Skip to main content

ビルマ:「平和的集会法」では弾圧は終わらない

暴力に訴えず抗議する人びとの逮捕を止め、法律を改正すべき

(ニューヨーク)ビルマ当局は暴力を用いない抗議活動参加者の逮捕を止め、獄中の人びとを即時無条件で釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ドナー国・機関はビルマ国内法の改正を強く求め、集会・結社・表現の自由の権利を擁護すべきだ。

「ビルマ当局は土地や教育をめぐる問題で、暴力を用いずに抗議の意志を示す人びとを逮捕している。その数は急増中だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「多くがとんでもない刑期を言い渡されている。本物の改革派を自称する政府の主張は説得力を失っている。」

「平和的集会・平和的行進法」(以下「平和的集会法)の改正案は2014年6月に成立した。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ当局がこの数ヶ月で数十人の非暴力の抗議行動参加者を逮捕していると指摘した。「無許可」集会容疑で捕まった人たちの事例の一部を挙げる。

  • 2014年12月31日、土地の権利問題で活動するティントゥンアウンさんは、平和的集会法違反で1ヶ月の刑を宣告された。9月にマグウェ管区で主催した、農民数千人による土地接収抗議デモが理由だ。判決の際、1万チャット(1200円)の罰金か1ヶ月の刑を選択するよう求められた。ティントゥンアウンさんは罰金を払えば有罪だと認めたことになると言い、刑務所に入った。
  • 2014年12月30日、ノーオーンフラさん、セイントゥエさん、ネーミョージンさん、コーティントゥさんがラングーンの中国大使館前で逮捕された。4人は以前から問題になっているモンユワのレッパダウン銅山の開発に反対し、12月22日に現地で丸腰のデモ隊1人が警察に殺された事件について、暴力を用いず抗議の意志を示していた。4人は平和的集会法と刑法違反(暴動、わいせつ、公務執行妨害、公安紊乱、脅迫)で起訴された。1月13日と20日の公判では、他の郡当局が容疑に刑法18条違反を追加した。4人全員が保釈を認められていない。これ以降も当局は、抗議行動に参加した複数の人びとを逮捕・起訴している。
  • 2014年12月22日には、2週間にわたってラングーン市庁舎前で土地収用への抗議活動を行った14人が、平和的集会法違反と歩行者の妨害(刑法341条違反)で逮捕・起訴された。全員保釈が認められたが、公判は1月上旬に設定された。現在も裁判は続いている。
  • 2014年12月21日、ラングーン市内で非暴力の抗議行動を組織した5人が南オッカラッパ区警察により、当局が認めた地点以外で抗議活動を行ったとして平和的集会法違反で起訴された。うち1人は有名な元政治囚コーコージーさん。集会では約100人が集まり、建設事業のために当局が運動場を接収したことに抗議した。
  •  12月にはこの他にも、全ビルマ学生会連合(ABFSU)などの学生30人が平和的集会法違反で起訴された。議論を呼んでいる、国会審議中の全国教育法案に反対する全国行動の一環として組織された活動が理由とされた。全員保釈が認められた。平和的集会法は「平和的集会」を「2人以上」からなると規定するが、当局は単身で抗議の意志を示す人びとも逮捕している。例えば、ゾーミンさんは国際平和記念日に単身で抗議活動をしていたところを逮捕、起訴された。彼は「20世紀の憎悪や恨みが終わりますように」「私たちの国が国際社会で誇れる国となりますように」といったスローガンを書いたプラカードを持っていた。

煩雑な手続きとわかりにくい規定

抗議活動を行う人は、平和的集会法が言論・集会の自由に課すさまざまな制限事項のいずれかに違反したとして起訴される可能性がある。集会開催を希望する者は、5日前に「許可」申請を出すと定められている。許可を受けずに集会を主催すると、集会が非暴力的で、治安を乱さないものであっても罪に問われかねない。

申請手続きでは、予定する集会の開催日時、時間、場所といった基本情報が必要なだけではない。集会の進行や中身、主催者と発言者の氏名や住所など不必要に細かい情報も提供しなければならない。軍事政権下で抗議行動の弾圧が長年行われていたビルマのような国では、こうした規定は抗議行動の主催者や参加者を安易に萎縮させることになりかねない。

