(バンコク)―2023年にミャンマーの軍事政権は、少数民族やクーデターに反対する住民のいる村に対する空爆をより頻繁に実施した、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日『世界人権年鑑2024』で述べた。同国の治安部隊は大量殺害、強制失踪、拷問、レイプその他の性暴力、恣意的な逮捕と拘束を行った。
「軍政による違法な空爆が増えたことは、2021年のクーデター以降ミャンマーの人権状況が悪化していることを実証している」とヒューマン・ライツ・ウォッチのエレイン・ピアソン・アジア局長は述べた。「各国政府は軍に対する制裁を強化し、国連安保理にミャンマーに対する武器禁輸措置をとるよう求め、ミャンマーの事態を国際刑事裁判所に付託するべきである。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、34年目の刊行となる年次報告書『世界人権年鑑2024』(全740頁)で、100カ国以上の人権状況を検証した。ティラナ・ハッサン代表は序文で、2023年は、人権弾圧や戦時下の残虐行為だけでなく、場合によって憤りを表明したりしなかったりする各国政府の態度、また取引外交でも注目に値する年だったと指摘した。この外交では、「取引」に加わらない人びとの権利は著しく侵害される。しかし、ハッサン代表は、別の道が開ける可能性が示されるという希望の兆しもあったとし、各国政府に対し、人権義務を常に遵守するように求めた。
ミャンマー国軍は4月、ザガイン管区域で燃料気化爆弾を使用し、民間人160人以上を殺害した。10月には、ミャンマー国軍は何百人もの避難民を受け入れていたカチン州の村を攻撃し、11人の子どもを含む民間人28人を殺害した。さらにミャンマー国軍は2021年2月のクーデター以降、国内で生産された、本質的に無差別であるクラスター弾を人口密集地域で使用している。
軍政は国際人道法に反し、緊急に必要とされる支援物資が紛争地域にいる数百万もの人に届けられるのを妨げた。国内避難民は200万人を超え、その多くは空や地上からの攻撃から何度も逃れている。10月には、シャン州北部で軍と、少数民族武装組織および反軍政の国民防衛隊(PDF)の連合との衝突を逃れて数万人が避難した。
5月には、北インド洋で観測史上最強となった2つの熱帯サイクロンのうちの1つ、サイクロン・モカがチン、カチン、ラカイン各州とザガイン、マグウェ各管区域を襲い、800万人近くが被災した。軍政当局は援助関係者の渡航許可やビザの発行、税関や倉庫からの緊急支援物資の放出、人命救助支援に負担となる不必要な制限の軽減を拒んだ。
国連安保理では、拒否権を持つロシアと中国がミャンマーに対する措置を長らく妨げてきた。その他の各国政府は、軍政に方向転換を迫るためにそれぞれが科す制裁を拡大する方法を見つけるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国連加盟国は、「ミャンマーへの武器の流れを防止する」よう各国に求める2021年の国連総会決議に従うべきである。
米国をはじめとする主要国政府は制裁を拡大した。これには、軍政が武器や軍装備品を購入するのに使うミャンマーの2つの銀行に対するものも含まれる。米国は8月、軍所有のミャンマー石油ガス公社(MOGE)が関与する金融取引を禁じる命令を出した。しかしEU、米国、カナダ、英国はそれぞれの措置をより効果的に調整し施行すると同時に、シンガポールやタイその他ミャンマーの近隣国にも遵守を求めるべきである。
国際刑事裁判所(ICC)は現在、2017年のロヒンギャに対する民族浄化作戦に関連する犯罪についての捜査を行っているが、その範囲は限られている。ミャンマーにおける残虐犯罪の全体を取り上げるためには、ICCへの事態の付託が依然として不可欠である。これとは別に、国連のミャンマーに関する独立調査メカニズム(IIMM)は、将来の訴追に向けた証拠収集を続けた。
国際司法裁判所は、ジェノサイド条約のもとでのミャンマーの国家責任の有無をめぐる事案を審理中である。11月15日、2019年にガンビアが起こした訴訟に6カ国が加わった。