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ウズベキスタン:写真家 侮辱罪で訴追 起訴取下げを

訴追は、ウズベキスタンの芸術家を萎縮させる

(ニューヨーク)-ウズベキスタン政府は、著名な写真家で映像作家でもあるウミダ・アーメドワ氏(Umida Ahmedova)に対する、根拠のない名誉毀損罪及び侮辱罪での起訴を直ちに取り下るべきである。そして、彼女が、表現の自由を国に干渉されることなく行使するのを認めなければならない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

本件訴追は、2010年1月13日、ウズベキスタン刑法第139条及び第140条に基づき行われた。1月23日、捜査官はアーメドワ氏に対し、捜査が完了したので、直ぐにも公判が始まる見込みと伝えた。容疑は、ウズベキスタン国民の名誉を毀損し侮辱した、というもの。アーメドワ氏が2007年に発行した写真集と2008年に製作したドキュメンタリー映画に対する容疑だ。もし有罪になれば、アーメドワ氏は3年以下の懲役に服することになる。

「この訴追は、政府から独立した形で行われる表現であれば何でも禁止するというウズベキスタン政府の姿勢を露呈している」とヒューマン・ライツ・ウォッチの欧州・中央アジア局長ホリー・カートナーは語った。「この事件は危険な先例となる。全てのウズベキスタン人芸術家にとっての脅威である。」

アーメドワ氏の写真集「男と女:日没から夜明け」は、ウズベキスタンの田舎と慣習を撮影したもので、性差に基づく不平等に焦点をあてている。映像「処女性の重み」は、処女でないと疑われた花嫁たちに対する社会的な差別を映像におさめたもの。

いずれの事業の資金も、タシケントにあるスイス大使館が提供。スイス大使館のジェンダー・プログラムから資金の提供を受けていた事業に携わる他の芸術家たちも当局の捜査の対象になっている、という情報をヒューマン・ライツ・ウォッチは入手している。

検察官は、捜査の一貫として、宗教・精神・心理などの分野にまたがる6名の専門家で構成する委員会に、アーメドワ氏の写真集と映画の再検討を依頼。委員会は、アーメドワ氏の作品はウズベキスタン国民を侮辱するもので、西側の視聴者に対してウズベキスタンを否定的に描いている、という結論を下した。

アーメドワ氏の写真集に掲載された写真の90%は「田舎の発展の遅れた村々で撮影され」ていると委員会は述べ、「著者の狙いは、[ウズベキスタンでの]生活が困難であることを描くことにある」と断定。「ウズベキスタンを訪れたことがないままに、この写真集をみた外国人は、[ウズベキスタン]では、人びとが中世さながらの生活を送っている、と思ってしまう」との懸念を委員会は表明。専門家たちは、「アーメドワ氏の写真集は、芸術的要求に適合しておらず」「この映画の配給はウズベキスタンの精神的価値を大きく傷つける」と断定した。

「芸術家がウズベキスタン社会をどのように描くかを決めるのは、ウズベキスタン政府の役割ではない」とカートナーは語った。「アーメドワ氏の訴追には全く根拠がない。」

アーメドワ氏が初めて尋問されたのは2009年11月。首都タシケントのミロバド(Mirobad)警察署に呼び出されたのだが、その際、ノディル・アーマジャノフ(Nodir Ahmadjanov)捜査官はアーメドワ氏に「あなたは、本件の参考人だ」と伝えた。しかしながら12月16日、アーメドワ氏は、2007年の写真集と2008年のドキュメンタリー映画などの彼女の作品を再検討した結果、国家報道情報局(State Press and Information Agency)が立件した捜査の被疑者となった、と口頭で伝えられた。弁護士を雇わねばならないともいわれた。

その後、アーメドワ氏は、最初の尋問の際すでに参考人ではなく被疑者だったことを、正式な事件調書で知った。ウズベキスタンの法律では、被疑者は、参考人以上の権利を認められている。捜査官は、ある人物を被疑者として立件をした場合には、可能な限り速やかに、被疑者に告知する義務を負っている。アーマジャノフ捜査官はアーメドワ氏に対し被疑者であるとの告知を怠った。そのため、アーメドワ氏は被疑者としての権利を享受できなかった。

1月13日、検察が正式にアーメドワ氏を訴追。その際、アーメドワ氏はある書類に署名することを要求された。その書類の内容は、アーメドワ氏が被疑者として立件されていたことを認識していたと認めさせるもので、日付は12月20日にごまかされていた。ウズベキスタンから出国するのを禁止されていることを了解しているとの書類にも署名するよう求められた。

背景

アーメドワ氏は、1986年に全ソビエト連邦立映画撮影監督研究所を卒業した写真家であり映画監督である。ウズベキスタン映画撮影監督組合及びウズベキスタン芸術家協会のメンバーでもある。テレビやラジオで話をする機会も多かった。グルジアの首都トビリシで開催された「ジェンダーとマスメディア」についての国際会議や、欧州各都市などでも、作品を発表してきた。2004年、ロシア・インタープレス写真コンテストで賞を受けるなど、彼女の写真は数々の賞に輝いている。

12月末、世界中の芸術家や写真家、ジャーナリストたちが、ウズベキスタン内務大臣及外務大臣宛ての公開声明を送付。アーメドワ氏に対する立件を取り下げるよう求めた。

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