A supporter of the ruling Cambodian People's Party (CPP) uses a mobile phone to photograph a portrait of CPP president Hun Sen during an election campaign in Phnom Penh, Cambodia on July 7, 2018.
© 2018 Reuters/Samrang Pring

(ニューヨーク)- カンボジアでは、国軍将官や警察隊、警察幹部が与党・カンボジア人民党(CPP)を積極的に応援しているが、これは政治的中立性を定めた国内法に違反すると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。カンボジアでは2018年7月29日の総選挙を前に、野党・カンボジア救国党(CNRP)は解散を命じられ、党首のケム・ソカ氏は逮捕、創設者のサム・ランシー氏は亡命を余儀なくされているなかでの出来事だ。

治安部隊幹部はフン・セン首相と人民党への支持を、カンボジア全土で数多く開かれている政治集会などで公言している。「カンボジア王国軍人の一般的地位に関する法律」の第9条は、「軍人は職務と公務において中立でなければならず、職務や階級の使用、ならびにいかなるものであれ政治活動への国有財産の使用は禁止する」と定める。

「でっち上げの選挙に勝つためには、与党人民党は野党を解散させ、選挙制度全体を統制し、メディアを全面管理するだけでは満足していない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「人民党は、ひどく恐れられる軍将官の一部を動員し、人びとを脅して投票を促す必要すら感じているようだ。」

現地の報道によれば、7月7日に選挙運動期間が始まって以降、カンボジア王国軍総司令官代理サオ・ソカ(Sao Sokha)将軍が人民党支持の運動を行っており、7月8日にはカンダル州にあるパゴダで行われた集会で、「カンボジア首相である、フン・セン栄誉勝利軍の威厳ある高貴な最高司令官(Samdech Techo Hun Sen)の賢明な指導の下、我が国では、道路に橋、運河、学校、病院など至るところで開発が進められているのである」と演説した。

  • ヒン・ブン・ヒーン将軍は、米「グローバル・マグニツキー法」(人権侵害に関与した外国政府高官への制裁を定めた2016年の法律)に基づき、人権侵害への関与を理由に制裁対象とされているが、7月8日の人民党の集会で1,000人ほどの教師を前にし、「国家指導者でカンボジア人民党党首であるフン・セン栄誉勝利軍の威厳ある高貴な最高司令官の賢明な指導の下で進む国家全体の発展と平和」について演説し、集会参加者に人民党への投票を呼びかけた。
  • ラット・スラン中将(カンボジア王国警察隊(GRK)副司令官兼プノンペン警察隊司令官)は、7月8日にプノンペンで人民党の一団に対して、「正しい投票方法を国民に説明すること」を促した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチには、2018年7月7日に選挙運動期間が公式に始まる前に、多くの治安部隊高官がフン・セン氏や人民党の支持働きかけを行ったとの報告が寄せられている。こうした動きは国内法に違反するものだ。

  • フン・マネット将軍(フン・セン氏の長男、カンボジア王国軍総司令官代理)は、7月2日に人民党支持の選挙活動を行った。
  • ミアス・ソフィア将軍(カンボジア王国軍副総司令官)は、6月15日にプレアヴィヒア州で人民党支持の選挙活動を行い、人民党員を勧誘するとともに選挙戦での勝利を訴えた。
  • チャップ・フィアックデイ中将(副参謀総長兼第911〔特殊部隊〕旅団長)は、6月17日にスヴァイリエン州で人民党とフン・セン氏支持の選挙活動を行った。
    • クン・キム将軍(カンボジア王国軍副総司令官)は、6月23日26日にウドンメンチェイ州で人民党支持の選挙活動を行った。
  • ポル・サルーン将軍(カンボジア王国軍最高司令官)は、プレアシハヌーク州に出向いて6月24日7月1日に選挙活動を行い、人民党の候補者を紹介した。候補者リストの筆頭は自身である。
  • チョウン・ソワン副警視総監は、プレイベン州ペアレアン(Pea Reang)郡で6月16日に人民党支持の選挙活動の責任者となった。

総選挙での人民党の候補者リストには、軍、警察隊、警察の現役高官の名前もある。フン・セン氏が1985年に首相に就任して以来続く、フン・セン氏支配の維持に貢献した人たちだ。ポル・サルーン、ミアス・ソフィア、クン・キムのほか、ディ・ヴィチェア中将(副警視総監、フン・セン氏の義理の息子)の名前もある。

法による民主主義のためのヨーロッパ委員会(ベネチア委員会)と欧州安全保障協力機構(OSCE)民主制度・人権事務所の2016年のガイドラインには、次のように書かれている。「裁判官、検察官、警察、軍、選挙立会人が自らの権限を持つなかで、選挙運動に関わらないことはきわめて重要だ。具体策を設けることで、選挙の実施過程全体において、このような職員の中立性が保証されるべきである。」

「民主主義の基本原則は、選挙を自由で公正かつ信用に足るものとして行うため、軍と警察に政治的中立性の維持を求めている」と、前出のアダムズ局長は述べた。「しかし今回の総選挙をめぐる一切が非民主的なのだから、人民党が軍将官を使って与党の選挙宣伝をすることは驚きではない。過去数十年間、民主化促進のためとして、カンボジアに数十億ドルの資金を流し込んできた外国政府は、今回のような民主的なプロセスのあからさまな侵害に抗議すべきである。」