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人権ウォッチ:LGBTを含めたカリキュラムを作るチャンス

改訂学習指導要領は性的指向と性自認を含むべき

私は昨年、ヒューマン・ライツ・ウォッチの同僚とともに日本各地のセクシュアル・マイノリティやジェンダー・マイノリティの若者を訪ね、学校での経験について話を聞きました。子どもたちの話の内容に心が痛みました。多くの子どもたちが、嫌がらせやいじめによって深刻な影響を受けていたのです。学校からの退学を余儀なくされた子もいました。私たちが5月に発表した報告書は、沈黙を強いられがちなこうしたマイノリティの現実に光を当てるとともに、政府に対してこうした人びとを守るための行動を取るよう求めるものでした。

本報告書内の漫画は、ヒューマン・ライツ・ウォッチがインタビューした方々が、ご自身の経験を自らの言葉で語ってくださったお話に基づいている。いくつかのシーンでは、ストーリー展開に必要な文章が追加されている。 © 2016 歌川たいじ

今年度は次期学習指導要領が改訂されます。日本政府が、こうした状況を改善する10年に1度の機会です。

例えば現行学習指導要領に基づく小学校中学校の保健体育では、子どもは発達するにつれて「異性への関心が芽生えること」を理解できるようにすることとされており、同性愛者やトランスジェンダーの人びとのことは取り上げられていません。これを見直し、同性に興味を持ち、ジェンダー・アイデンティティを発達させることも人の自然なあり方の1つと明記すべきです。

LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の若者やその友人と教師の訴えの内容は、みなほぼ同じでした。若者たちは、性的指向と性自認に関する事実を、紋切り型のニュース報道同性愛者を差別する発言からではなく、学校で学びたいのだ、ということでした。東京のある先生は「文部科学省は知ることを義務付けする必要があります」と話していました

文部科学省の側も対策に動き始めています。2016年4月の教職員向け手引で「他者の痛みや感情を共感的に受容できる想像力等を育む人権教育等の一環として、性自認や性的指向について取り上げることも考えられます」と助言するなど、インクルーシブ教育への前向きな動きがあります。その翌月に日本政府は、米国やオランダなどと並んで、LGBT生徒へのいじめに関するUNESCO国際会議を主導し、学校をすべての生徒にとって安全な場所にするための国際的なリーダーシップをとっていることを示しました。

こうした前向きな動きを踏まえ、政府は2016年度の次期学習指導要領の改訂に際し、すべての生徒の保護に向けた具体的な対策への機会とすべきです。

聞き取りに応じた生徒たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、学校ではLGBTインクルーシブ型のカリキュラムがないため、LGBTに関し学校教員から聞いた情報は、科学や人権ではなくその教員の個人的見解に完全に依拠していて、不正確なことが多かっただけでなく、時に偏狭だったと訴えました。日高庸晴・宝塚大学教授が2011年~2013年にかけて日本の6自治体で保育園から高校の教員約6,000人を対象に調査を行ったところ、回答者の63%~73%がLGBTについて授業で取り扱う必要があると考えているとしました。

日本政府は学習指導要領改訂にあたり、LGBTを扱うことを任意とするのではなく、標準化・義務化する段階に進むべきです。

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