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ミャンマー:日本で訓練を受けた准将が人権侵害に関与した司令部に所属

日本政府はミャンマー国軍の訓練を停止し、軍事関係を断つべき

Myanmar military personnel march during a parade to commemorate Armed Forces Day in Naypyidaw, Myanmar, March 27, 2022. © 2022 AP Photo/Aung Shine Oo

(東京)- 日本で訓練を受けたミャンマー陸軍の准将が、少数民族地域で深刻な人権侵害に関与したとされる司令部に所属していた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ティン・ソウ准将は、2021年8月から2022年7月までシャン州南部やカレンニー州(カヤ州)での軍事活動を管轄する東部陸軍司令部(Eastern Command)にいた。同司令部が管轄する部隊は、市民の虐殺などに関与した。

日本政府は、ミャンマー国軍の軍事訓練を直ちに止め、他の訓練参加者が国軍による戦時国際法違反に関与しているか調査すべきだ。

「日本で軍事訓練を受けたミャンマーの軍人らは、国軍による人権侵害が著しい紛争地域で軍事活動を行っている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局プログラム・オフィサーの笠井哲平は述べた。「日本政府は火遊びを止めて、直ちにミャンマー国軍の支援を停止すべきだ。」

全国防衛協会連合会と防衛省の資料によると、当時大佐だったティン・ソウ氏は2016年8月から2017年3月の間に陸上自衛隊幹部学校で訓練を受けた。また、事情に詳しい関係筋やミャンマー国営メディアによると、同氏は2019年から2021年に在日ミャンマー大使館で武官を務めた。2人の関係筋によると、ティン・ソウ氏は2021年2月1日の軍事クーデター後、ミャンマーに帰国し准将に昇進。そして2021年8月、東部陸軍司令部があるシャン州都のタウンジーに配属され、今年7月にミャンマー首都ネピドーに異動したという。

東部陸軍司令部は、14の地域軍司令部の1つであり、クーデター以降戦闘が激しくなっているシャン州南部やカレンニー州で活動する40以上の歩兵大隊を指揮している。2021年5月以降、国軍は同地域での軍事活動を活発化。国連人権団体独立系メディアは、東部陸軍司令部の指揮下の部隊による超法規殺人、拷問、恣意的逮捕、略奪、放火、市民を標的にした軍事作戦や無差別攻撃、そして地雷の使用などを記録している。

ミャンマーの治安部隊は、2021年12月24日にカレンニー州Hpruso郡で4人の子どもと国際支援団体セーブ・ザ・チルドレンのスタッフ2人を含む39人を即決処刑。ヒューマン・ライツ・ウォッチに証言した目撃者らによると、被害者らは縛られ、口を塞がれ、拷問や生きたまま燃やされた痕跡があった。「私が経験した中で、最高レベルにショッキングで気の滅入ることだ」と被害者の死亡解剖を行った医者は語った。

欧州連合は今年2月、東部陸軍司令部の司令官であるNi Lin Aung准将に対して、「カヤー州にいる部隊を直接的に指揮しており、虐殺をした部隊も含まれる」ため制裁を科した。同氏はティン・ソウ氏の上司にあたる。また、欧州連合は東部陸軍司令部を指揮する第二特殊作戦局の司令官であるAung Zaw Aye中将にも制裁を科した。

東部陸軍司令部の指揮下にある第531軽歩兵大隊は、2021年12月24日の虐殺関与したとされる。また、第66軽歩兵大隊関与したとされており、同隊の司令官は国際人権団体アムネスティ・インターナショナルに、カレンニー州すべての地上作戦は東部陸軍司令部の管轄にあると証言した。

カレンニー州での反軍武装勢力や少数民族武装勢力に対する国軍の軍事作戦において、市民に対する人権侵害は他にも報告されている。今年3月に国連のミャンマーの人権状況に関する特別報告者は、「軍は攻撃をこうした武装勢力に限定せず、州の大きめの町を攻撃するなど市民を標的にしている。また、軍は逃げる市民を追いかけ、国内避難民の避難場所も攻撃している」と述べた。

今年5月、アムネスティ・インターナショナルは東部陸軍司令部が管轄する軍事作戦において、「違法な攻撃、村の焼き討ち、略奪、強制失踪、拷問や他の虐待、そしてカレンニー族の迫害」などがあったと報告。東部陸軍司令部の指揮下にある第102歩兵大隊は、無差別砲撃を複数回行った。また、同団体は軍によるカレンニー州での「大規模な」対人地雷の使用も報告している。同州の人権団体カレンニー・ヒューマン・ライツ・グループによると2021年6月以降、これらの地雷により少なくとも20人が殺害あるいは重傷を負った。

シャン人権基金も今年5月に、東部陸軍司令部の指揮下にある4つの歩兵大隊がシャン州南部Ywangan郡での人権侵害に関与していると報告。4月半ばに起きた9人の村人の殺害も含んでいる。

日本政府は2015年以降、外国籍の軍人の教育や訓練を認める自衛隊法第100条の2の規定に基づき、ミャンマー国軍の士官候補生及び士官を受け入れてきた。訓練は防衛大臣の承認の上、防衛省管轄の防衛大学校や自衛隊施設で実施されている。防衛省は2021年のクーデター後、2名の士官候補生と2名の士官受け入れ、2022年には、再度2名の士官候補生と2名の士官を受け入れた

以前、ヒューマン・ライツ・ウォッチと人権団体ジャスティス・フォー・ミャンマーは、日本で軍事訓練を受けたミャンマー空軍のラン・モウ中佐がマグウェイ空軍基地に所属していることを明らかにした。マグウェイ空軍基地にある戦闘機は、マグウェイ地域で無差別空爆の可能性がある攻撃に関与したとされる。また、軍は同地域で即決処刑、放火や他の人権侵害を犯した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2021年12月、ミャンマー国軍の残虐行為に日本政府が加担する危険性があるとし、軍事訓練の停止を防衛省に要求した。当時、防衛省担当者は、日本で訓練を受けた国軍の軍人が、ミャンマーに帰国後何をしているか把握していないと説明した。

しかし、2022年4月26日の衆議院安全保障委員会で防衛省担当者は「今どういうポストについているか」に関して「一定程度把握をしている」とした上、「相手国との関係」を理由に詳細の開示を拒んだ。岸信夫防衛大臣は、6月22日に開催されたアセアン防衛大臣会合で、訓練したミャンマー軍の幹部が「帰国後に市民への弾圧に加担するようであれば、受け入れの継続は困難になる」という認識を示した。

ミャンマー国軍は数十年にわたり、民族武装集団との長期にわたる武力紛争における戦争犯罪や、ラカイン州の少数民族ロヒンギャへの人道に対する罪や大量虐殺に当たる行為を犯してきた。

クーデター発生以来、日本政府は暴力行為の停止と、アウンサンスーチー氏ら民政高官の釈放を求めている。2021年3月28日、防衛省統合幕僚監部は山崎幸二統合幕僚長の名で11カ国との共同声明を発表し、ミャンマー国軍による「非武装の民間人」への軍事力の行使を非難した。日本政府は2021年初頭に、人道支援以外の政府開発援助(ODA)の新規計画を中断する一方で、既存の援助計画の継続は認めた。6月には、国会で「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める」決議が可決された。

「日本政府によるミャンマー国軍の訓練が続く限り、日本政府の国際的な評判を下げるとともに、ミャンマーの人びとの命を危険に晒すことになる」と前出の笠井は述べた。「人権外交を掲げる国として認識されたいのであれば、国軍と防衛関係を断ちミャンマーの人びとの人権のために行動すべきだ。」

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