(ラングーン)- 新たに入手した衛星写真から、ビルマのラカイン州北部の少なくとも3つの村で、明らかに火災に伴う建造物の破壊があったことがわかったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。この地域で村落内の建造物の破壊が報告されるなか、ビルマ政府は国連による調査の支援をただちに認めるべきだ。2016年10月31日に国連援助機関と外交官の調査団が政府の同行の下、一帯を訪問予定。国際援助機関が地域への立入を許可されるのは10月9日以降初めてだ。しかし、被害を受けた村落に完全な形で接触できるかははっきりしない。
2016年10月9日、武装した男性の一団が、バングラデシュ国境に近いマウンドー郡にある国境警察の地区支部など3ヶ所を襲撃。警察官9人が殺害された。政府によれば、襲撃者は銃器数十丁と銃弾数千発を奪って逃走した。ビルマ政府は、襲撃犯としてあるロヒンギャ組織の名前を挙げたが、実際に誰が攻撃したのかはいまだ不明である。
襲撃事件の直後、政府は一帯を「作戦地域」に指定し、襲撃犯と奪われた銃器を確保するためのローラー作戦を開始した。地元住民の移動の自由は大幅に制限され、その時に課された広範な夜間外出禁止令はいまだ続いている。人道援助団体も現地への接触を禁じられており、すでに弱い立場にある数万人が更に危険な状況に置かれている。
マスコミや地元人権団体は、事件後にロヒンギャへの人権侵害行為が多数発生していると伝え、超法規的処刑、レイプ、拷問、恣意的拘禁、家屋への放火などの被害を挙げた。10月28日にロイター通信は、ビルマ軍兵士にレイプされたと訴える複数の女性へのインタビューを発表した。政府が地域への立入を制限しているため、ジャーナリストや人権団体は今なお公平な情報収集が行えずにいる。
ビルマ国軍(ビルマ語でタッマドー)には、人権侵害に手を染めてきた長い歴史がある。恣意的拘禁、性的虐待やレイプ、超法規的処刑、強制労働の使用などだ。作戦行動中に民間人に対して重大な人権侵害を行った指揮官や兵士が、責任を追及されることはこれまで皆無に近い。
ビルマは国際法上の義務に従い、人権侵害行為の訴えに対して徹底的かつ迅速で公平な調査を行い、責任者を訴追し、人権侵害被害者に十分な補償を行わなければならない。こうした調査の基準になるのは、例えば国連の「超法規的・恣意的・即決処刑の調査及び効果的予防に関する原則」や国連の「調査委員会と実情調査ミッションに関する国連ガイダンス」である。ビルマがこれまでこうした調査を行ってこなかったことは、国連の支援の必要性を示すと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
「村落での破壊の様子を捉えた今回の衛星写真は、深刻な人権侵害が伝えられるなかでは氷山の一角を示しているにすぎないかもしれない」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「ビルマ政府には、政府職員に対する10月9日の襲撃事件犯と、犯人を追跡するなかで深刻な人権侵害を起こした、また現在も起こしているかもしれない政府治安部隊について、両方の責任を追及する義務がある。」