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タイ:タイ海軍 ロヒンギャ民族の庇護希望者を射殺

難民押し戻し政策による「ボートピープル」射殺事件 捜査せよ

(ニューヨーク) タイ海軍の水兵がロヒンギャ民族の「ボートピープル」に発砲し、少なくとも2人が死亡したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。タイ政府は事件をただちに捜査するとともに、海軍に対して有形力の行使に関する国際基準を遵守するよう指示すべきである。

2013年2月22日、パンガー県内のある埠頭のそばで、タイ人水兵が、前日から海軍に拘束されていた約20人のロヒンギャ民族庇護希望者の一団に発砲した。彼らの船には約130人が乗っており、ビルマからマレーシアに向かう途中で燃料切れとなったために拘束された。

「ビルマから逃れるロヒンギャ民族には保護が与えられるべきで、銃撃などあってはならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「タイ政府は、困窮するボートピープルを、水兵が洋上で銃撃した理由を緊急に捜査し、責任があると判明した者全員を訴追すべきだ。」

生存者はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2月20日朝にタイ人の漁民によって、パンガー県沖合のスリン島に漂着していた自分たちの船が救助されたと話した。同日午後6時30分頃、タイ海軍の巡視艇TOR214号が同島に到着し、この船を沖合に曳航した。海軍巡視艇TOR214号とロヒンギャ民族を乗せた船は、翌朝午前5時ごろにパンガー県クラブリー郡の埠頭近くに到着した。生存者と地元住民によると、巡視艇の水兵は、船に乗っていたロヒンギャ民族を小さなグループに分ける作業を始め、小船に乗る準備をするよう命令した。この段階で、船に乗っていたロヒンギャ民族たちは、タイ本土の入管収容所に連行されるか、洋上に押し戻されるかわからなくなったという。ロヒンギャ民族20人ほどの最初の一団がタイ海軍によって小型の船に乗せられたとき、一部が動揺して海に飛び込んだ。

「水兵は3回空に向けて威嚇射撃を行い、動くなと命じた」と、ある生存者はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「だが我々は動揺していたので、船から海に飛び込んだ。すると水兵が我々に発砲した。」

岸まで泳いだロヒンギャ民族4人は地元タイ住民に救出された。タイ治安部隊が事件後2日間捜索を行っていた間、住民は生存者をかくまった。

弾の当たった跡があるロヒンギャ民族2人の遺体は後日海から引き上げられ、クラブリー郡のイスラーム墓地に埋葬された。タイ人の漁民はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、もっと多くの死体を海で見たが詳しい情報はないと述べた。タイ海軍が曳航していった船に乗っていた、残りの乗員がその後どうなったのかは不明だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、タイ政府と全国人権委員会に対し、銃撃事件に関する完全で透明性のある捜査を実施するよう要請した。有形力の不必要な、または過度の行使があったことが判明した場合、発砲命令を下した上官を含む責任者全員が訴追されるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

タイ治安部隊は、法執行の任務を果たすにあたり、国連の「法執行職員による強制力および武器の使用についての基本原則」に基づくべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同原則は、法執行職員は「可能な限り、強制力の行使に訴える前に非暴力的手段を用いるべき」と定めている。強制力の行使が避けられないときはどんな場合であれ「その使用を抑制的に実施し、違反行為の重大さと達成すべき正当な目的に応じて行動するべき」としている。致死力を持つ火器の意図的な使用は「人命保護に不可欠な厳しく限定された状況」においてのみ認められる。

この原則はまた、指揮下にある要員が火器の不法な使用に訴えたことを知っているか、知っているべきであり、かつ「自らの権限に備わる、そうした使用を予防、抑制、または報告するためのあらゆる手段を取らなかった」場合には、政府が上官の責任を問うべきと定めている。

タイ当局はまた、最後に目撃された際にはタイ海軍の拘束下にあった、同じ船に乗っていたロヒンギャ民族の所在を明らかにし、これら生存者への自由な接触を捜査員たちに提供すべきである。タイ政府は生存者に少なくとも一時的な保護を提供し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による接触を許可し、捜査期間中は生存者が送還されたり、人権侵害を受けたりしないことを保証すべきである。さらにタイ政府は、生存者には人道支援を与え、死亡者の家族には適切な賠償を必ず行わなければならない。

毎年、ビルマ政府の迫害と過酷な貧困を逃れるため、ビルマのアラカン(ラカイン)州ではロヒンギャ民族数万人が海路で出国している。2012年に状況は一層深刻となった。同年6月と10月に、ロヒンギャ民族やその他のムスリム系住民を標的とした暴力事件が発生したためだ。

現在のインラック政権下での通称「ヘルプ・オン」政策では、ロヒンギャ民族の庇護希望者に対して国際法が定める保護が提供されないだけでなく、場合によってはリスクを高める可能性もあると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。この「ヘルプ・オン」政策に基づき、タイ海軍には、ロヒンギャ民族を乗せた船がタイ領の海岸に過度に接近した際には、航行を停止させよとの命令が下されている。停船させた際、軍当局者は燃料と食糧、水などの物資を、その船がマレーシアかインドネシアに出航するとの条件で提供する。物資の提供中は乗員の下船が一切禁止される。

この政策を厳格に実施する法執行当局の対応は、タイ政府に対して、2013年1月以降にタイに到着したロヒンギャ民族1,700人以上に一時的な、6か月の保護を提供するようにとの国内外からの圧力が高まったことで、明らかに厳しさを増している。

「タイ政府は『プッシュ・バック』と『ヘルプ・オン』政策を廃止すべきだ。これはロヒンギャ民族のボートピープルが、庇護を求める権利を否定するものだ」と、前出のアダムズは述べた。

世界人権宣言では、あらゆる人に迫害を免れるため庇護を求める権利を認めている。タイ政府は1951年難民条約の当事国ではないが、慣習国際法により、ノンルフールマン原則(当人の生命や自由が危険にさらされる可能性のある場所への送還を禁じる)を尊重する義務がある。この点について、UNHCRには難民申請の審査を行う専門要員が配置されており、難民と無国籍者を保護するマンデートが与えられている。UNHCRが船で到着したロヒンギャ民族全員に効果的な審査を実施することは、タイ政府による難民認定への支援となる。

「タイ政府は迫害を受けてビルマからやってくるロヒンギャ民族を支援するべきで、悲惨な状況に追い打ちをかけるべきではない」と、アダムズは述べた。「タイ政府はUNHCRに対し、タイに到着したロヒンギャ民族全員の審査に関し、自由な接触をただちに保証し、庇護希望者の同定と支援を許可すべきである。」

 

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