorie Lai Ming-ling)、楊逸意(Melody Yeung Yat-yee)、伍巧怡(Sidney Ng Hau-yi)、陳源森(Samuel Chan Yuen-sum)、方梓皓(Marco Fong Tsz-ho)の5人は25歳から28歳で、言語聴覚療法士であり、香港言語治療師総工会という民主派労働組合の執行委員である。香港警察の国家安全部門は、2021年7月と8月に5人を扇動罪で正式に起訴した。5人は裁判にかけられるまで1年近くも拘束されていた。2021年10月、香港政府は香港言語治療師総工会を労働組合登録簿から削除した。

2020年と2021年に出版された『羊村』シリーズは、2019年の香港での抗議行動の引き金となった出来事を描写し、中国本土で外部との連絡を断たれて拘束されていた香港の活動家12人についての認識を高め、新型コロナウイルス感染症拡大の初期に中国との国境を開けていたことについて香港政府を批判する。

2020年以降、香港の検察は平和的な反対者を取り締まるために、古風で範囲の広すぎる罪である「扇動」の罪を使うことが多くなった。英国の植民地政府は1938年に扇動条例を導入し、主として、1967年に死者を出した香港での暴動に関与した中国共産党支持者に対して使った。それ以降、英国政府が1997年に香港の主権を中国に移譲するまでは、植民地政府は扇動法を使わず、1971年に刑事罪行条例と統合した。

香港当局は、中国政府が2020年6月に香港で国家安全維持法(国安法)を定めた直後の同年7月に初めて扇動法を使用した。香港政府は、扇動法の下でこれまでに38人の個人と4つの報道機関を起訴している。起訴された中にはジャーナリスト、学者、ラジオ番組司会者、香港独立支持のチラシを配った人、民主派活動家の裁判中に拍手した人が含まれる。

扇動は国安法の下での犯罪ではないが、香港終審法院は2021年12月、扇動は国家安全を脅かす罪だとする判断を下した。終審法院は、国安法の実施規定の範囲を扇動事件にまで広げ、警察に幅広い捜査権を与えて保釈の基準を厳格化するなどした。この判決が出てから、扇動容疑の逮捕が急増した

香港政府は、表現に関する軽微な犯罪で人を有罪とするための法的手段として扇動法を復活させた可能性がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。扇動法は「扇動的」を非常に広く定義しており、ある表現や出版物が政府に対する「憎悪や軽蔑」を引き起こそうと意図している、もしくは香港住民の間で「不満を生じさせる」、または「敵意の感情を助長させる」ことを意図していると裁判所が判断する限り、有罪宣告となる基準も低い。

扇動法はまた、終身刑を最長の刑とする国安法よりも刑期が短いため、高等法院で係属中の多数の政治事件をさらに増やすことなく、より多くの下級裁判所が扇動法事件を裁くことができる。

9月7日の判決も含めると、扇動罪で起訴された13人が裁判にかけられ、全員が有罪を宣告されるか、罪を認めた。1月には、扇動罪事件で最初の量刑宣告で、反政府のポスターを掲示した男性が8カ月の禁固刑を言い渡された。4月には、民主派活動家の譚得志が、平和的なスローガンを唱えたことが理由で扇動罪の7項目、その他の罪の3項目で有罪となり、40カ月の禁固刑を宣告された。7月には、末期患者の活動家である古思堯(75)が、2022年の北京冬季オリンピックに抗議するために使うつもりだった小道具の棺に、中国共産党に批判的な言葉を描いたことが理由で9カ月の禁固刑を宣告された。

香港当局による扇動法の濫用は、国安法制定が香港社会にもたらした萎縮効果を強めた。8月には国安警察が、フェースブックの「公務員の秘密」というページの管理者2人を扇動容疑で逮捕した。そのページが、勤務中の警官が居眠りしている様子を投稿した数日後のことだった。この逮捕後、公立病院職員のものも含めた「秘密」を通報する少なくとも5つの同じようなフェースブックページが説明なしに閉鎖された。

過度に適用範囲の広い扇動法は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)に違反している。自由権規約は香港の事実上の憲法である基本法を通じて香港の法的枠組に取り入れられ、香港権利章典条例で明文化されている。国連人権委員会は、香港についての最新の定期報告で、香港政府は扇動法を廃止し、その使用を控えるべきであると述べた。英国は2009年に扇動法を廃止した

各国政府は、香港の扇動法の濫用を非難するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。オーストラリア、EU、英国の各国政府は、米国が2020年7月に始めたように、香港市民の権利を侵害した関係者に対象限定型制裁を協調して科すべきである。

「当局は、反対意見を排除するために香港で長らく称えられてきた法の支配を覆した」と王は述べた。「外国政府はあらゆる機会を使って、こうした侵害行為をする代償を高くするべきである。」

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