先週、ジュネーブで行われた国連人権理事会の中国に関する第4回普遍的・定期的審査(UPR)において、日本は、「中国の人権状況についての懸念」を表明し、中国政府が「チベット族やウイグル族を含む少数民族の権利を保障し、…香港基本法の下で基本的権利・自由を擁護するとともに一国二制度を強化する」よう求めた。
日本政府のチベット、新彊自治区そして香港における中国政府による基本的人権の侵害に対する公な批判は、日本が2018年の中国の普遍的・定期的審査の際に表明した「人権活動家、知識人等に対して弾圧を行う近年の姿勢について」の懸念の延長線上にある。
日本政府は、悪化の一途をたどる中国の人権状況について、日本国内でも声を上げるようになっている。与野党議員らは、北京2022オリンピック開会式の数日前に、新疆自治区や香港、チベットや南モンゴルなどにおける「深刻な人権状況」に焦点を当てた決議案を衆議院で可決した。この決議は、「国際社会と連携して深刻な人権状況を監視」することや、「救済するための包括的な施策」の実施を呼びかけた。その10カ月後には、参議院もほぼ同内容の決議を採択している。
中国政府は現在も、ウイグル族や新彊自治区に居住するトュルク系ムスリムに対する抑圧的な政策を継続しているが、これらの政策は人道に対する罪にあたる。例えば、大規模な恣意的拘禁、拷問、強制失踪、集団監視、文化的・宗教的迫害、家族の分離、強制労働、性的暴力、生殖に関する権利の侵害などがこれにあたる。
チベットでは、当局によるチベット族の強制的な同化政策が現在も続いている一方、高度の情報統制により、チベットからの情報の取得・検証が著しく困難だ。また、香港においては、中国政府は多くの権利や自由を剝奪し、国家安全保障に関する罪を理由とする恣意的な逮捕を実施している。さらに、亡命した民主主義活動家や元議員ら計13人の逮捕について報奨金を用意し、香港の活動化に対する政治的脅迫を国外でも行うに至っている。
日本政府が中国政府による人権侵害について公の場で意見を表明したことは、人権状況に対する深刻な懸念を反映するものだ。しかし、日本政府にはまだできることがある。国内では、マグニツキー法のような人権侵害制裁法を施行し、深刻な人権侵害行為に関与した者を対象とする標的制裁を科すべきだ。また、国際的には、新疆自治区における人権侵害を調査する権限、これに対して責任を負う者を特定する権限、および説明責任向上のための提言を行う権限を持つ調査機構を設置すべく、国連決議の採択を目指すべきだ。