過去3年間にわたり、ビルマを支配する国家平和開発評議会(SPDC)はその悲惨な人権状況を必死に隠してきた。2003年11月以来、ビルマへのアクセスを拒否されているため、ピニェイロ氏は、東南アジアの政府と面会をしたり、ビルマから逃れた政治・人権グループから情報を集めるなどして昨年一年間を過ごした。そして、そうした人々は、ピニェイロ氏に対し、大規模な強制労働、土地収用、反対意見を持つ者の逮捕、驚愕するほど野放図なビルマ軍による性暴力など、国家による抑圧がひどくなっているということを明確に語った。こうした人権侵害は、政府の支持を受けて行われるか、一切捜査されないため、ビルマ政府の不処罰の風潮をさらに構造的なものにしている。

基本的な権利に対する侵害も蔓延したままである。特別報告者が特に懸念しているのは「政治的に反対意見を持つ者、人権の守り手、人権侵害の被害者たちが、基本的自由を行使することが犯罪とされていること」である。レポートは、反対勢力のリーダーであるアウンサンスーチー氏に対する自宅軟禁が延長されたことや、集会の自由、移動の自由、表現の自由、報道の自由が厳しく制限される中で1200人近くの活動家が投獄されていることなど、反対意見を持つ者に対する系統的な人権侵害の状況を概観している。国境なき記者団は、先週、ビルマの今年の報道の自由ランキングをさらに下げて、世界164位に格付けした(下から5番目)。

今年のピニェイロ氏のレポートは、同氏がビルマに対する特使となって6年の中で、ビルマに対して一番厳しいレポートとなっており、ピニェイロ氏は、SPDCには、誠実に民主的な国に移行しようなどという気はない、と断じている。軍事政権はより過酷になっており、平和的な反対運動をも潰すという軍事作戦に力を入れており、状況はさらに悪化している。何人もの反対運動の中心人物たちが、国連安全保障理事会の議論を支持したとして先月逮捕されたし、正規のガバナンスから少し後退すれば結果的に市民の顔をした軍隊となるだろうと多くの人が恐れている政府の大衆レベルの政治運動である連邦連帯発展協会(USDA)に多くの人々が加入するように命じられた。

ピニェイロ氏は、長期間にわたり機能不全となっているが新憲法の制定を任務とする国民会議のプロセスが「透明性が欠如していた」と言い、十分に民主的で開かれたものとなることに対する期待もほとんどもてないとした。議会は、10月10日に再開されたが、すでに、自分の意見を表明することはもちろん、議論や反論さえほとんどする余地がないことに対し、代表団たちから広範な批判の声が上がっている。国民会議のもっとも抑圧的な装置の一つは、法律第5/96で、人々に対し、議会を批判したり、変更を提案したりすることを禁止している。1993年にこの演出じみたフォーラムが始まって以来、多くの参加者が逮捕されたり自分の身の安全のために逃亡を余儀なくされたりしたのは、この法的規制のためなのである。勇敢な民族のリーダーたちが、最近、いかにプロセスがコントロールされているかを明らかにして、この議会に対する公然とした反対を唱えた。3年前、国際社会の中で楽観主義者たちが真剣にとらえすぎてしまった軍事政権の民主化や国民和解に対する約束を、あえてまじめに捉える人などほとんどいなくなった。

ピニェイロ氏は、国連システムに対し、数万人もの人々を避難民になることを余儀なくし、232の村を破壊したビルマ軍事政権の北部カレン州での10ヶ月にわたる対反政府勢力軍事作戦を止めるため、「緊急の手段」をとる必要があると訴えた。市民を苦しめる目的の焦土作戦には、数万人の兵士が参加し、超法規的殺害、拷問、文字通り村が焼け落ちることに伴う強制移住などが行われ、この10年でビルマで最大級の軍事作戦となった。今年の収穫が近づくにつれて、軍隊が数千人もの新たな兵士を送り込んでおり、これらの地域の人々の状況には重大な懸念が生じている。軍隊は、武装民族グループに対する市民のサポートを止めるため、しばしば、自由発砲地帯を宣言し、耕作地や貯蓄された食糧などを破壊して市民をそこから排除する。ピニェイロ氏のレポートは「一般市民を恐怖に落としいれ、強制移住させるのは、意図的な戦略の一部であることが多い」という。

2005年後半から、国連安全保障理事会は、ビルマについて議論を開始した。ピニェイロ氏のレポートは、安全保障理事会が「民主化にむけた移行プロセスを早めるチャンスとなる」ことができると明白にしている。このメッセージそしてSPDC軍による人権侵害の連鎖とその不処罰という圧倒的な現実こそが、今度の11月のイブラヒム・ガンバリ政治担当国連次長の訪問の際の議論の主要論点になるべきである。「扉は開きつつある」などという根拠のない楽観的主義を開陳した前回の訪問とはちがって、ガンバリ氏は、ビルマを支配している将軍たちに対し、何が必要なのかをはっきりと示さなくてはならない。

ピニェイロ氏のレポートが示す抑圧の激化は、SPDCが、国際基準にそった振る舞いも、自国民に対する配慮も、何もないことを示している。ビルマを支配する非妥協的将軍たちに、自国民に対する人権侵害をもはや継続することは許されないということを単刀直入に知らせる必要がある。彼らは、長年の忍耐強い外交と妥協が終わりを告げたことを知るべきだ。

ハイレベルの訪問および説得を通じた寛大な外交は、ビルマに対しては効果がない。もし、ビルマが少しでも成功の結果を出していたならば、ビルマの人々の苦境に関心を持っている人々はみな、関与を熱烈に支持しただろう。しかし、ASEANの建設的関与戦略を通じて何らの進歩も引き出せなかったことに鑑みれば、国連その他がハイレベルの訪問を通じて何らかの変化が生まれると夢見るて時間を無駄にしても意味がない。どうせ何もかわらないのだ。他国から、特にビルマの近隣諸国と主要な支持者からの継続した圧力だけが、苦悩の中のビルマの人々のための変化をもたらすのだ。

デイビット・スコット・マティソンは、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部ニューヨーク)のコンサルタントである。

デイビット・スコット・マティソン
ニューヨーク