香港当局は先週、日本人ジャーナリスト小川善照氏の入境を拒否した。ここ数カ月の間に、写真家キセキミチコ氏や路上演奏家「ミスターウォーリー(芸名)」氏も同様に入境を拒否されている。
香港入境事務所はこれらのケースに対し明確な理由を明らかにしていないが、決定は政治的な動機に基づくものと思われる。小川氏およびキセキ氏は、香港で起きた2019年の大規模デモを著作や写真として記録・発表しており、ウォーリー氏も香港の民主活動家を支持していることが広く知られている。
こうした動きは、香港政府や中国政府を批判する日本人をはじめとした外国人に対する入境禁止措置が増加しつつあることの表れだ。また、かつて活気に満ちていた香港の自由を当局が急速に消し去っていることも浮き彫りになった。
中国政府が2020年6月に厳格な国家安全維持法(国安法)を香港に導入して以来、当局はセミ・民主的だった立法会を「中央政府の言いなり」機関に変えてしまった。 また、香港民主派リーダーたちの逮捕・訴追、市民社会団体や独立した労働組合の解体、もっとも人気のあった民主派新聞の廃刊、報道の自由の抑圧、映画の検閲、「愛国教育」の義務化も行われた。警察はこれまでに国安法違反で260人を逮捕。ソーシャルメディアへの投稿、公共の場におけるプラカードの掲示、あるいは児童書の出版といった罪で数十人が扇動罪で訴追され、有罪判決を受けている。
香港当局による弾圧の強化は国境にとどまらない。3月には日本の大学で学ぶ香港人女性が帰国した際に逮捕され、日本滞在中のソーシャルメディアへの投稿をめぐり、6月に扇動罪で正式に訴追された。
香港当局は、入境拒否をちらつかせて訪問者を脅し、海外における言論の自由をも犯罪とすることで、国外のものも含めた批判的意見を威嚇で抑え込もうとしている。
日本と香港の間には、緊密なビジネス上および個人的なつながりがあり、多くの日本人および居住者が香港を通過したり、そこに居住していることを考慮し、日本政府は香港で拡大する権利侵害に抗議すべきだ。日本政府は先述のようなケースについて声をあげ、人権侵害的な香港法の管轄外適用を非難し、人権侵害者を対象とする米マグニツキー法の日本版制裁制度を創設すべきだ。