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(ニューヨーク)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で、公には国際労働基準にのっとり労働者の権利の擁護をうたう欧州系企業の多くが、米国内での業務でその保障を怠っていると述べた。これらの企業の中には、フランスに本社を置くソデクソ・フード・サービスとサンゴバン・インダストリアル・エクイップメントスも含まれている。

報告書「表と裏:米国で、労働者の結社の自由を侵害する欧州系多国籍企業」(全128ページ)は、米国内労働者に組合組成や団体交渉を許さないなど、国際労働基準はもちろん多くは米国労働法にも違反する強引な企業活動を、欧州系多国籍企業の一部が行なっている実態について詳述している。

ソデクソ・フード・サービスとサンゴバン・インダストリアル・エクイップメントに加え、本報告書で指摘した企業は次の通り:ドイツに本社を置くドイツテレコム傘下の携帯電話会社T-モバイルUSAと国際貨物輸送会社のドイツポストDHL、英国に本社を置く食品会社のテスコと国際的な警備会社G4S、ノルウェイに本社を置く自動車部品会社のコンクスベル・オートモティブ(Kongsberg Automotive)とオランダ企業ガンマ・ホールディング(Gamma Holding)など。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのビジネスと人権局長アービンド・ガネサンは、「実情に照らすと、これらの企業の人権に対する自主的誓約には疑問を抱かざるを得ない」と述べる。「企業は誓約を守り、しっかり法律を遵守する責任がある。」

調査報告書に記載した違反事例のひとつには、こうした企業が、組合派の声を封じる一方で、組合反対演説集会に従業員を無理やり出席させていることが挙げられる。また、「組合を組織したらひどい目に合わせる」、「スト権を行使したらクビにする」といった脅迫、組合を組織しそうな従業員の監視、更には組合発足を支持する人びとの解雇といった不正行為も明らかになった。

本報告書は、従業員30名への聞き取り調査や、訴訟手続きにおける従業員たちの証言、米労働法関連当局の調査結果と結論、企業の文書、並びに企業経営陣とやり取りした文書などが基になっている。

前出のガネサンは、「米国は、救いようがないほど抜け穴だらけの労働法を改正し、労働者を保護せねばならない。これには、勤労者自由選択法(Employee Free Choice Act)に盛り込まれた改正も含まれる」と指摘。「現行の労働法のもとでは、雇用主と従業員間の交渉が長引く傾向にあり、労働法に違反した企業に対する処分も軽い。雇用主と従業員の力関係はかなり一方的だ。」

本報告書内でヒューマン・ライツ・ウォッチは、米国での企業活動に対する欧州本社の監督強化を勧告・提言。同時に、国際労働機関 (ILO)や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関による更なる労働基準の設定と、労働者の苦情申立て制度の強化についても強く求めている。また、欧州系企業が国際労働基準を徹底するようこれまで以上に強く働きかけるべきであると欧州各国政府とEUに勧告している。

欧州系企業の活動の調査を行った結果、以下が明らかになっている:

  • T-モバイル社では、従業員が労働者の権利について語ることは、直ちに管理職に報告されるべき危険な活動とされている。
  • DHL経営陣は、組合を組織しようとした従業員を脅し、かつ差別した。
  • テスコ経営陣は、組合に関して従業員間のコミュニケーションを封じようとした。
  • ソデクソ社は組合を組織しようとした従業員を脅迫・尋問の末、解雇した。
  • ダッチ・ガンマ・ホールディング社は、スト権を行使した従業員を解雇して、その代わりの従業員を雇った。これは米国法には違反しないが、国際基準に違反する。

本報告書で列挙したすべての企業が、ILOの主要な労働基準、OECDの労使関係ガイドライン、または世界人権宣言、国連グローバル・コンパクト、およびその他の国際人権機関がうたう「結社の自由」のいずれかを是認している。

前出のガネソンは報告書内で次のように指摘。「自らを『進歩的』と呼ぶ企業の中にも、労働者の保護に弱い米国内法を最大限に活用して、結社の自由を抑圧しているところがある。米国が労働基準を強化・施行しない限り、米国内の労働者はいつまでたっても自らの権利を享受することができないだろう。」

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