(ニューヨーク) - 2009年のノーベル平和賞はバラク・オバマ米大統領に授与される。このことを受けて、オバマ大統領はこれまでに述べてきた諸原則を国内外の人権政策に実際に適用すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

ノーベル委員会は授賞理由として「国際的な外交と諸国民の協力関係を深めるたぐいまれな努力」をあげた。またオバマ氏は平和賞を「あらゆる国の人々が抱く希望を代表する、米国のリーダーシップの確認」として受諾すると述べた。オバマ氏は、米国の対テロ政策による人権侵害の停止、世界各地例外ない形での重大な戦争犯罪に対するアカウンタビリティ(事実解明と法的責任)の追及、そして、世界中の人権活動家の安全の確保にむけて、ただちに断固として行動すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのように述べた。

「ノーベル賞受賞者となるオバマ大統領には、人権を促進したために投獄などの迫害を受けている活動家を支援すべき特別の義務がある」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのエグゼクティブ・ディレクターのケネス・ロスは述べた。「そして、大統領がノーベル平和賞の名誉に真にふさわしい存在となるには、グアンタナモ米軍基地収容所の被収容者全員を訴追または釈放して、同収容所での悲惨な出来事にはっきりと決別することが必要だ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オバマ大統領が自らの地位と知名度を活かして、脅威にさらされ、迫害を受けている人権活動家を保護すべきと述べた。たとえばノーベル平和賞受賞者のなかでは、アウンサンスーチー氏、ダライ・ラマ14世、シリン・エバディ氏などが挙げられるほか、受賞候補とされている人権活動家で迫害にさらされている人びととして、中国の反体制活動家の胡佳(Hu Jia)、劉曉波(Liu Xiaobo)、高智晟(Gao Zhisheng)、陳光誠(Chen Guangcheng)の各氏、またエジプトの野党指導者アイマン・ヌール氏、ロシアの人権団体「メモリアル」などがある。

オバマ氏は、ノーベル平和賞が「正義と尊厳のために闘うすべての人々と分かち合われるべきだ」と述べた上で「暴力や銃弾のまっただなかで自らの権利を主張するために街頭を静かに歩く若い女性、民主主義のために活動することを決して止めないがために自宅に閉じこめられている指導者」について触れた。後者は約20年ちかくにわたって投獄または自宅軟禁状態に置かれているビルマの指導者アウンサンスーチー氏のことだ。

しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ダライ・ラマ14世と会見しない意向を最近表明したオバマ氏について、11月の中国訪問時には、チベットに関する活発な公開の議論を力強く推し進めるべきだと指摘。

また、オバマ氏は、対テロ政策の本格的な改革に着手すべきであるとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。オバマ大統領がCIAの「ブラック・サイト」(秘密施設)の閉鎖と、グアンタナモ軍事収容所の将来的な閉鎖を発表したことは、第二期ブッシュ政権による人権侵害行為との訣別に関する明確な意思表明だった。だが後日、すでに破綻している特別軍事法廷の仕組みを復活させるとしたこと、また現政権下でも一部の囚人について予防拘禁を継続する可能性を示唆したことで、改革の公約は大きく後退している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オバマ氏がグアンタナモ収容所を廃止し、恣意的拘禁を停止すべきだと述べた。囚人たちをキューバから米国本土に移送する可能性をオバマ政権は示唆しているが、それではこの問題は解決しない。グアンタナモ収容所が新たな名で米国本土に存続するだけのことになる。

米国が対テロ政策の一環として人権を侵害している事実は、テロリストのリクルーターに格好の材料を提供するとともに、米国とイスラム世界の関係をぎくしゃくさせる主要な要因となっている。一連の人権侵害行為を根絶し、責任者を訴追することでこそ、オバマ氏の改革は将来的な紛争の可能性を低下させることができる。

オバマ政権はコンゴ、ケニヤとスーダンについては、各国に対する国際的な法の正義の諸原則(国際刑事犯罪を犯した指導者たちの国内的又は国際的な法の裁きの原則)の適用を強く支持した。一方で、国連のゴールドストーン報告がイスラエルとハマスによる戦争犯罪容疑事件の調査を強く求めていることに対しては、異なる対応を見せた。ヒューマン・ライツ・ウォッチはオバマ氏に対し、当事者が米国の同盟国であるかによって対応を変えないで、すべての当事者に対して国際的な法の正義の諸原則を適用するよう強く求めた。

「法の正義は恒久的な平和の実現に不可欠な要素だ。なぜなら重大犯罪の責任者を不処罰のまま放置することは、更なる暴力を生むからだ」とロスは述べた。「オバマ大統領は、世界のいずこの地であろうと残虐行為の被害をうけた人びとすべてのために、法の正義が実現されるよう自らのリーダーシップを用いるべきだ。」