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焼夷兵器からの民間人を保護を

すさまじいやけどをもたらす武器の規制、より強力な法が必要

Incendiary weapons fall over the city of Bakhmut, in the Donetsk region of Ukraine, on November 1, 2022. © 2022 Private

(ジュネーブ)焼夷兵器がもたらす深刻な被害を懸念する各国は、人的被害の防止に向けた行動を一層強く呼びかけるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の締約国は、2022年11月16日~18日にジュネーブ国連本部で開催される締約国会議で、この問題を再検討すべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが、ハーバード・ロースクールの国際人権クリニックと共同作成した報告書『野放しされる加害:焼夷兵器に関するグローバルアクションの必要性』(全16頁)は、焼夷兵器を具体的に規定する唯一の国際法であるCCW議定書Ⅲ(焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書)に関する外交協議を開催するという、アイルランドが行い、広く支持を集める提案について、ロシアキューバが反対する現状を扱ったものである。焼夷兵器の議論を行うことができないことについて、焼夷兵器がもたらす人道上の被害を懸念する多くの国々はいらだちを感じている。

「各国が焼夷兵器に関する現行法の有効性を議論することすらできない状況は、国連でのコンセンサス型外交の弱点を浮き彫りにしている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ武器担当上級調査員のボニー・ドチャーティは指摘する。「各国政府は焼夷兵器の恐ろしい影響に即座に対処し、人道上の懸念への対処を最優先させるべきである」。

近年、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アフガニスタン、パレスチナのガザ地区イラクシリアウクライナイエメンでの焼夷兵器の使用を記録している。2022年2月のロシアのウクライナへの全面侵攻以降、攻撃の様子と兵器の残存物を収めた動画と写真を検証したところ、少なくとも40種類の地上発射型焼夷兵器の攻撃が確認された。この使用の責任の所在は特定できないが、ロシアとウクライナは共に、一連の攻撃に使用された122mm焼夷ロケット砲「グラート」を保有している。同型の122mm グラート型焼夷ロケット砲は、2014年にウクライナ東部で、2013年~2019年にシリアで使用されている。

焼夷兵器は現代戦でとくに残酷な兵器だ。耐えがたいやけど、呼吸器の損傷、心理的なトラウマを与えるさまざまな化学化合物が含まれている。家屋、インフラ、農作物の焼失は社会経済的な損害をもたらす。生き残った被害者の苦しみは生涯続くことも多い。

焼夷兵器を対象とするCCW議定書Ⅲには、民間人を保護する能力を損なう2つの抜け穴がある。第一に、議定書の定義には、白リン弾のような多目的弾が含まれていない。白リン弾は、「物に火炎を生じさせ又は人に火傷を負わせることを第一義的な目的として設計された」(第1条1)武器ではないが、同様の恐ろしい焼夷効果を生じさせる。第二に、議定書は人口周密地域での空中投射型焼夷兵器の使用を禁じている(第2条2)が、特定の状況下での人口周密地域での地上発射型焼夷兵器の使用について、規制が緩和されている(第2条3)。

焼夷兵器被害の生存者、医療関係者、市民社会組織(CSO)も行動を求めていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチとハーバード国際人権クリニックは指摘する。近年、さまざまな個人や団体が、公開書簡オンライン・ブリーフィング共同声明その他のかたちで、焼夷兵器規制の国際法を強化する必要性について大きな注目を集めるべく取り組んでいる。

焼夷兵器がもたらす深刻な懸念に対処するため、CCW締約国は非公式協議を開催して、少なくともCCW議定書Ⅲの妥当性を評価し、強力な国際基準作成に向けた方策を検討すべきである。

「各国は、外交上の時間を割いて、焼夷兵器に関する懸念を議論するよう改めて要求すべきだ」と、前出のドチャーティ上級調査員は述べた。「生存者たちの言葉を真剣に受け止めて、この残酷な兵器から民間人を守るための活動を前に進めるべきである」。

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