最近の法改正により、許可申請には集会の内容だけでなく「許可されたスローガン」も記されなければならなくなった。「許可された以外の」スローガンを唱和すると3ヶ月以下の刑を受ける可能性がある。

当局は集会許可にわかりにくい要件を定めておき、たとえ集会が非暴力的なもので、そうした要件を課す合理的な根拠がなくても、それに従わなかったとして参加者を逮捕することが多い。ラングーンでの抗議行動では、会場がチャイッカサン運動場に限られることもある。抗議対象となる政府庁舎が近くに一切なく、人びとの目に止まることもないからだ。適切な場所で集会を行うと主催者は逮捕される。

抗議行動参加者は、曖昧で幅広く課された制限事項に違反した発言を行ったとして逮捕されることもある。参加者は「騒ぎ、妨害、迷惑、危険をもたらすような、またはそれらが起こりうるとの懸念を生じさせるような言動を取ること」を禁止されている。「わが国あるいは連邦、民族、宗教、尊厳、基本的な道徳を乱すような事柄を述べてはならない」との規定もある。さらに参加者は「流言や不正確な情報を流してはならない」という規定すらある。これらの禁止事項に反すると3ヶ月以下の刑に処せられる。

国際法では、表現の自由と集会の自由への制限は、個人がそれに従って行動を調整できるだけの十分な限定が必要だ。集会参加者には、何が「迷惑」の原因となるのか、また何が「人間の尊厳や基本的な道徳」を乱すと見なされかねないのかを知る手立てがない。警察が何を「不正確な」情報とみなすかについても同様だ。さらに言えば、この法律の曖昧で主観的な条文は、政府批判や政府に都合の悪い発言を行わせないようにしたい当局者による人権侵害を助長する。

他人を「当惑」あるいは「不快」にしかねない言論についての制約はとくに問題だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。欧州人権裁判所が1976年に下した結論によれば、表現の自由は「害のない、または別に構わないと好意的に受け止められ、あるいは見なされる」情報や考え「だけでなく、国家や国民のある部分の気分を害し、ショックを与え、あるいは不快にさせるもの」にも適用される。他人が気分を害しかねないことを理由に、集会での発言を制限することはできない。それはむしろ集会を促し、保護する理由となる。

国連の平和的集会と結社の自由の権利に関する特別報告者のマイナ・キアイ氏は、平和的集会の権利の行使を望む者に対して、許可を要件にしてはならないと強調した。平和的集会の権利の行使について、政府の許可を得なかった者に刑事罰を科すことは、国際法が定める集会の権利に対する容認できない侵害行為である。政府は平和的集会について、その集会の設定目標が「見聞きできる」範囲で促進する義務を負う。政府がこの義務を果たさないとき、より適切な場所で集会を行うとする者を逮捕・起訴することは不均衡で不適当な対応である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはビルマ政府に対し、非暴力の抗議行動への参加を理由に逮捕された人びと全員の即時無条件釈放を求める。平和的集会法と刑法は次のように改正されるべきだ。

  • 平和的な抗議活動の実施については、政府による事前許可ではなく通告のみを要件とすること
  • 無届けで行われる平和的な抗議活動への制裁措置を廃止すること
  • 「不正確な」情報への禁止および政治的発言への制限を解除し、スローガンの事前申請制を廃止するなど、表現の自由に対する広すぎる法文上の規制措置を大幅に削減すること

「ビルマは今年後半に総選挙を控えている。非暴力の抗議行動参加者の逮捕は明るい兆候ではない」と、前出のアダムス局長は述べた。「選挙の時期には多くの抗議行動が行われるだろう。もし一連のプロセスが真に民主的なものならば、そうした行動は禁止ではなく保護の対象となる。国会がただちに法律を改正し、国際基準に沿ったかたちで抗議活動を認めることができない理由はない。」

Your tax deductible gift can help stop human rights violations and save lives around the world.