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バングラデシュ:縫製労働者の権利 保護必要

労組活動を妨害するため 経営者が脅迫・暴力

(ニューヨーク)-バングラデシュ政府は、縫製工場経営者が労働組合を組織する労働者に嫌がらせや脅迫を行うのを止めさせ、組合幹部襲撃事件の責任者を訴追しなければならない。欧米の大手小売業者など外国バイヤーは、バングラデシュの納入業者に労働者の権利を尊重させるべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは首都ダッカと周辺の21工場の労働者47人に聞き取りを行った。労働者らは、経営者の中には組合結成をした労働者を脅迫したり、報復する者もいると訴えた。殺すと脅す場合もあった。組合活動家には、暴行を受けたと話す人や、解雇や退職に追い込まれた人がいる。工場経営者は、地元のやくざを使って、自宅など職場外で労働者を脅し、襲撃するケースもある。

バングラデシュは2013年7月に労働法を改正した。1,100人以上の縫製労働者が死亡した、ラナプラザ・ビル倒壊事故で批判が広がったのを受けてのことだ。労働省はかつて労働組合の登録をほとんど認めてこなかったが、改正労働法により、労働組合の結成が容易になった。工場単位の労働組合が50以上結成されているが、同法は現在も労働組合の結成には3割の労働者の支持を得ることを条件としているため、雇用者の嫌がらせや脅迫で結成が難しくなっている。とくに数千人規模の工場ではかなり困難だ。

「ラナプラザ事件のような大惨事を繰り返さず、バングラデシュ労働者の搾取を止める最良の手段は、独立した労働組合の結成を促し、労働者の権利のモニタリングと保護が行われるようにすることだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは指摘した。「政府はようやく労働組合の登録を始めた。これは重要な前進だが、工場経営者による組合幹部への迫害を止めさせ、労働組合を実際に機能させる必要がある。」

バングラデシュには5,000以上の縫製工場がある。米国とEUはともに、バングラデシュに対する特恵関税の継続のためには、労働者の権利と職場安全を緊急に改善することが条件であるとしている。

政府とバングラデシュ縫製業者・輸出業者協会(BGMEA)は、労働法順守を確保し、労働者の権利を侵害した企業を制裁すべきだ。2013年7月にバングラデシュは、国際労働機関(ILO)条約第87号(結社の自由及び団結権保護条約)と、同第98号(団結権及び団体交渉権条約)を批准したので、両条約に記された権利を保護する義務を負った。

バングラデシュ労働法(2006年成立、2013年改正)第195条は、多数の「不当労働行為」を列挙してこれを違法とする。例えば、使用者は「労働者について、労働組合の組合員あるいは役員であること、その申し込みを行うこと、または他人をそのように説得することを理由として、免職、解雇、罷免すること、免職、解雇、罷免すると脅迫すること、または負傷させる、または負傷させると脅迫すること」が禁じられている。

目撃者たちは組合員への脅迫や襲撃を詳細に語った。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが、2013年10月以降ダッカで行った聞き取り調査では、多くの人から人権侵害行為の様子が説明された。

ある女性労働者は、勤務先の工場の労働者が組合登録の書類を経営者に提出したところ、経営者はそれをゴミ箱に投げ捨て、組合活動など絶対にやらせないとすごんだと述べた。仲間の活動家2人はその後、正体不明の2人(1人は裁ちばさみを持っていた)に襲撃された。2週間後には、地元のやくざと工場経営者の兄弟らが、この労働者の自宅を訪れて脅迫を行った。この労働者は組合の脱退に同意した。

多くの女性労働者が、脅迫や性的侮辱を受けたと話していた。例えば、ある工場監督は、組合に加入した女は全員裸にして、街頭に放り出すと言った、との訴えがあった。ある経営者は、女性の組合活動家は工場を「汚している」ので、売春宿で働くべきだと述べている。

別の工場の男性組合活動家は、もう職場に来るな、来たら殺すという電話を受けたと話している。翌日職場に行くと男性の一団に取り囲まれて暴行を受け、カミソリで切りつけられた。

ある大工場の労働者たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、経営者に気付かれないように組合を結成しようとしていると述べた。報復や解雇を怖れるためだ。脅迫や暴力とは違う形の嫌がらせを受けたと説明する活動家もいた。例えば追加で仕事を割り振られて、同僚と相談をする時間さえないようにされたと訴える声も複数あった。工場経営者に面会を拒否されたという声もあった。

活動家らの訴えによれば、工場にある労働組合のなかには本当に独立していないものがある。経営者が、労働者を支配するため、そして労働者が組合を結成したり加入したりしないようにするため、自ら御用組合を作っているのだ。

聞き取りに応じた労働者の多くが、勤務先の工場でのひどい労使関係や労働条件の劣悪さを詳しく訴えた。結果として、ストライキや抗議行動が頻繁に起こり、一部は暴力的なものになっている。

しかし経営者側はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、独立労働組合の結成を認めても状況は改善されないと主張。ある経営者は、自分の工場では組合活動家が主導権争いをしていると批判した。別の経営者は、政党が労働組合を操ることを懸念していた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた労働者の大多数が働く工場は、輸出向け衣料品を製造しており、小売業に関する国際的な行動規範を順守する義務がある。こうした規範には、労働団結権の保護規定が盛り込まれているのが一般的だ。

ラナプラザでの大惨事の直前、2012年11月には、タズリーン・ファッションズ社の工場火災で少なくとも118人が死亡している。米国とEUはバングラデシュ政府と縫製業界に、労働者の権利改善を求めた。米国とEUは、バングラデシュにとって衣料品の2大輸出先だ。

米国は2013年6月、一般特恵関税制度に基づくバングラデシュの特恵関税措置を停止した。復活の条件として、米国はバングラデシュに対し、工場の監視と査察の改善とともに、労働、防災、建築に関する基準を満たさない企業への「罰金や、輸出入業者としての免許失効などの制裁措置」を強化するよう求めた。カレル・デ・ヒュフト欧州委員(貿易担当)は2013年7月、バングラデシュが労働者の権利と職場の安全性に関する問題を改善しない場合、EU市場への関税・数量制限なしアクセスの資格を失う可能性があると警告した。EUによる検討は2014年夏の予定。

ラナプラザ倒壊事故を受けて、欧州を中心とした小売業者125社が署名した法的強制力のある安全協定は、労働組合が存在している場合にはその組合が工場内の安全確保に重要な役割を果たすことを求めている。

「バングラデシュの縫製業界関係者は、米国とEU、自国政府の要求を満たさなければ、自分たちの事業が損害を受けるリスクがあると自覚すべき時に来ている」と前出のアダムス局長は指摘。「しかし残念なことに、縫製工場経営者のなかには、労働組合を工場管理への脅威と考えて、反組合的で狭量な態度を改めない人がいる。」

勧告

バングラデシュ政府への勧告

· 労働法を効果的に実施するとともに、国際基準に沿うよう改正すること

· 労働者の団結権を保証し、工場査察を強化すること

· 不当労働行為を行う工場経営者に関する申立てを調査すること

· 暴行、脅迫、虐待に関する労働者からの申し立てをすべて捜査し、犯人を訴追すること

バングラデシュ縫製業者・輸出業者協会への勧告

· 加盟業者の工場内での独立労働組合の結成を支援し、御用組合を批判すること

· 政府と協力し、不当労働行為の一掃に向け努力すること

· 国際労働機関(ILO)と協力し、独立労働組合の存在と、労使関係の改善がもたらす利点を工場経営者に知らせること

国際アパレルブランドへの勧告

· バングラデシュ国内の工場に対し、労働者の権利保護を働きかけること

· 工場査察の改善と結果公表により、工場側がブランドの行動規範とバングラデシュ労働法を遵守するようにすること

· 「バングラデシュ火災予防・安全協定」に直ちに参加すること。これは、工場の安全確保に工場労働者の関与を求める法的強制力を備えた協定である

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